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きょうの社説 2009年9月21日
◎日航の再建 「航空2社」は地方に不可欠
日航と全日空の航空2社体制は、地方空港にとって必要不可欠だ。富山空港では日航の
撤退後、国内定期路線の減便が止まらない。万一、日航の経営再建が暗礁に乗り上げるような事態になれば、小松空港、さらには能登空港も安穏としていられなくなるだろう。羽田空港の発着枠拡大が来年秋に迫るなか、地方路線の縮小が加速しかねない。前原誠司国土交通相が日航支援のために同省が設けた有識者会議を白紙に戻す考えを表 明したのは、自民党政権が設けた会議をやめ、自分たちの手で仕切り直ししたいからだろう。その気持ちは分からぬでもないが、再建計画は既にメニューができている。これを白紙にして、またゼロから議論を始めるのでは時間がかかりすぎるのではないか。 日航は事業継続のために年末までに2000億円もの資金を必要としている。現行の再 建計画の柱は外資との提携であり、デルタ航空やアメリカン航空との交渉に入っている。限られた時間のなかで、これまでの再建計画を精査し、適当かどうかの判断を早急に示す必要がある。長期的な視野に立った航空行政の見直しはこれからの課題として、政府による短期的な日航支援の枠組みと方向性を明示して、経営不安の払しょくに努めてほしい。 民主党はマニフェストに「地域の再生」を掲げている。前原国交相は、「地方空港の建 設が採算軽視の運航を日航に押しつけた」などと、これまでの航空行政を批判した。むろん問題点はあるにせよ、地方空港が果たしてきた役割を過小評価すべきではない。地方路線の廃止は、地域経済に深刻な打撃を与える。これ以上の路線の廃止・縮小を招かぬためにも日航再建に全力を尽くすよう求めたい。 日航は半官半民時代の「親方日の丸」的体質を今も引きずっているように見える。「フ ラッグキャリア(国を代表する航空会社)」への外資の導入には不安もあるが、高コスト体質にメスを入れるための切り札になるかもしれない。経営危機を何度も経験した米国の航空会社から学ぶことは多いのではないか。
◎敬老の日 誰もが誇れる長寿社会に
「敬老の日」が国民の祝日に制定されたのは1966年である。その当時の平均寿命は
男性68歳、女性73歳だった。それから10歳以上伸び、2008年は男性79・29歳、女性86・05歳である。100歳以上も今年は4万人の大台を突破した。日本は医療や生活水準の向上により、世界に先駆けて長寿社会を実現させた。これは日 本の成功であり、本来は誇っていい姿だが、長寿社会の到来を手放しでは喜べない現実がある。世界にも例のないスピードで高齢化が進んだ結果、さまざまなところで制度的なひずみが生じているからである。 社会保障の負担の在り方をめぐり、世代間のあつれきが生じかねない議論もなされてい るが、長寿社会を重荷のように受け止める風潮が広がるのは好ましいことではない。自公政権に国民の多くが「ノー」を突きつけた大きな理由の一つに、介護、医療、年金といった社会保障の将来像を示せなかったことがある。前政権に代わって制度を立て直すことは民主党政権に課せられた大きな責任である。 長妻昭厚生労働相は昨年始まった後期高齢者医療制度の廃止を明言した。周知不足もあ り、75歳で区切る制度の仕組みや保険料天引きをめぐって批判が高まり、麻生政権は保険料の軽減など場当たり的な対応に終始した。だが、民主党も廃止後の具体的な制度設計はこれからである。年金記録問題の解決にしても「国家プロジェクト」と位置づけながら、その道筋や実現性は不透明なままである。 社会保険庁の相次ぐ不祥事などで年金制度の信頼が失墜し、それに適切に対処できない 政治の信頼も大きく揺らいだ。団塊世代が高齢者になれば世界のどの国も経験したことのない超高齢社会が到来する。そうした状況を考えれば社会保障をいつまでも「政争の具」にしている場合ではない。 国の根幹にかかわる社会保障制度が政権交代のたびに変われば国民に安心を与えること は難しい。財源を含む制度設計は本来、超党派で取り組むべきテーマである。政治の責任において党派を超えた真剣な議論を望みたい。
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