ご祝儀相場にならなかったワケ
「株価は投資家心理を映す鏡」ということで、選挙翌日(8月31日)の株式市場の初期反応から振り返ってみたい。
当日の寄り付き直前までは、買いも売りも板が薄く先週までと何ら変わらない気配だった。しかし、取引が始まってみると、日経225先物に大口の買いが殺到。当日までの日経225先物の年初来高値は10680円だったが、先物にワンショットで100枚や300枚、さらには500枚といった大口の買いが入り、一気に年初来高値を10770円まで切り上げたのだ。株式市場の初期反応は「株高」であり、民主党を歓迎するような雰囲気であった。
しかし、「株高」と同時に「円高」も初期反応としてはっきり現れた。為替市場では、円が対ドルで1ヶ月半ぶりとなる1ドル=92円台に突入。すると一転し、前日比で230円以上上昇していた日経平均は前日比マイナス圏に急落。急落時には、先ほどまで買いが集まっていた225先物に、一変して売りものが殺到した形だった。
この寄り付きの急騰については、多くのメディアが「ご祝儀相場」と表現していた。ただ、これについては、ある市場関係者によれば「ご祝儀もなにも、先物でドカンと大口買いを入れた筋があっただけ。こんな相場で『ご祝儀』なんて言葉を使うのはホトホトおかしい」という。
前述の225先物の大口買いだが、ワンショット500枚となると、毎日何発も入るサイズではない。225先物のラージは1枚で105万円相当(10500円×1000枚)。これで500枚となると、ワンショットで5億円以上の注文というわけである。通常は売り買いの板が500枚ずつ並ぶような状態のため、一撃でその価格の売り注文も全部さらっていくほどのインパクトがある。
こういった注文を出しているのは、CTA(Comodity Trading Advisor)と呼ばれるヘッジファンドといい、すぐに反対売買をしてしまう短期筋なのだそうだ。ちなみに注文を出しているのは外国人とのこと。また、ある先物関係者によれば「500枚級の注文を出す筋としては、CTA以外ならシンガポールから注文を出しているヘッジファンド」という。
つまり、衆院選翌日の瞬間的な株価急騰は、そういった「選挙に行ってない投資家」による仕掛け的な注文でもたらされた産物なわけだ。お祝儀でもなんでもなく、多くの投資家が様子を見ている時期に、「値動きを演出しようとして、もて遊ばれただけ」との解釈が正しそうなのである。
民主党関連銘柄が盛り上がったのは選挙前だけ
衆院選以降の株式市場は、選挙前の水準を往ったり来たりで方向感に乏しい。出来高は細っているうえに値幅も狭く、「ひとまずはお手並み拝見」といったムードである。株式市場で民主党といえば、民主党関連銘柄が思い起こされる。(次ページへ続く)