「 〜地域・くらしに根ざした総合学習・国際理解教育の確立をめざして〜 大阪市立北巽小学校5年生の実践から はじめに
この5年間で、韓国・朝鮮籍の子ども達は、100名ほど減っている。全児童数の30名減に比して、韓国・朝鮮籍児童の減少数が際立っているが、これは近年の在日社会の動向を端的に表現していると考えられる。しかし、毎年のごとく展開される民族学級の活気に満ちた活動や元気いっぱいの民族保護者会のオモニ達とのやりとりにおわれていると、"減っている"という実感は湧いてこないのが正直な気持ちである。といっても、今年度に入って1年生の19名という韓国・朝鮮籍児童数については、昨年度の6年生の入級児童51名の数と比べて"減っている"と感じざるをえない。1年生については、学年当初は毎年のことであるが、ルーツを持つ子どもについては兄弟姉妹関係を除いて、把握できていない。民族学級実践や学年実践、民族講師による課程内実践や給食入り込みをはじめとしたさまざまな子どもたちとの出会を通じて、ルーツを持つ子どもたちの実態を把握しているのが本校の取り組みの現状である。 一方、本校は一貫して「本名を呼び名のる」実践をすすめているが、今年度当初の本名生活児童は10%を越えるにとどまっている。改めて民族学級実践をベースに多民族共生教育・国際理解教育を通じた「ちがい」を認め合い「自分」を大切にする教育の大切さが痛感されている。 本校では、ここ数年「外国人の子どもの教育」に加えて、教育課程内での「民族講師のティームティーチング」の実践をカリキュラム配置して、年間プランのもとに実践をすすめている。特に、昨年度から「総合学習」に位置づけることによって、民族学級実践と学級・学年実践との交流・連携をはかり、課程内実践・国除理解教育の充実を目指すことを目標に、今回の実践はすすめられている。 "歴史・文化・共生の町猪飼野・コリアタウン"の隣接地域で、朝鮮人多住地域の本校区にあっても、民族学級に入級している子ども達にとって、民族名ましてやハングル表記の民族名については自分のイルムを書く読むことでいっぱいでの状況である。仲間の民族名についてさえ、充分に覚えていない現状におかれている。学校としても、「本名を呼び名のる」実践をすすめていくことを基本的に確認して日々の取り組みがすすめられ、民族の子どもたちの中には、学習プリントやテストのイルム欄にハングルで民族名を書く子どももいるが、まだまだクラスに中でハングルを身近に感じるまでには至っていない。このような中で、民族の子どもはもちろん日本人の子どもにとっても、もっと身近に「ハングル」を学習し、地域の暮らしの中で「ハングル」に出会うことによって、民族名はもとより韓国・朝鮮の文化に親しみを実感してもらいたいという意図で、民族講師と相談しなから実践内容を創ることに心がけてきた。校区をくまなく歩きながら、「ハングル」を見つける作業は、思った以上の収穫で、大変楽しくいろんな出会いや発見もあって自分自身にとっても大きな学習成果であった。この学習を子ども達と分かち合うことができればとの一心で今回の実践を始めることとした。 1.課程内実践から、総合学習・国際理解教育に位置づけて 総合的な学習として、実践ブランにそって隣国の言葉である朝鮮語・ハングルの表記や身近な単語の意味を学習した。特に心に留めたのは、友だちの民族名・本名を正しく呼べるようになるためにも、地域やくらしの中にあるハングルをできるだけ取り入れ親しみを感じさせながら実践をすすめることであった。ここでは、5年生の実践を紹介する。 5年生は、学年児童は82名、3クラス。韓国・朝鮮籍児童は34名で、本校にあっては比較的多い学年である。ルーツを持つ子どもは14名。民族学級には、ルーツを持つ子どもを含めて44名が入級している。 2.実践のねらい(全4時間) ◎自分たちの町の様子を知り、 ◎友だちのイルムを正しく読む。
※学習活動 第1時 ・ ・自分たちの名前を 第2時 ・友だちの名前を読む。 3.子どもたちのようす @1時間目では、「 自分たちの名前を 日本語で考えた単語を A2時間目では、前時のまとめに、子どもたちに問いかけた宿題からスタート。 「さぁ、みんなのお家の中にも、??の書いてあるものがあった?」の問いかけに 「あるある 「冷蔵庫を開けるとキムチやのりそれに、コチュヂャンの容器。」 「韓国の親戚の人からもらった、これノート、鉛筆。」と差し出して見せてくれる子ども。 「ジャンバーのタグに 「お母さんが持っているビデオに、 など、自分たちで見つけてきたものを、民族学級の子どもたちもまた、学級の子どもたちもいっしょになって自慢げに答えているのが印象的だった。 そんな雰囲気の中、「ユヂャチャ(ゆず茶)」の容器やのり、ラーメン、コチュヂャン、鉛筆、CDなど1つずつ実物を取り出すと「あっ知っている」「食べたことある」「飲んだことある」と活発な意見がかえってきた。そんな様子を見て「さすが北巽の子どもたちだな〜」と、思った反面、想像以上の反応に嬉しく感じた。 「こんなにたくさん、みんなの身の回りに??があるね。なんでかな?」 「韓国人が住んでいるから」と次への展開。 「では、どんな所に 公共施設である駅や区役所、図書館など考えての意見。もう少し自分たちの近くを考えていくと、コリアタウンそして、私たちの校区・・・お店の看板やメニューにあると。「あ〜○○さんの家の近くや。」「この前そのお店に食べに行ったよ。」また、場所を説明していくと「右に曲がったら、そう言えばある。」と、特に校区の写真を提示すると興味深い意見が返ってきた。 B3時間目は、写真で見たお店の看板などの 次に、お店の C4時間目は、今回の学習のまとめです。考えたことや思ったことをだれもが伝えられるようにと、感想文にまとめた。 子どもたちの感想から
4.実践を終えて 「自分たちの町を知り、 今回の実践で一番こだわってきた「親しみをもつ=友だちに親しみを持つ」ということが、実際の授業の中で、子どもたちの声から出てきたように、ひとりひとりに持つことになったように感じることができた。子ども達は、毎日の暮らしの中に地域の中に、これほどたくさんの また、友だちのイルムを学級で学習し、正しく読むことによって、なかなか本名を呼び・名のれていない子どもたちにとっても、自然に自分のことが言え、また、受けとめてくれる仲間がいるということを改めて感じことができた。なによりも民族学級の子ども達が本来の姿・元気な姿を出せる場が学級にもあるという「自信」へとつなげることができた。 ありきたりになるかと思うが、民族学級で実践してきたものを学級につなげていく大切さを、子どもたちの様子を通じて痛感できた。充分とはいえないが、今回の実践が民族学級と学年・学級とをつなげるもののきっかけとして、今後も実践を展開していきたいと思う。 今回の実践では、子ども達の暮らしの中に、思った以上に、韓国・朝鮮文化が溢れており、日本人児童にとっても韓国・朝鮮の食文化が生活の中に根ざしていることが見えてきたと感じている。ただ、子ども達自身がそのことに気づき、そのわけについても思いをめぐらしてほしいと願っていたが、この点に関しては、正直に言って子ども達の側からの反応は弱かった。 この点に関しても、課題整理をしながら、今後の実践の中で解決していきたいと考えている。
目標 ◎ ちがいを認め合い、自分を大切にする学級・学年集団づくりをすすめる。 ◎ 民族学級実践と学級・学年実践との交流・連携をはかる。 実践内容
北巽小学校 「外国人の子どもの教育について」より |