2009年9月20日12時7分
インターネットで国に申請手続きなどをする電子申請システムで、総申請数のうち電子申請が使われた割合を示す利用率が、12のシステムで10%を下回っていることが会計検査院の調べで分かった。経費は4年間で約119億円。検査院は18日、システム停止を含む抜本的な対策を取るよう各府省庁に改善を求めた。
電子申請システムは、森喜朗内閣が推進した「電子政府政策」(IT戦略)の目玉として01年以降に始まったが、国民のニーズを度外視し、「何でもかんでもオンライン化してきた」(中央官庁幹部)ことが利用率低迷の原因とみられる。
検査対象となったのは20の中央官庁の49システム。08年度までの4年間に整備や運用にかかった経費は計約1080億円で、平均利用率は05年度に8.1%だったが、08年度には34%まで上昇した。
しかし、12システムは10%以下と低迷。中でも7システムは1%以下、利用件数も大半が70件以下で、総務省の政治資金関係のシステムは利用が2件しかなかった。
総務省の電子申請・届出システムは、平均年齢86.3歳の高齢者が恩給受け取りの際の住所変更などの届け出に利用できるが、申請はほとんどない。「お年寄りにインターネットでの申請を求めるのは難しい」と担当者は漏らす。
財務省には、たばこ業者が小売り販売の許可を申請するが、1業者が申請する機会は1回だけ。内閣府へは、NPO法人の認証の際、活動報告を義務付けているが、報告を提出するのは活動年度に1回だけという。
電子政府評価委員会メンバーで東工大像情報工学研究施設の大山永昭教授(情報処理)は「利用頻度が少なくても便利なシステムはあるので手続きを簡略化するなどの改善の余地があるものは見直すべきだ。オンライン化は行政の効率化や透明性を図れる。利用してもらうには経費を下げるなどのインセンティブを与えることも必要だろう」と話した。(前田伸也)