かつて、民主党の菅代表代行が、「(現在10%の株式売却益への課税を)20%、場合によっては30%程度まで引き上げるべき」とメディアで述べた。これが、民主党政権誕生により、現実問題として蒸し返されているのだ。
現行の10%は、株式投資にだけ与えられた特権のようになっており、税率の低さから、株式投資を選好している投資家も多いことだろう。
しかし、「税率が引き上がったら、引き上げ時期の直前には、利益確定の駆け込み売りが殺到してしまう」と某国内証券のリテール営業マンは危機感を口にする。もちろん、ニュースとしても、税率引き上げはネガティブな反応となるはず。これによる株安リスクは、またしても大企業の業績悪化要因につながるのである。
また、直接的な企業の収益圧迫要因として、為替の「円高」が挙げられる。民主党は、ドル建て国債に偏った外貨準備の見直しを進めようとしている。これで円高が進行すれば、輸出関連企業にはコスト・アップ要因だ。
しかも、日経平均株価は、円高をデメリットとするハイテク株の株価上下で変動しやすく作ってある指数。日本の大多数の企業は「円高」が苦手ではないが、日経平均株価という指数は「円高」を大の苦手としているのである。
それだけではない。民主党では、雇用政策のなかで全労働者に適用される最低時給を、現在の全国平均703円から800円への引き上げを想定。3年後には1000円を目指すとマニフェストで掲げている。仮にこれが実現すれば、企業にとっては強烈なコスト・アップ要因となり、業績を悪転させかねないのだ。
「たしかに手厚いが、企業からすれば大迷惑。せっかくここ数年でコスト体質を改善させたのに、企業の努力をぶち壊しにする気か?」「時給で4割強もベースアップするとなると、大企業はますます安い労働力を求めて海外に逃避する」との厳しい声が聞かれる。
『生活第一』は低所得者にはありがたい響きだが、企業や高所得者や、さらには我々投資家にとってはありがた迷惑な話なのである。
また、小沢チルドレンと呼ばれる新人議員にスキャンダルが早くも出ているが、米系の外資系証券では、「鳩山首相の献金問題で市場が混乱する可能性がある」との指摘も。
鳩山代表の政治資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に、すでに亡くなった人などからの献金が記載されている(4年間で193件、総額約2177万円)ことが発覚。選挙終了により、東京地検特捜部が捜査に乗り出すとも一部で報じられている。このあたりの問題が暴発すると、ややこしくなることは容易に想像できる。
市場関係者目線でまとめるなら、「『友愛』を欲してません」という落としどころになるのだが・・・。
【関連記事】
・富裕層など一部の個人投資家が日経平均の「神風反騰」で儲けた舞台裏
・兜町界隈で今も止まない「第二のGSユアサ」探し
・アナリストの「推奨株」は買ってはいけない
・さすがの年収100億円部長もこの金融危機には・・・