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なぜ「ハゲビジネス」はやめられないのか

プレジデント9月21日(月) 10時 0分配信 / 経済 - 経済総合
カツラの寿命「3年間」にかかる費用は……
■手を出したら抜けられぬアリ地獄。トラブル例のなかには3000万円台も

 発毛、育毛、植毛、カツラ……、さまざまなサービスで日本人男性最大の悩み“薄毛”に福音をもたらす毛髪業界。が、おカネでアリ地獄にはまるのもこの業界だ。昨年には、育毛ケアで効果が薄かったと50代の男性が大手業者を訴え、4年間で支払った680万円のうち430万円の返還で和解した。生える保証のない育毛にこれほどの出費と手間を惜しまぬ禿げの気持ちは複雑だといえよう。

 育毛や植毛の手段と比べて髪の毛を増やす最も手軽な方法はカツラだが、この費用もバカにならない。
 カツラの価格は面積によって異なり、平均して50万円前後、高いものは100万円近くにもなる。大まかには、全面的にかぶる全カツラと、薄くなったところに装着する部分カツラにわけられるが、人気があるのは金具で装着するオーダーメードの部分カツラ。数年前には接着剤で貼り付ける新しいタイプも登場した。市場規模は年間1000億円以上ともいわれる。
 商売の内実は秘密主義だ。広告では「相談無料」や「1日250円から」「一回4500円」と謳うが、いずれもピンポイントの料金であり総額でいくらかかるかを説明しない。

「客は来店して初めて総額を知らされるわけです。あまりの料金の高さにひるんでしまう客には、マインドコントロールまがいの強引な勧誘トークを何時間も続け、次第に『自分はこの治療をしないと禿げてしまう』『ばれないカツラで人生が変わる』などと信じ込ませるのです」(大手カツラメーカー・営業担当)
 カツラメーカーが総額を明らかにしない理由は、カツラの代金だけではカツラを維持できないからだ。
 カツラをかぶり続けるには、月々のメンテナンス、つまり自毛の調髪とカツラのクリーニングが欠かせない。カツラと自毛との調整にはメーカーの指導が必要なうえ、ほかの客の目には外した姿をさらしたくないのが人情。そうなれば割高なメーカーの理容室で調髪をせざるをえない。
 さらにカツラは、一つだけというわけにはいかない。修理する場合にはスペアが必要になるから、最低二つは同時に購入する必要がある。しかもカツラは寿命が短い。長くても3年で買い替えの時期を迎える。総額を考えると、頭の上に数百万円の高級車を載せているようなことになりかねないのだ。

 不透明な料金体系のため、ローン地獄に陥る人も少なくない。ある体験者が、こう証言する。
「購入時は、月々2万円の支払いで済むので、120万円のカツラを60回返済でローンを組んだ。ところがそのローンが残っているうちに、次々に新しいカツラを買う必要が生じ、結局は重複ローン状態になってしまった。カツラは当初、想定していたよりずっとコストがかかるんです」
 他社の商品に変更したくても、前のローンが残っているので、なかなか変えることができず悩んでいる人も少なくない。国民生活センターによると、育毛・増毛システムやカツラの契約に関するトラブルは2008年度で1275件寄せられ、金額も100万〜500万円が192件、500万円を超えるものも数件ある。育毛で3000万円という高額のものまであった。
 カツラ業界は、一度つけた者はカツラを外した姿では人前に出られないという弱みにつけ込むコンプレックス商法でもあるのだ。男の魅力は髪のあるないではなく、自信のあるなし、と言いきりたいものだが……。


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吉田茂人=文


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  • 最終更新:9月21日(月) 10時 0分
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