西日本新聞

平壌宣言7年 米韓とのさらなる結束を

2009年9月21日 11:10 カテゴリー:コラム > 社説

 2002年9月17日。日本の首相として初めて北朝鮮を訪れた小泉純一郎氏と金正日総書記が握手を交わす映像に日本中の目がくぎ付けになった。

 金総書記は日本人拉致の事実を認め、謝罪した。両首脳は、不幸な過去の清算と国交正常化交渉の開始、拉致や核開発問題の解決を図ることを盛り込んだ「日朝平壌宣言」に署名した。

 戦後半世紀にわたって閉ざされていた隣国の扉がようやく開くのか。そんな期待を抱かせる場面だった。

 それから7年。「北東アジア地域の平和と安定」をうたった宣言は反故(ほご)同然となった。深い失望と憤りを禁じ得ない。

 小泉氏の訪朝によって、拉致被害者5人とその家族の帰国が実現したことは評価したい。しかし、北朝鮮側が「死亡」「不明」とした人たちの情報は具体性に欠け、納得できるものではなかった。

 とくに、横田めぐみさんのものとされた「遺骨」の真偽をめぐって両国政府が対立し、拉致問題協議は途絶えた。

 一方、平壌宣言の直後に、北朝鮮が高濃縮ウランによる核開発を進めている事実が明らかになった。それは、核開発凍結と引き換えに、日韓両国が軽水炉2基を建設するとした1994年の米朝枠組み合意の重大な違反行為だった。

 軽水炉稼働までの間、提供することになっていた重油の供給中断に北朝鮮は強く反発し、核開発の再開を宣言した。

 ここから、北朝鮮は「核保有国」への道をひた走った。06年7月に弾道ミサイルを発射し、10月には核実験を実施した。国連安保理の非難決議も無視し、ことし5月に2度目の核実験を強行した。

 平壌宣言の「核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守する」との合意は踏みにじられた。

 一時は歩み寄る姿勢も見せた。6カ国協議で、経済・エネルギー支援を条件に、段階的に核放棄に応じると約束した。拉致被害者再調査や日朝関係正常化の協議開始も承諾した。

 だが、それは米国にテロ支援国家指定を解除させる方便だったと見なさざるを得ない。北朝鮮は申告した核計画の検証をめぐって態度を硬化させた。再度のミサイル発射や核実験で国際社会に非難されると、6カ国協議からの離脱を表明した。拉致再調査も宙に浮いたままだ。

 北朝鮮の最終的な狙いは、米国と直接交渉し、独裁体制存続の担保を得ることである。米朝2国間協議が先行すれば、日本が主張する拉致問題が置き去りにされる可能性は現実味を増す。

 オバマ米政権は6カ国協議の枠組みを堅持するとしている。日本は米韓との結束を一層固め、6カ国協議合意の完全履行を北朝鮮に迫らなければならない。

 政権は交代し、北朝鮮の核や拉致問題への対応は鳩山新政権に引き継がれた。手詰まりの対北外交にどう風穴をあけるのか。鳩山外交の真価が問われる。


=2009/09/21付 西日本新聞朝刊=

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