民主党関連銘柄とは、子ども手当て関連の西松屋チェーン、ピジョン、コンビ、ユニ・チャーム、ベネッセなどや、学習塾株、農業関連株などで、これらの銘柄が人気になったのは記憶に新しいところ。
ただ、盛り上がったのは選挙前だけで、選挙後は完全に出尽くしモードとなっている。「マニフェスト通りに政策が実行されても、メリットが業績に乗るのはだいぶ先」との声が多数派だ。
次期総理候補の鳩山代表が保有(推定60億円相当!)する「ブリヂストン」などは、話題にもなっていない。また、民主党関連株に日経平均を押し上げるような大型株がなく、「株式市場全体への影響はものすごい小さい」のが現実だ。
さて、今回の政権交代について、各証券会社のトップを張るようなストラテジストはどう見ているのだろうか。衆院選の翌日以降、証券会社各社からは、「民主党政権に対する株式市場への影響」をまとめたストラテジーレポートが大量にリリースされた。これを可能な限り入手すると、主要証券会社だけで9社集まった。
各社の論調かをまとめてみると、民主党政権が株式市場にポジティブとの見解を示したのは9社中4社、中立としたのが4社、ネガティブとしたのが2社だった。票だけみると、「概ねストラテジストは強気」といったところである。
ただ、レポートを読んでみると、強気の理由は感覚的なものが多く、リスク要因としていた部分があまりにも現実的なものが多かった。このリスクの部分を、市場参加者の本音を交えながら明かしてみたい。
『生活第一』マニフェストの落とし穴は?
民主党の政策理念といえば、『生活第一』である。生活を良くすれば、経済が良くなる、という発想なわけだ。
これについての証券会社各社の見解は、「国民の生活安定は、長期的には外国人投資家から評価される」(国内大手証券)、「内需拡大の阻害要因」(欧州系証券)、などと意見が分かれる。ただ、冷静に見ている現場の証券マンは、「株式市場には不都合な面が多い」と見ているようなのだ。
株式市場は、市場を構成する企業群の業績が好調であることを何より好む。これを揺るがすリスクが、民主党政権によって浮き彫りになる可能性があるという。
「一番やっかいなのは、公的年金の運用に劇的な変化が起きた場合」と国内証券で働くトレーダーはいう。実際、この部分をリスクとして挙げていた欧州系証券のストラテジストもいた。
公的年金は、昨年の相場での安値圏での買い手として話題となった投資主体だ。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用しているファンドで、この運用額は日本株だけで推定約12兆円に上る。しかし、昨年の世界同時株安に巻き込まれ、全体で約120兆円といわれるGPIFの運用資産は約10兆円も目減りした。
「民主党には昨年の損失を執拗に糾弾する議員がいるため、これが株式市場にとってネガティブだ」という。この議員の発言は、最悪なパフォーマンスとなった昨年の実績だけを取り上げたものだが、そもそも民主党はGPIFの運用見直しに前向き派。
仮に、GPIFの運用に占めるリスク資産の割合を引き下げられると、日本株へのマイナス影響は計り知れないものになる。保有残高の一部が市場で売却されれば、需給的にみても、株式市場はパニックの様相となるだろう。そうなると、「再び日本株が下落」→「大企業の保有する投資有価証券の価値が減少」→「企業収益を圧迫」→「業績が低迷」という、昨年苦しんだような負の連鎖を、再び呼び戻しかねないのだ。
結論をいうと・・・
株価下落でいえば、株式売却益の課税が強化される可能性も浮上する。