舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

魔女将

ふと気が付くと、1月の16日で三年半連続更新達成だったんですね。
だからなんだというわけではないのですが、せっかくですからSSを投下いたします。

いつものごとくのシチュ優先短編で、代わりばえしないネタですが、楽しんでいただければ幸いです。


「魔女将」

『そ、そんな・・・バカなぁっ!!』
断末魔の叫びを残して爆発する魔将ウォルゲル。
地上に恐怖を撒き散らしていた暗黒帝国の将軍の最後だった。

『やったぁ!』
『やったね!』
『やったわ!』
三人の女の子たちのうれしそうな声がスピーカーから流れてくる。
地上の平和を守る三人の戦士たち、ピースエンジェルの声である。

「みんな、ご苦労様。すぐに撤収してちょうだい。後の処理は防衛隊に任せていいわ」
モニターで少女たちの活躍を見つめていたエンジェルチームの司令官茅部渚(かやべ なぎさ)はホッと肩の力を抜いた。
今まで数々の戦いがあったが、ついに今日あの魔将ウォルゲルを撃破したのだ。
これで暗黒帝国の地上侵攻は大幅な後退を強いられるだろう。
いや、地上侵攻そのものをあきらめるかもしれないのだ。
そうなればもう少女たちに戦いを強いることもなくなる。
どうかそうであって欲しい。
渚はそう思わずにはいられなかった。

整列しているエンジェルチームの三人。
赤、青、黄色のエンジェルスーツを身にまとい、ヘルメットを抱えて少女たちが立っている。
いずれも能力を見出され、心ならずも戦いに身を投じることになってしまった少女たち。
まだ高校生という彼女たち三人に地上の平和は託されたのだ。
なんと過酷なことだろう。
彼女たちを前にして任務を命じる渚にとって、それはいつも感じることだった。

「ご苦労様、みんな。よくがんばったわね」
紺のタイトスカートの司令官用制服に身を包んだ渚が、少女たちの前に立って彼女たちをねぎらう。
エンジェルチームの司令官として時に過酷な任務を命じるものの、チームをしっかり陰でサポートしてくれているのが渚であることをチームの少女たちは知っている。
だから、三人の少女たちは、いつでも渚の指示に心から従うことができるのだ。
司令官とチームメンバーの強い信頼関係。
これがなければ暗黒帝国との戦いなどできるはずも無かった。

「これでしばらくは暗黒帝国も鳴りを潜めるでしょう。このまま地上侵攻をあきらめてくれるといいんだけど・・・」
「渚司令、おそらくそれはないと思います」
三人の中央に立つ赤いエンジェルスーツの少女がきっぱりという。
それに伴い、両脇の二人もうなずいた。
「そうね・・・奴らがこのままあきらめるとは思えない。油断をしてはだめということね」
「「ハイ」」
力強く返事をする三人。
「これからも戦いは続くわ。あなたたちにはこれからも戦ってもらうことになるでしょう」
「大丈夫ですよ」
「任せてください」
「地上の平和は私たちが守ります」
新たな決意を秘める三人を見渡し、渚はこれからの戦いの前途が明るいことを確信する。
この娘たちがいる限り、地上は暗黒帝国のものにはなりはしない。
「ありがとうみんな。でも今日はゆっくり休んでちょうだい。明日も緊急事態がない限り呼び出しません。自由に過ごしてね」
「やったぁっ!」
「ありがとうございます、渚さん」
「渚さんもゆっくりしてくださいね」
「ええ、そうさせてもらうわね」
楽しそうにする三人を見て、渚は一日も早い戦いの終結を願わずにはいられなかった。

                      ******

「ウォルゲルめ・・・大口を叩いておいてこのざまか・・・」
中央の玉座と思しき場所に座る人影から言葉が漏れる。
いつもならその足下には二人の人物がいたのだが、ウォルゲルがいなくなった今は一人しかいない。
「ウォルゲルも小娘どもに倒されるとは・・・無念だったことでしょう」
白衣を着てひざまずいている老人がうなだれる。
頭部には白髪に混じりさまざまな機械がむき出しでちかちかと瞬いていた。
「ふん・・・所詮そこまでの奴。ゲブルムも心せよ」
「は、ははっ、肝に銘じまする、ザルス様」
玉座に座るのはザルス王子。
皇帝陛下の息子である。
その姿はスマートな甲冑姿であり、フルフェイスのヘルメットがその表情を隠しているものの、その声を聞いただけで白衣の老博士ゲブルムは生きた心地がしなかった。

「しかし・・・ウォルゲルがいなくなっては、我が暗黒獣も活躍が難しくなりまする」
ゲブルムは今後どうするつもりなのかが知りたかった。
彼の作り出す暗黒獣は、指揮官たる魔将がいなくては能力を発揮できないのだ。
まさか彼自身に指揮を取れとは言わないだろうが、そうなると誰か代わりの魔将を呼び出さねばならないのではないだろうか・・・

「ゲブルムよ」
「は、ははっ」
「魔将にふさわしい者がいるではないか。新たに我がしもべとするにふさわしい・・・」
「そ、そのような者が?」
誰のことだかゲブルムにはわからない。
「クックック・・・今から命じるものをすぐに用意せよ」
ザルス王子が含み笑いするのを、老博士は何か不気味な音でも聞いたように背筋がぞっとするのを感じていた。

                       ******

「お疲れ様でした」
「お先に失礼します」
「はい、お疲れ様」
司令センターのオペレーターたちの退勤を見送り、渚も一息つく。
制服を着替えて帰途に着くと張り詰めていた気も緩んでくる。
今日は少し寄り道していこう・・・
一般のビルの地下駐車場にカモフラージュされた司令センターの入り口から姿を見せたときには、渚はもう普通のOLと見分けがつかないような姿だった。
マンションに帰る途中に少しショッピングしていこう・・・
そんな気持ちで自分の車に近寄ったとき、突然周囲の車の陰から異形の人影が数人飛び出してきた。
「えっ?」
とっさのことに驚く渚。
だが、エンジェルチームの司令官としてある程度の訓練を積んでいる渚は、間一髪で首筋目がけて振り下ろされた手刀を避けた。

車を背に体勢を整える渚。
現れたのは暗黒帝国の下級戦闘員クロカゲーだ。
真っ黒な全身タイツを身につけたような姿をしており、目も鼻も口もない。
男性型と女性型があり、考えたくないことだったが、一般の人々がさらわれて作り変えられたものとも言われている。
戦闘用に作られているため、人間の数倍の力を持っており、集団で迫られては防衛隊でも太刀打ちしがたい存在だった。
そんなクロカゲーの男性型と女性型合わせて三体が目の前に立っていた。

「まさかこんなに早く行動を起こしてくるとはね。魔将を失っての焦りからかしら」
油断なくクロカゲーたちと対峙する渚。
だが、この出入り口は封鎖しなくてはならない。
暗黒帝国に司令センターの入り口を知られてしまっては困るのだ。
この場を切り抜けて、司令センターに状況を知らせなくては・・・
渚は護身用のパルスガンを取り出そうとする。
パルスガンから発せられる衝撃波は、クロカゲー程度なら行動不能にできる威力を持っている。
問題は奴らを牽制しながらバッグから取り出せるかということだった。

だが、渚の心配は無用だった。
三体のクロカゲーに気を取られていた渚は、車を背にしていることで背後からの攻撃を予想していなかったのだ。
うなじの辺りにチクッとした痛みを感じ、急速に意識が遠のいていく。
渚は麻酔針を後ろから打ち込まれたことに思い至ったが、それはもはや何の役にも立ちはしなかった。

                        ******

「進行状況はどうだ」
「ハッ、ほぼ問題なく進んでおります。すでにこの女の肉体は魔改造で我が暗黒世界の魔人へと変化しております。後は・・・」
渚の耳にぼんやりと話し声が聞こえてくる。
深い闇の中から浮かび上がるかのように、意識が次第にはっきりしてくる。
ここはどこだろう・・・
私はいったい・・・
まだ靄がかかったような思考をはっきりさせようとする渚。
「お、どうやら目が覚めたようですぞ」
「ククク・・・驚くであろうな」
話し声の主はどうやらそばにいるらしい。
渚はゆっくりと目を開けた。

「目が覚めたようだな、茅部渚。いや、我が新たなるしもべ、魔女将ナギサよ」
横たわる渚を見下ろしている中世期の甲冑。
そのフルフェイスのヘルメットの奥から、赤く輝く目が覗いている。
「こ、ここは・・・あなたはいったい?」
渚はすぐに身構えようとしたが、両手も両脚も台の上に固定されているらしく、ぴくりとも動かない。
「ククク・・・我が名は暗黒帝国の王子ザルス。暗黒帝国へようこそ」
「暗黒帝国? やはり私は捕らわれて・・・」
唇を噛みしめ、必死に手足を動かそうとする渚。
だが、どうにも躰が動かない。
固定されているというよりも自由にならないという感じなのだ。

「ククク・・・無駄なことだ。お前の躰はお前のものであってお前のものではない。よく見るがいい」
「えっ?」
渚はかろうじて動く首を動かし、頭を持ち上げる。
「こ、これは?」
渚は驚いた。
彼女の躰は、漆黒のエナメルのようなつややかさを持つボンデージとも言うべきレオタード状の衣装に包まれており、ひじから先とひざから先も黒革のロンググローブとロングブーツが包み込んでいたのだ。
さらに肩口にとげの付いたアーマーが胸周りを覆い、腰にはとげの付いたベルトチェーンが巻かれている。
ロンググローブとロングブーツの手首と足首の部分にもとげの付いたブレスレットやアンクレットが巻かれ、まるでSMの女王といったいでたちをしていたのだ。
「ククク・・・おわかりかな? お前の躰はもはやわれわれ暗黒帝国の魔女将となったのだ。後はこのサークレットをつければ、お前の意識は完全に暗黒帝国の一員となる。新たなる魔将の誕生となるのだ。ハッハハハハハ・・・」
高笑いするザルス王子に渚は背筋が凍る。
新たなる魔将、しかもそれは自分自身だというのだ。
せっかくエンジェルチームが必死に戦ってウォルゲルを倒したというのに、今度は私が彼女たちの敵になるというの?
そんなことができるというの?

「嘘、嘘よ。私はあなたがたになんか屈しない。どんなことをされたってあなたのしもべになんかなるものですか!」
ザルス王子をきっとにらみつける渚。
「ククク・・・すぐにわかる。このサークレットを嵌めればすぐにな。ゲブルム、はじめろ」
「ハハッ」
ザルス王子から手渡されたサークレットを渚に嵌めようとする老博士。
両脇から角が生えたような形をし、額のところには黒い宝玉が嵌まっている。
「いやっ、いやぁっ!」
必死になって首を振る渚。
サークレットを何とかして嵌められないようにとしているのだ。
だが、渚の抵抗も空しく、カチリという音とともにサークレットが嵌められる。

とたんに渚の心はぐちゃぐちゃにかき乱されていく。
必死で自我を保とうとする渚だったが、黒い闇が広がり、渚の意識を飲み込んでいく。
嘘でしょ・・・
こんなことって・・・
急激に思考がゆがめられていくことを感じる渚だったが、どうにも抵抗するすべがない。
めまいがするような、頭が揺さぶられるような気持ち悪さとともに、渚は自分の意識が変わっていくのを認識する。
必死で否定したいのに、じょじょに暗黒帝国の一員であることが誇らしくなってくるのだ。
「いやぁっ! 私の思考を変えないでぇっ!」
いやいやをして抵抗する渚だが、サークレットからのパルスのようなものがどんどん渚の思考を変えていく。
「ああ・・・いやぁ・・・」
渚の目から涙が一筋こぼれ落ちた。

「ククク・・・さすがだなゲブルム。サークレットによる洗脳は順調のようだ」
渚の抵抗が弱まってきたことにザルス王子はほくそ笑む。
「クロカゲーの製造過程で、人間の頭脳のいじり方は心得ておりますからな」
白衣の老博士も不気味な笑みを浮かべ、渚の様子をうかがっていた。
渚はじょじょに頭を動かすこともなくなり、目がうつろになっていく。
洗脳が深度を増して、渚の人格そのものを変えていくのだ。
次にはっきりした意識を取り戻したとき、そこには茅部渚という人間ではなく、魔女将ナギサがいるに違いない。
ザルス王子には新たなしもべの誕生であり、ゲブルムには自己の技術の確かさを証明する瞬間になるだろう。

渚の思考はゆがめられていた。
先ほどまでの恐れは消え去り、静かにパルスを受け入れている。
暗黒帝国への恐怖と憎悪は賛美と崇拝にすりかわり、皇帝陛下への忠誠の心が広がっている。
地球の平和と人間を守りたいという意識も、不逞に地上を支配する下等生物への憎悪へと変わっていく。
ともに戦うべき仲間であり、可愛い妹たちとも言うべきエンジェルチームも、帝国の邪魔をする忌々しい存在へと置き換わる。
やがて渚は、ナギサへと変えられてしまうのだった。

「そろそろよかろう」
セイフティを解除するザルス王子。
暗黒帝国の魔人として強化された肉体を、人間の意識のままで暴れさせるわけにはいかないので、洗脳がすむまでは躰の自由は奪ってあったのだ。
「ナギサよ、起きるがいい」
「ハイ、ザルス様」
ゆっくりと上半身を起こすナギサ。
口元には冷たい笑みが浮かび、ザルス王子の命令に従うことを楽しんでいるかのようだ。
ゲブルムが黒いマントを手渡すと、ナギサはそれを羽織ながら立ち上がる。

「ククク・・・我が新たなるしもべナギサよ。自分が何者か言ってみるがいい」
「ハイ、ザルス様。私は暗黒帝国の忠実なるしもべであり、魔女将のナギサです。どうぞ何なりとご命令を」
すっとザルス王子の前にひざまずくナギサ。
「それでいい。魔女将ナギサよ、これよりお前は暗黒獣の指揮を取り地上を征服するのだ。邪魔者は実力で排除せよ。いいな」
「お任せくださいませ。我ら暗黒帝国に歯向かう者は、この私が始末いたします。憎きエンジェルチームの最後をとくとご覧くださいませ」
ナギサの言葉に満足するザルス王子。
もはやこの女は魔女将としての自分に何の疑問も持ってはいない。
あのウォルゲルを倒した女だ。
魔女将として活躍してくれるに違いない。

「うむ、よく言ったぞナギサ。お前の活躍に期待しよう。だがその前に」
にやりと笑うザルス王子。
「我がしもべであるお前の忠実さを見せてもらうとしよう。来るがいい」
「ハイ、ザルス様。私の躰の全てでご満足いただくまでご奉仕させていただきます」
ザルス王子にナギサは付き従う。
そうだ・・・
これこそが真の目的。
この女の存在を知ってから、ずっとこの女をモノにしたいと思っていたのだ。
強力な魔女将であると同時に性の奴隷。
二つを一人で兼ね備えた存在がナギサなのだ。
今俺はそれを手に入れた。
ナギサを背後に従えながら、ザルス王子は満足の笑みを浮かべるのだった。

END


いつものごとくのネタでお目汚し失礼いたしました。
お読みいただきありがとうございました。

それではまた。
  1. 2009/01/20(火) 20:43:09|
  2. 洗脳系SS
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あるオペレーターの日記

新年最初の更新は短編SSです。
今年もこういった悪堕ちSSをたくさん投下して行きたいです。

ですがですが・・・
すみません。m(__)m
ビミョなできになってしまいました。
お屠蘇飲んでいい気分で書いたのがいけなかったかしらん・・・

お目汚しですがお楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。


「あるオペレーターの日記」

4月6日(月)
今日から私は正義の味方。
なんちゃって。
でもうれしいよぉ・・・
いよいよ私も一年間の訓練を終えて、晴れてピースキーパーの一員になれたんだわ。
グリーンを基調にしたピースキーパーの制服に身を包んだとき、思わずうれしくてうるうるしそうになっちゃった。
明日からはジャアクーダとの戦いが待っているわ。
一人のオペレータに過ぎないけれど、キーパーチームのサポートをする重要な役目。
うう・・・私に勤まるかしら・・・
がんばらなくちゃ。
オー!!

4月7日(火)
私の配属が決まりました。
Cセクションのサードオペレーター。
新人の私は、いわば補欠要員みたいなものってこと。
ここで先輩方のやり方を覚え、一人前にオペレーターになれってことね。
がんばるぞー。

Cセクションのチーフオペレーターは美奈子(みなこ)さん。
優しそうなお姉さんて感じだけど、結構ミスにはきびしい人らしい。
世界の平和を預かるんだから、ミスは許されないってことなのね。

セカンドオペレーターは香苗(かなえ)さんと里緒(りお)さん。
二人がこれからいろいろと教えてくれることになるらしい。
迷惑にならないようにしっかりがんばらなくちゃ。

そしてオペレーターセンターのセンター長が、まだ二十代後半でセンター長という実力の持ち主絵美香(えみか)さん。
さぞやお堅いキャリアウーマンかと思ったら、まったく違って物静かな素敵な人。
まだ声をかけてもらったのは一回だけど、覚えてもらえるようにしないとなー。

とにかくやるしかないんだからがんばるしかないよね。
明日も一日がんばるぞー!!

4月13日(月)
今日でオペレーターとして配属されてから一週間。
はうー・・・
大変だよぉ・・・
怒られてばかりだよぉ・・・
先日なんか、ナチュラルベージュのストッキングのストックを切らしちゃって、黒のストッキング穿いて行ったら服装規定違反だって怒られちゃうし・・・
センサーエリアの切り替えを一段階間違えるって言うへまやっちゃうし・・・
最悪だよぉ・・・
ハア・・・
明日は怒られませんように・・・

4月16日(木)
なんだか頭が重い・・・
風邪でもひいたかなぁ・・・
モニターを見ているとボーっとしちゃうし・・・
なんだかめまいがするような感じ。
どうしちゃったのかなぁ・・・

4月19日(日)
今日は休日出勤。
もちろんピースキーパーに休日はない。
悪の組織ジャアクーダの出没に備えてオペレーターも交代で勤務しなくてはならないのよ。
だから、彼氏を作ったりデートしたりは二の次。
もっとも・・・
誰もいないからいいんだけどね・・・
とほほ・・・

そういえば今日はちょっと変なことがあった。
里緒さんが服装規定違反の黒いストッキングで勤務についていたんだけど、美奈子チーフは何も言わなかったのよね。
里緒さんの黒ストッキング脚素敵だったなぁ・・・
私も黒スト穿きたいなぁ・・・
穿いて行こうかな・・・

4月23日(木)
今日は絵美香センター長も黒いストッキングを穿いてきた。
これでオペレータは全員黒いストッキング。
なんだかとっても気持ちいい。
みんなが同じ服装だから制服の効果があるのよね。
明日もがんばるぞー。
オーッ!

4月27日(月)
今日で丸三週間。
なんとなく仕事にも慣れてきた気がするわ。
センサーエリアの切り替えもスムーズにできるようになったし、キーパーチームの行動を追うこともできるようになってきたもんね。

さて、明日はお休みだー!
やったー!
何しようかな・・・
買い物は行かないとだめよねー。
黒いストッキング買い込まなくちゃいけないし、黒レオタも用意しなきゃ・・・
美奈子チーフったら内緒で黒レオタ着ているんだもんずるいよね。
オペレータとしてはやっぱり黒レオタ着たいよね。
明日買ってこようっと・・・

5月2日(土)
今日は絵美香センター長から通達があった。
明日からオペレーターはセンター内では黒レオタードに黒ストッキング着用とのこと。
やったね。
黒レオタードで任務につくって気持ちいいもんね。
ピースキーパーの制服なんてもう着たくないよ。
何でみんなあんな制服を着てたのかしら・・・
私たちは違うのに・・・

5月5日(火)
世間はゴールデンウィーク真っ盛り。
おろかな人々が浮かれている。
その間にも私たちは任務に励むの。
おろかな人々がいずれそのおろかさの報いを受けるように・・・

今日はとってもうれしいことがあった。
オペレーションセンター宛に荷物が届いたの。
差出人は偉大なる首領様。
このことはほかのピースキーパーには知られていない。

絵美香センター長から呼ばれ、私も荷物を受け取った。
中身はブーツとベルト、それに手袋。
ついに私たちの制服が完成したのよね。
私はすぐにブーツを穿いて手袋を嵌め、ベルトをレオタードの上から巻く。
オペレーターの全員が偉大なる首領様にお仕えするための制服姿になると、絵美香センター長が宣言した。
「ヒャイーッ! 私たちはジャアクーダオペレーションセンターのオペレーター。偉大なるジャアクーダ首領様に忠誠を誓います」
「「偉大なるジャアクーダ首領様に忠誠を誓います」」
私たちはそのあとに続いて唱和する。
そうよ・・・
偉大なるジャアクーダに忠誠を誓うのよ。

                        ******

6月1日(月)
キーパーチームの最後の日。
全てのデータを首領様に捧げた今、ピースキーパーに勝ち目はない。
おろかにも最後まで首領様に抵抗するというけど、そんなの命を粗末にするだけだと気が付かないのかしら。
私はベータ3の指示のもと、キーパーチームの情報を転送する。
彼らが構築したこのシステムが、彼ら自身を滅ぼすのよ。
偉大なる首領様によって支配された私たちが愚か者たちに引導を渡すの。
なんて素敵なのかしら。
偉大なるジャアクーダに栄光あれ。
私はジャアクーダに支配される喜びを胸に、キーパーチームの逃走経路をつぶすのだった。

END

一人称だったので、モニターを通して洗脳波を浴びせられてしまうのがわかりづらくなってしまいました。
ビミョとなってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。

それでは皆様今年もよろしくお願いいたします。
  1. 2009/01/01(木) 18:57:33|
  2. 洗脳系SS
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もーそー

ちょっとした妄想を文字にしてみました。

地の文が無い会話文だけで作ってみましたがいかがでしょうか?
楽しんでいただければ幸いです。

「クックック・・・このブログもつまらんのう。悪意あるコメントを大量投下して炎上させてやるかい」

「はわわ・・・そ、そうはさせません!」

「む? 誰かと思えばブログ妖精ココロではないか。なるほど、このブログにはお前がいたのか」

「楽しんでブログを書いている人たちを悪意あるコメントで炎上させて恐怖のどん底に突き落とし、ブログ閉鎖させてしまうなんて赦せません。このブログはココロが守ります」

「ほほう・・・だがこのブログも所詮はくだらぬ自己満足の駄文を垂れ流しているに過ぎないではないか。ちょっと長い間連続投下をしているからといって図に乗っておる」

「そ、そんなことはありません。確かにつまらない記事のときもありますけど、ブログ主さんは一所懸命に記事を書いているんです」

「ククククク・・・たわけたことを。ブログなどという駄文を垂れ流すだけの代物は無いほうがいいんじゃ。ここも炎上させてやるわい。意気地なしのブログ主がコメント欄を閉鎖するかブログそのものを閉鎖するところを見ているがいい」

「そんなことはさせません! このブログはココロが守ってみせます!」

「たわけめ。お前のようなブログ妖精に何ができる。いや、そうじゃのう・・・面白い趣向を思いついたわい・・・クックック」

「な、何をするつもりですか」

「そうれ、こうしてやるわい」

「ああっ、いきなり卑猥な記事を・・・」

「クックック・・・ブログ妖精はブログとは密接なつながりを持つもの。卑猥な記事が載ればブログ妖精も・・・クックック」

「そ、そんなことは・・・ああ、あそこが・・・あそこがうずくよぅ」

「そうじゃろうそうじゃろう。お前はもう淫乱妖精じゃ」

「そ、そんなことは・・・ああ、ください・・・ココロに男の人のアレをください・・・」

「クックック・・・いい表情じゃぞ。お次はこれじゃ」

「ああっ、今度は陵辱や虐待の記事」

「そうじゃ、クックック・・・お前も他人を虐待してみたくなるじゃろう」

「そ、そんなこと・・・ああ・・・た、楽しそう」

「他人をいたぶるのは快感じゃぞ。やってみたいだろう?」

「ああ・・・はい、やってみたいです」

「とどめはこれじゃ」

「えっ? これはブログを炎上させたりあおったりして楽しむ記事」

「そうじゃ。お前もブログを炎上させてみたくないかの?」

「ハアハア・・・したい・・・炎上させてみたい・・・うふふふふ・・・」

「受け入れるのじゃ。受け入れてブログ邪妖精になるのじゃ」

「邪妖精・・・ブログ邪妖精・・・」

「見ろ、お前の姿が変わってきたぞ。邪悪な黒いコスチュームに身を包んだブログ邪妖精へと生まれ変わるのじゃ」

「ああ・・・あああ・・・なんて気持ちがいいんだろう・・・ブログを炎上させるのって楽しそう。これからはたっぷりとこのブログを炎上させてやるわ。うふふふふ・・・」

こうしてまた一つ、ブログが炎上し消えうせた。
  1. 2008/09/06(土) 20:22:05|
  2. 洗脳系SS
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白の帰還(3) 旧バージョン

昨日一昨日と二回にわたって、短編SS「白の帰還」をお楽しみいただきありがとうございました。

ところで、お読みいただいた皆様の中には、途中であらって思われた方もいらっしゃったのではないでしょうか?
実はこの「白の帰還」は、書いている途中でどうにも行き詰まり、途中から(具体的には二日目の分から)大幅に路線を変更して書き上げたものだったのです。
できるだけ違和感無いようにまとめたつもりではありましたが、おそらくなんか途中で変わったなって思われた方がいらっしゃるのではと思います。

それで、本来はこういう形にする予定だったという旧バージョンを公開いたします。
途中で切り上げて新バージョンへと移行したため、最後は尻切れトンボ的な終わりになっておりますが、昨日までの新バージョンと読み比べてみてくださいませ。
そして、今後の参考にもしたいので、どっちがよかったかのアンケートなど取らせていただければと思います。
なにとぞご協力のほどお願いいたします。

それでは旧バージョン、ご鑑賞くださいませ。


「白の帰還」旧バージョン

「う・・・ん・・・ここ・・・は?」
天井の蛍光灯が白々と輝く白い部屋で私は目を覚ます。
鉄パイプで作られたベッド。
白いカバーに包まれた毛布が上にかけられている。
「私は・・・いったい?」
先ほどからずきずきと痛む頭。
何があったのかよく思い出せない。
ここはどこ?
私はどうしてこんなところに?

私はとりあえず周囲の確認をする。
どうやらここはどこかの病院のよう。
白い壁に囲まれた静かな部屋。
ベッドの脇には点滴をぶら下げるスタンドや、心電図みたいなモニター装置がおいてある。
でも窓は一つもない。
外は一切見えない。
普通の病室とは思えない。
私はとにかく起き上がって・・・

ガチャ!
金属質の音が静かな部屋に響いた。
躰を起こそうとした私は、右手をぐいと引っ張られ、思わずベッドに引き戻される。
「えっ?」
私は右手に食い込んだものを見た。
「手錠?」
そこには私の右手首とパイプベッドをつなぎとめる金属製の手錠が鈍く光っていたのだ。
「ど、どうして・・・」
私はここに捕らわれたことに恐怖した。

                     ******

『いやよあたしは!』
『そう言うなって・・・もう大丈夫だから』
『だがなぁ光一(こういち)、洗脳されていたとは言え、あいつは暗黒帝国の女幹部マリーだったんだぞ』
『だからそれは奴らに洗脳されていたからだって』
『でも、本当に洗脳が解けたのかな・・・何かの罠なんじゃ・・・』
『そんなこと・・・ないって』
『おいおい、いつまで騒いでいるんだ? もう麻梨(まり)の部屋の前だぞ』
防音のよくないドアの向こうから声がする。
懐かしい声。
それと同時に胸が苦しくなる声。

「麻梨、起きていたのか?」
ドアを開けて入ってくる青年男女五人。
パッと見ただけなら、どこかのバンドグループとでも見えるかもしれない。
でも、そうじゃない。
彼らこそがこの日本を、そして地球を邪悪な暗黒帝国の魔の手から守っているセーバーチーム。
その五人のメンバーなのだ。
「元気そう・・・ね・・・」
ふと目をそらす茜(あかね)。
セーバーイエローとして、かつては私とコンビを組んでいた。
でも、今の私は・・・
「は、初めまして・・・でしょうか」
おずおずと頭を下げる香奈美(かなみ)。
そうね・・・
こうして会うのは初めてだわ。
戦場では何度も会っているのにね。
私の替わりのセーバーホワイトとして・・・
「麻梨・・・本当に大丈夫なんだろうな。俺はまだお前を信じたわけじゃねえぞ」
セーバーブラックの晟(あきら)。
いつもと同じく人に対して距離をとる。
「晟! 麻梨はもう大丈夫だって。メディカルセンターの検査にも合格したんだし」
セーバーレッドの光一。
そう言いながらもちょっと笑顔がぎこちないわよ。
「けがはもう大丈夫なのか?」
体格のよい熊のような惣太(そうた)。
セーバーグリーンとして相変わらず皆を後ろでまとめているのね。
「みんな・・・私、今までみんなの敵になって・・・ごめんなさい」
かつての仲間たちを前にして、私は頭を下げるしかできなかった。

そう・・・
私は戦いの最中に暗黒帝国に捕らわれた。
そして、皇帝の闇の力を注ぎ込まれ、女幹部マリーとして生まれ変わってしまったのだ。
それからの私は暗黒帝国の尖兵として怪人どもを指揮し、地上に被害を与えてきた。
先日の戦いで頭に衝撃を受け、洗脳が解かれるその時点まで・・・

「まあ、元気そうで何よりだ。躰の調子が戻ったらまた一緒に戦おうぜ」
光一はそう言ってくれたが、その瞬間に茜と香奈美の表情が曇ったことを私は見逃さない。
すでにセーバーチームに私の居場所はないんだわ・・・
「麻梨にはいろいろと聞きたいことがあるって司令も言ってたぜ」
「しばらくは監視体制に置かれるけど、悪く思わないでね、麻梨」
「ええ、それは当然のことよ。なんてったって、私は暗黒帝国の女幹部マリーなんですもの」
ずっと視線をそらしたままの茜に私はおどけて見せる。
「なに言ってる! 麻梨はマリーなんかじゃない! セーバーホワイトの麻梨なんだ!」
「そ、そうですね。麻梨さん、復帰したらいつでもセーバーホワイトはお返ししますから言ってくださいね」
複雑そうな表情を浮かべる香奈美。
「香奈美、それを決めるのは司令部だ。俺たちがどうこうって話じゃない」
晟が香奈美の肩に手を置いた。
「そ、そうよ。今は香奈美さんがセーバーホワイトなんだから、私のことは気にしないで暗黒帝国の野望を打ち砕いてね」
私・・・いやな女だ。
心にもないことを言っている。
セーバーホワイトを返してって叫びたいぐらいなのに。

「そろそろ引き上げよう。待機任務の途中だし、麻梨だって病み上がりだから」
「そうだな、そうするか」
惣太の言葉になんとなくホッとしたような表情を浮かべるみんな。
「それじゃな、麻梨。またくるよ」
「早く元気になってくださいね、麻梨さん」
「またね、麻梨」
ぞろぞろと病室を出て行ってしまう五人。
張り詰めていた空気が解き放たれる。
五人が去ったことで、私自身も安堵していることに気がついていた。

                      ******

手錠こそはずされたものの、私の周りにはいつも幾人かの監視の目があった。
病室を出て一室をあてがわれたものの、いわば体のよい軟禁状態。
外出は許可制で、散歩もショッピングも思うに任せない。
ベースの一角の一番無害な地区に閉じ込められているのだ。
仕方がない・・・
私は先日まで暗黒帝国の女幹部だったのだ。
私がセーバーチームの司令官でも、こういった処置を講じるだろう。
仕方がない・・・
でも・・・
でも・・・
心が乾いていく。

意外にも、時々顔を出してくれたのはセーバーホワイトの香奈美ちゃんだった。
高校を卒業したばかりといった感じの香奈美ちゃんは、多少のぎこちなさはあったものの、私の部屋に遊びに来てくれるようになったのだ。
姉妹のいない私にとって、まるで妹のような香奈美ちゃんとの会話は、私の心を癒してくれる唯一の時間だった。
香奈美ちゃんと一緒にいる限りにおいては、私を監視する連中も姿を現さない。
このことがどれほど私にとってありがたいことだったか・・・

                       ******

「麻梨さん、今日はショッピングに行きませんか?」
清楚な白いワンピースに身を包んだ香奈美ちゃんが姿を見せてくれる。
私はそれだけで心が弾むのを感じていた。

少しラフにジーンズとシャツを着込んで、私は香奈美ちゃんと出かけていく。
もっとも、出かけるといってもセーバーベース内のショッピングモールだ。
セーバーベースはそれ自体が独立した一都市と言ってもいい。
チームにかかわるさまざまな人々とその家族が暮らしている拠点なのだ。
無論、私がマリーにされてしまったあとはかつての場所からは移転したので、現在のベースの正確な位置は私にはわからない。
ベース内の一部だけのみ歩くことを許されているのだ。
仕方がない・・・
もう二度とマリーに戻ることなんてないけれど、それを信じてもらうには時間がかかる。
だから・・・
仕方がないのだ。

「これなんかどうですか? 麻梨さんはスタイルいいからきっと似合いますよ」
「ダメダメ、似合わないってば。それよりもこっち着てごらんよ。香奈美ちゃん似合うと思うよ」
二人で笑い合う他愛ない時間。
お互いに服を選びあう楽しい時間。
私がこれまでしてきたことは許されないことかもしれないけど、こんな時間がいつまでも続いて欲しい・・・

                        ******

私はどうしてこんなところにいるのだろう・・・
毎日のように行なわれる尋問。
暗黒帝国のことを探るためといいながら、いまだ私が洗脳されているのではないかと疑っている。
繰り返される同じような質問。
どこかに矛盾点があれば、すぐにそこをついてくる。
私だって人間よ。
洗脳されていたときの記憶なんてあやふやに決まっているじゃない。
きちんとしたことなんて覚えているはずがないじゃない!
私はそう叫びだしたいのをこらえて、できる限りの協力を行なう。
それが私の罪滅ぼしなのよ。

暗黒帝国の女幹部マリーだったとき、私は漆黒の衣装に裏地の赤いマント、それにひざ上までのブーツを履いてとげのついたサークレットを嵌めていた。
つまり、私の素顔はさらされていたのだ。
残虐な女幹部マリーの姿は日本中の人間が知っている。
そう・・・
私の顔を見れば、マリーであることは一目瞭然なのだ。
そのことを思い知ったのは先日のこと・・・

メディカルセンターでの検査にやってきた私を、医者も看護師たちもよけていく。
私の後ろには監視役の男たちがつき従い、何か異変はないかと常に私を見張っている。
ここへ来て以来の見慣れた光景。
慣れたとはいえ、心が乾いていくのはどうしようもない。

「きゃっ」
突然、私の足に少女がぶつかってくる。
子供たち同士で遊んでいたのか、私に気が付かなかったらしい。
このメディカルセンターには小児科もあるから、きっとそこに来ていた娘だろう。
とてんという擬音が似合いそうな感じでしりもちをついた少女に、私はそっと手を差し出す。
「ごめんなさい」
そう言って手を伸ばし、私を見上げた少女の顔が、みるみる恐怖に青ざめた。
「いやぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴を上げて必死にあとずさる少女。
すぐに看護師の一人が彼女を抱きかかえて走り去る。
私が差し伸べた手は、むなしく宙に浮いたままだった。

私は逃げ出していた。
もうこんな場所にはいたくない。
ここは私のいる場所じゃない。
ここは別の世界なんだわ。

泣きながら走ってきた私は、細い路地のようなところに行き着いていた。
ここは?
突然のことだったせいか、監視役の男たちも私を見失ってしまったらしい。
通路のつくりからして居住セクションではなく基地セクションのよう。
迷い込んでしまったんだわ。

カツコツと響く足音。
誰かが来る。
しかも足音は二つ。
こんなところで見つかったら、また疑われてしまう。
私はとっさに置いてあったコンテナの陰に身を隠す。
身を隠せるところがあってラッキーだったわ。

「麻梨の姿を見失ったって?」
「ああ、突然逃げ出したらしい・・・警備の奴らが今探している所だそうだ」
二人の会話が聞こえてくる。
聞きおぼえのある声。
晟と惣太だわ。
「言わないことじゃない。最初からここへ侵入するための手だったんだ」
「うむ・・・その可能性は高くなったな」
ああ・・・
晟も惣太も結局は私を信じてはくれなかったんだ・・・
私がまだマリーだと思っているんだ・・・
そんなことって・・・

「香奈美にも言い含めておいたんだけどな。麻梨に怪しい動きがないか見張れって。上手いこと麻梨と仲良く見せかけることに成功したようだから、そのうちボロを出すだろうとは思っていたが・・・」
「香奈美の報告では怪しいところは感じられなかったっていうことだったが」
「あまいぜ惣太。あいつはもう俺たちの知っている麻梨じゃない。暗黒帝国の女幹部マリーだ。あくどい手を使ってくることには長けている」
「うむ・・・確かにな」
私の足元に涙が落ちる。
香奈美ちゃんも・・・
香奈美ちゃんまでもが演技だったなんて・・・
私は死んだ。
セーバーホワイトだった麻梨はたった今死んだ。

                       ******

セーバーベースに警報が鳴り響く。
暗黒帝国の攻撃がどこかにあったのだろう。
私は思わず笑みを浮かべた。
今がチャンスだわ。
もう、こんなところにはいられない。
帰ろう・・・
あの懐かしい世界へ・・・

どうして忘れていたんだろう・・・
人間の愚かしさに。
人間のくだらなさに。
平気で他者を踏みつけにするそのおぞましさに・・・

そうよ・・・
私はもうこんなところにいるのはいや。
もう一度戻りたい。
もう一度私のいるべき場所に戻りたい
もう一度暗黒帝国の女幹部マリーに戻りたい!

私はすぐに部屋を出て脱出に取り掛かる。
しばらくおとなしくしていたから、監視の連中も油断していたのか、あっけないほどたやすく始末することができた。
ちょっと逃げ出すようなそぶりを見せて物陰に誘い込んだら、他愛なく追いかけてきたわ。
腹部と首筋に一撃であっけなく伸びてしまう。
こんな連中じゃ監視の役に立たないでしょうにね。
私は過去の記憶を頼りにセーバーベースの出口を探す。
以前とは違う配置にしているようだけど、基地なんてのはどこか似通ってくるもの。
いくつか目星をつけておいた中から、簡単に外部につながっているゲートを見つけることができた。
さようならセーバーベース。
正義という名の牢獄から私は脱出した。

                        ******

「おう、それでこそ暗黒帝国の黒き花マリー。美しいですぞ」
「うふふ・・・ありがとうゴズム。あなたの頭脳もしわが深くてとても素敵よ」
漆黒のボンデージとも言うべき衣装を身に付け、マントを羽織った私を暗黒帝国の参謀ゴズムが出迎えてくれる。
こうして二人で皇帝陛下にまたお仕えできるのはうれしいものね。
私は暗黒帝国の女幹部マリー。
セーバーチーム、次に会うときが楽しみだわ。

END

以上です。
よければ拍手コメントなどいただければと思います。
あと、アンケートにご協力お願いいたします。m(__)m





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  1. 2008/08/16(土) 20:42:13|
  2. 洗脳系SS
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白の帰還(2)

短編SS「白の帰還」の二回目です。
楽しんでいただければ幸いです。
もしよかったら、コメント・拍手などいただけるとすごくうれしいです。

それではどうぞ。


「触角よ! 触角を狙ってみて!」
暗黒帝国のトンボ型の怪人に翻弄されるセーバーチーム。
空中からの攻撃に苦戦を強いられているのだ。
私は司令にお願いして、アドバイザーということで現場に来ていた。
そして小型の装甲車の中でモニターを見ながら、思ったことをアドバイスしていたのだ。
『よし、二人で奴の触角を叩き落すぞ!』
『おう!』
レッドとブラックとが同時にジャンプし、空中で一回転して見事に手刀を叩き込む。
トンボ型怪人は両方の触角を折られ、めまいでもしたかのように地面に叩きつけられた。
『今だ! クラッシュファイヤー!』
レッドの叫びとともに、見事な連携でトンボ型怪人を取り囲むセーバーチーム。
おのおののエネルギーが光となってほとばしり、トンボ型怪人を覆っていく。
『グギャァァァァァ』
断末魔の悲鳴を上げながら、トンボ型怪人は爆発した。

『やったな』
『ああ、触角が弱点だったんだ』
『麻梨さんのおかげですね』
『麻梨、聞いている? サンキューね』
セーバーチームのみんなの声が車内に届く。
よかった。
私も役に立てたんだわ。
セーバーホワイトはもう香奈美ちゃんに任せるしかないけど、少しでも役に立てるならこんなにうれしいことはない。
マリーの記憶を思い出すのはつらいけど、少しでも罪滅ぼしになればいいな。

                      ******

「ね、麻梨さん、ショッピングモールに美味しいケーキを出す喫茶店ができたんですよ。一緒に食べに行きませんか?」
眼を輝かせている香奈美ちゃん。
私も甘い物は大好きだけど、香奈美ちゃんもケーキには目がないのだ。
「ムッ、それは聞き捨てならないわね。どこの喫茶店かな?」
文庫本を読んでいた茜までもが眼を輝かせる。
ここはセーバーチームのリラックスルーム。
私もようやくここに入れてもらえるようになったのだ。
今ではみんなともほとんど以前と変わらなく接している。
まあ、多少のぎこちなさはまだ残ってはいるけれど・・・

「むふふ・・・Dブロックのレマンですよー。あそこのケーキは絶品です」
「あ、あそこかぁ。うんうん、あそこのケーキは美味しいわよね」
「あ、茜さんいつの間に? 内緒にしていて驚かせようと思ったのに」
ちょっと残念そうな香奈美ちゃん。
「レマンなら俺も行ったことあるぞ。コーヒーが美味かった」
光一も横から話に乗ってくる。
そうなるとコーヒー党の晟が黙っているはずはない。
「ふっ・・・光一の美味いは当てにならないからな。ここは俺が味見してくるか」
案の定行く気満々でジャケットを羽織っている。
なんだかんだ言っても、光一が美味いという店には必ず顔を出しているのだ。
結構当てにしているんじゃない。
「それじゃみんなで行きましょうか? いいでしょ? 麻梨さん」
「ええ、私はかまわないけど・・・みんなはいいの?」
「いいに決まっているだろ。なぁ?」
光一の言葉にメンバーみんながうなづいてくれた。

                      ******

「おかしい・・・みんな気をつけて」
装甲車の車内で私はマイクに声をかける。
今回の暗黒帝国の怪人はケラをベースにした怪人らしい。
自由に地中を掘り進むことができるケラ型怪人に、セーバーチームはまたしても翻弄されている。
しかも、今回は顔を出しては潜るというまるでもぐら叩きのような状況だ。
攻撃をしないで逃げ回っているのは何か理由があるに違いないわ。
でも、いったいどんな理由があるというの?

「みんな、敵の動きに翻弄されてはダメよ!」
気がつくとケラ型怪人の動きを追うのに夢中なのか、みんなの連携が取れなくなってしまっている。
それどころか、どんどん遠ざかっていってしまっているのだ。
このままでは無線もうまく届かなく・・・
私はハッとした。
まさかここからみんなを引き離すため?

私は急いで装甲車を発進させようとした。
しかし、その前に車体に衝撃が走る。
後部ドアが引きちぎられ、振り返った私の目の前に見慣れた暗黒帝国の戦闘員たちの黒尽くめの姿があった。
「ヒッヒッヒ・・・迎えに来ましたぞ。マリー」
巨大なむき出しの頭脳をさらした白衣の老人が笑みを浮かべている。
「参謀ゴズム・・・」
暗黒帝国の知恵袋として皇帝に仕え、私も何度も作戦を授けてもらった相手。
今回の作戦も彼によるものだったんだわ。
「皇帝陛下がお待ちかねですぞ。マリー」
いやらしい薄ら笑いを浮かべているゴズムに私はぞっとする。
「いや、いやよ。私はもうマリーなんかじゃない! 皇帝に会うのはいやぁっ!」
私は急いで車外に飛び出そうとした。
でもダメだった。
ゴズムの噴きかけてきた霧によって、私はまたしても意識を失ってしまったのだった。

                      ******

「う・・・あ」
ゆっくりと意識が戻ってくる。
こ、ここは?
私は目を開けると、すぐに周囲を確認した。
「ああっ」
思わず声がでてしまう。
驚いたことに、私は暗黒帝国の皇帝である巨大な目玉のレリーフの前に寝かされていたのだ。
そう・・・
ここは暗黒城の大広間。
皇帝に対する謁見の間。
人類に対する侵略作戦を指揮する間なのだ。

『目が覚めたようだな。我がしもべマリーよ』
重々しい皇帝の声が響き渡る。
「ち、違う、私はマリーなんかじゃ・・・」
私は思わず身を硬くして首を振る。
『マリーなんかじゃないと言うか? 果たして本当にそうか? お前はここに来て我が前にいることでホッとしているのではないか?』
「そ、そんなことは・・・」
皇帝の巨大な目が、まるで私の心の奥底までを見通すように私を見つめている。
『ないというのか? 自分の心の奥を探ってみよ。お前はすでにマリーとなっているのだ。我に再び会いまみえた喜びを感じているのではないか?』
「ち、違う・・・そんなことは・・・」
私は必死でそんなことはないと言いたかった。

でも・・・
でも・・・
私のどこかが喜んでいた。
私のどこかがここにいることにほっとしていた。
光の差し込まない暗黒の空間。
すべてを支配する偉大なる皇帝陛下。
その皇帝陛下の前にいることに、私は確かに喜んでいるところがあったのだ。

『クックック・・・感じただろう? すでにお前の心は暗黒に染まっているのだ。お前はもうマリーなのだ』
違う。
そんなことはない。
私はマリーなんかじゃない。
でも・・・
でも・・・
とても心が休まるの。
ここにいるとすごく居心地がいいの。
あんな人間どもと一緒にいるよりも数倍・・・いいえ、数十倍も居心地がいい。

『さあ、受け入れよ。もう一度我が力を受け入れるのだ。そして、今度こそ身も心も暗黒に染まった女となるがいい』
ああ・・・
いけない・・・
受け入れてはいけない・・・
私は・・・
私は・・・
でも・・・
でも・・・
なんて心地よいお言葉なのだろう・・・
皇帝陛下のお言葉は、まるで心に染み渡るようだわ・・・

『立つのだマリー。そして我が力を受け入れよ』
私にはもう逆らう力はなかった。
皇帝陛下のお言葉に従うのみ。
私はゆっくりと立ち上がると、皇帝陛下にしっかりと向き合った。

『クックック・・・それでいい。さあ、再び我がしもべとなるがいい』
皇帝陛下の巨大な目から、暗黒の気が流れ出る。
それは私の足元を伝い、じょじょに私の躰にまとわりつく。
そしてゆっくりと私の躰に染み込んでいく。
ああ・・・
気持ちいい・・・
暗黒の気を受け入れることがこんなに気持ちよかったなんて。
再び皇帝陛下のしもべになることがこんなに喜ばしいことだったなんて。
そう・・・
私はもう麻梨なんかじゃない。
暗黒帝国の女幹部マリーなのよ。

                      ******

「おう、それでこそ暗黒帝国の黒き花マリー。美しいですぞ」
「うふふ・・・ありがとうゴズム。あなたの頭脳もしわが深くてとても素敵よ」
漆黒のボンデージとも言うべき衣装を身に付け、マントを羽織った私をゴズムが出迎えてくれる。
こうして二人で皇帝陛下にまたお仕えできるのはうれしいものね。
「お前さんのおかげでまたいろいろと情報が手に入ったわい。どうじゃろうかの、もう一人ほど皇帝陛下の偉大さを教えてやってみては」
「うふふ・・・それはいい考えだわ。私も可愛い部下が一人ほしかったのよね。香奈美なんてどうかしら」
私は手袋に包まれた指先を舌で舐める。
あの娘が皇帝陛下の偉大なお力に触れ、暗黒帝国の一員となってくれたらどんなに素敵だろう。
きっと私の可愛い妹になってくれるに違いない。
「ヒッヒッヒ・・・そうと決まれば早速捕獲作戦に取り掛からねばの。まあ、お前さんが指揮を取れば容易かろうて・・・」
「ええ、私に任せてちょうだい。あの娘をすぐに捕らえてきてみせるわ。うふふふふ・・・」
私は皇帝陛下にひざまずく香奈美の可愛い姿を思い浮かべ、それを実現させるべく取り掛かるのだった。

END
  1. 2008/08/15(金) 20:22:37|
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白の帰還(1)

今日明日の二日間で短編一本投下します。
いわゆるシチュのみ短編といっていいものですが、楽しんでいただければと思います。


「う・・・ん・・・ここ・・・は?」
天井の蛍光灯が白々と輝く白い部屋で私は目を覚ます。
鉄パイプで作られたベッド。
白いカバーに包まれた毛布が上にかけられている。
「私は・・・いったい?」
先ほどからずきずきと痛む頭。
何があったのかよく思い出せない。
ここはどこ?
私はどうしてこんなところに?

私はとりあえず周囲の確認をする。
どうやらここはどこかの病院のよう。
白い壁に囲まれた静かな部屋。
ベッドの脇には点滴をぶら下げるスタンドや、心電図みたいなモニター装置がおいてある。
でも窓は一つもない。
外は一切見えない。
普通の病室とは思えない。
私はとにかく起き上がって・・・

ガチャ!
金属質の音が静かな部屋に響いた。
躰を起こそうとした私は、右手をぐいと引っ張られ、思わずベッドに引き戻される。
「えっ?」
私は右手に食い込んだものを見た。
「手錠?」
そこには私の右手首とパイプベッドをつなぎとめる金属製の手錠が鈍く光っていたのだ。
「ど、どうして・・・」
私はここに捕らわれたことに恐怖した。

                     ******

『いやよあたしは!』
『そう言うなって・・・もう大丈夫だから』
『だがなぁ光一(こういち)、洗脳されていたとは言え、あいつは暗黒帝国の女幹部マリーだったんだぞ』
『だからそれは奴らに洗脳されていたからだって』
『でも、本当に洗脳が解けたのかな・・・何かの罠なんじゃ・・・』
『そんなこと・・・ないって』
『おいおい、いつまで騒いでいるんだ? もう麻梨(まり)の部屋の前だぞ』
防音のよくないドアの向こうから声がする。
懐かしい声。
それと同時に胸が苦しくなる声。

「麻梨、起きていたのか?」
ドアを開けて入ってくる青年男女五人。
パッと見ただけなら、どこかのバンドグループとでも見えるかもしれない。
でも、そうじゃない。
彼らこそがこの日本を、そして地球を邪悪な暗黒帝国の魔の手から守っているセーバーチーム。
その五人のメンバーなのだ。
「元気そう・・・ね・・・」
ふと目をそらす茜(あかね)。
セーバーイエローとして、かつては私とコンビを組んでいた。
でも、今の私は・・・
「は、初めまして・・・でしょうか」
おずおずと頭を下げる香奈美(かなみ)。
そうね・・・
こうして会うのは初めてだわ。
戦場では何度も会っているのにね。
私の替わりのセーバーホワイトとして・・・
「麻梨・・・本当に大丈夫なんだろうな。俺はまだお前を信じたわけじゃねえぞ」
セーバーブラックの晟(あきら)。
いつもと同じく人に対して距離をとる。
「晟! 麻梨はもう大丈夫だって。メディカルセンターの検査にも合格したんだし」
セーバーレッドの光一。
そう言いながらもちょっと笑顔がぎこちないわよ。
「けがはもう大丈夫なのか?」
体格のよい熊のような惣太(そうた)。
セーバーグリーンとして相変わらず皆を後ろでまとめているのね。
「みんな・・・私、今までみんなの敵になって・・・ごめんなさい」
かつての仲間たちを前にして、私は頭を下げるしかできなかった。

そう・・・
私は戦いの最中に暗黒帝国に捕らわれた。
そして、皇帝の闇の力を注ぎ込まれ、女幹部マリーとして生まれ変わってしまったのだ。
それからの私は暗黒帝国の尖兵として怪人どもを指揮し、地上に被害を与えてきた。
先日の戦いで頭に衝撃を受け、洗脳が解かれるその時点まで・・・

「まあ、元気そうで何よりだ。躰の調子が戻ったらまた一緒に戦おうぜ」
光一はそう言ってくれたが、その瞬間に茜と香奈美の表情が曇ったことを私は見逃さない。
すでにセーバーチームに私の居場所はないんだわ・・・
「麻梨にはいろいろと聞きたいことがあるって司令も言ってたぜ」
「しばらくは監視体制に置かれるけど、悪く思わないでね、麻梨」
「ええ、それは当然のことよ。なんてったって、私は暗黒帝国の女幹部マリーなんですもの」
ずっと視線をそらしたままの茜に私はおどけて見せる。
「なに言ってる! 麻梨はマリーなんかじゃない! セーバーホワイトの麻梨なんだ!」
「そ、そうですね。麻梨さん、復帰したらいつでもセーバーホワイトはお返ししますから言ってくださいね」
複雑そうな表情を浮かべる香奈美。
「香奈美、それを決めるのは司令部だ。俺たちがどうこうって話じゃない」
晟が香奈美の肩に手を置いた。
「そ、そうよ。今は香奈美さんがセーバーホワイトなんだから、私のことは気にしないで暗黒帝国の野望を打ち砕いてね」
私・・・いやな女だ。
心にもないことを言っている。
セーバーホワイトを返してって叫びたいぐらいなのに。

「そろそろ引き上げよう。待機任務の途中だし、麻梨だって病み上がりだから」
「そうだな、そうするか」
惣太の言葉になんとなくホッとしたような表情を浮かべるみんな。
「それじゃな、麻梨。またくるよ」
「早く元気になってくださいね、麻梨さん」
「またね、麻梨」
ぞろぞろと病室を出て行ってしまう五人。
張り詰めていた空気が解き放たれる。
五人が去ったことで、私自身も安堵していることに気がついていた。

                      ******

手錠こそはずされたものの、私の周りにはいつも幾人かの監視の目があった。
病室を出て一室をあてがわれたものの、いわば体のよい軟禁状態。
外出は許可制で、散歩もショッピングも思うに任せない。
ベースの一角の一番無害な地区に閉じ込められているのだ。
仕方がない・・・
私は先日まで暗黒帝国の女幹部だったのだ。
私がセーバーチームの司令官でも、こういった処置を講じるだろう。
仕方がない・・・
でも・・・
でも・・・
心が乾いていく。

意外にも、時々顔を出してくれたのはセーバーホワイトの香奈美ちゃんだった。
高校を卒業したばかりといった感じの香奈美ちゃんは、多少のぎこちなさはあったものの、私の部屋に遊びに来てくれるようになったのだ。
姉妹のいない私にとって、まるで妹のような香奈美ちゃんとの会話は、私の心を癒してくれる唯一の時間だった。
香奈美ちゃんと一緒にいる限りにおいては、私を監視する連中も姿を現さない。
このことがどれほど私にとってありがたいことだったか・・・

                      ******

「麻梨さん、今日はショッピングに行きませんか?」
清楚な白いワンピースに身を包んだ香奈美ちゃんが姿を見せてくれる。
私はそれだけで心が弾むのを感じていた。

少しラフにジーンズとシャツを着込んで、私は香奈美ちゃんと出かけていく。
もっとも、出かけるといってもセーバーベース内のショッピングモールだ。
セーバーベースはそれ自体が独立した一都市と言ってもいい。
チームにかかわるさまざまな人々とその家族が暮らしている拠点なのだ。
無論、私がマリーにされてしまったあとはかつての場所からは移転したので、現在のベースの正確な位置は私にはわからない。
ベース内の一部だけのみ歩くことを許されているのだ。
仕方がない・・・
もう二度とマリーに戻ることなんてないけれど、それを信じてもらうには時間がかかる。
だから・・・
仕方がないのだ。

「これなんかどうですか? 麻梨さんはスタイルいいからきっと似合いますよ」
「ダメダメ、似合わないってば。それよりもこっち着てごらんよ。香奈美ちゃん似合うと思うよ」
二人で笑い合う他愛ない時間。
お互いに服を選びあう楽しい時間。
私がこれまでしてきたことは許されないことかもしれないけど、こんな時間がいつまでも続いて欲しい・・・
  1. 2008/08/14(木) 20:22:20|
  2. 洗脳系SS
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ある主婦のパート(2)

「ある主婦のパート」二回目です。
この作品はこれで終了です。
本当は三回ぐらいに分けようかとも思ったんですが、切りのいいところがなくて結局二回で投下しました。
読んでくださる方にはこの方がよかったかな?

それではどうぞ。


う・・・
頭ががんがんする・・・
私・・・どうしたんだったっけ?
私はゆっくりと上半身を起こす。
どうも更衣室でそのまま倒れてしまったらしい。
ソファに寝かされていたようだわ。
「目が覚めたようね」
「あ、はい」
指導担当の先輩が私に水を差し出してくれる。
私は一息に水を飲み干すと、ようやく頭もすっきりする。
「私・・・どうしたんでしょう?」
どうして倒れていたのかいまいち思い出せないわ。
「気にしなくていいわ。ブラッキー薬の一種の副作用だから。もう大丈夫なら付いて来なさい」
「あ、はい」
私は躰を起こすと先輩のあとに続く。

先輩についていく途中、ここでのいろいろなしきたりを教わった。
組織員同士の挨拶は右手を斜め前に上げてヒーッと声を出す。
朝、鎌桐さんに見せたあれは挨拶だったんだわ。
それとワールドブラックの活動は秘密。
絶対に他人には漏らしてはいけない。
たとえそれがどんなに親しい間柄の人でもだ。
雄太さん、ごめんね。
あなたにも絶対言えない秘密なんですって。
先輩のナンバーはγ(がんま)63号って言うらしい。
やっぱり最初はパート採用だったそうなんだけど、今では身の回りを始末して正構成員の実働部隊員に昇格したそう。
だからあんなにきびきびしているのね。
今では工場長のカマキリ男様と言う方の下で監視員のチーフをやっていて、私の直属上司と言う形になるらしい。
まだ若いのにすごいよね。
先輩といっても私と同年代ぐらいだわ。
私もがんばらなくちゃ。

「「ヒーッ!」」
「「ヒーッ!」」
地下工場ブロックの入り口を警備する男性構成員と挨拶を交わす私たち。
黒の全身タイツは強化服だそうで、彼らは戦闘員と呼ばれているとのこと。
何でも私もパートとはいえ、女戦闘員δ167号と言うナンバーをもらったので、いざと言うときには戦闘もしなくてはならないらしい。
そのために出張があるんだとか。
うう・・・
私に勤まるかしら。

工場ブロックにはさまざまな機械があり、いろいろな部品が吐き出されている。
それをとなりの区画で組み立て、武器として完成させるのだ。
ワールドブラックは武器を世界中にばら撒いて、社会を混乱に落としいれ、裏から世界を操る組織と言う。
首領様の下、一丸となって目標達成に努力中なのだ。
私はその組立部門で働く奴隷たちの監視役。
単純だけど重要で気が抜けないと言うわ。
それにしても現代の日本で奴隷がいるとは思わなかったわ。
奴隷狩りで集めてくるって言ってたけど、どんな人たちなのかしら。

そこにいたのは若い高校生ぐらいから六十歳を過ぎたぐらいまでの老若取り混ぜた男性だった。
ただ、一ついえることは、いずれも覇気がなく無言で黙々と作業をしていると言うこと。
何かこうよどんだ空気みたいのすら感じるような・・・
こんな男たちだから奴隷になるんだわ。
自業自得よ。

「今日からここがあなたの担当よ」
「わかりましたγ63号。でも監視って何をすれば・・・」
そう言った私にムチが手渡される。
あの長いムチとはちょっと違う乗馬用の短い奴だ。
「こいつらはちょっと目を離すとすぐにサボるわ。どうしようもないくずどもなの。サボっているところを見つけたらこれで容赦なくぶちなさい。死んだって変わりはすぐ補充できるからかまわないわ」
え〜っ?
死んでもかまわないなんてすごいわ。
奴隷の補充態勢が整っているのね。
でも、ムチで叩くってうまくできるかしら・・・
「戸惑っているようね。あそこの男を御覧なさい」
「はい」
指し示された位置には一人の奴隷が青い顔をしてハアハアと苦しそうにしながら銃のようなものを組み立てていた。
「手元を御覧なさい。部品がいくつも滞留しているわ。作業がぜんぜんはかどっていないのよ。一発背中を叩いてきて」
「あ、はい」
私は言われたとおりにその男のところへいく。
「す、すみません・・・今朝から具合が悪いんです」
私が来たことで男はおびえるようにして謝ってくる。
具合が悪いって言っても、作業を遅らせるわけには行かないわよね。
それに私は監視役なんだから、この奴隷を働かせなくちゃ。
「文句を言わないで働きなさい!」
私は手にした乗馬ムチで男の背中を叩きつける。
「うわあっ」
男は痛みに耐えかねて一度作業台に突っ伏するが、必死に起き上がって作業を始める。
うんうん、それでいいのよ。
それにしても気持ちいいものね。
奴隷をムチ打つって快感だわぁ。
うふふ・・・
癖になりそう。

「これでいいですか? γ63号」
「うふふ・・・ブラッキー薬のせいで状況を判断することができなくなってきたようね。言うことを素直に受け入れているわ」
「えっ? どういうことですか?」
今のはいったいどういうことかしら。
何かおかしなところがあったかしら・・・
「気にしなくていいわ。後は時間までこいつらをサボらせないこと。いいわね」
「はい、γ63号」
私は作業場のほかの監視役たちに今日から加わったことを告げ、いろいろと教わりながら奴隷たちをムチ打った。
先ほど私がムチ打った男は途中で心臓発作を起こしたようだったけど、すぐに補充が来たのでかえって作業ははかどった。
こうして私の初日は終わり、後は正構成員の人たちに引き継いで衣装を着替え、工場をあとにした。

「ただいま」
「お帰りなさい」
私は玄関に雄太さんを出迎える。
雄太さんが帰ってくるのはだいたい夜の七時半から八時ごろ。
私のほうが当然早い。
「疲れたー」
着替えを終えてテーブルに着く雄太さん。
ふふ・・・お疲れ様。
「仕事行ってきたのかい?」
「ええ、行ってきたわ」
私は夕食のおかずをテーブルに並べていく。
ごめんね。
今日はちょっとだけ手抜き。
スーパーで出来合いのとんかつを買ってきてキャベツを刻んで載せただけ。
なんだかやっぱり疲れちゃったのか、躰の調子がいまいちなのよ。
「どうだったい?」
「ええ、あなたの言ってた通り作業を見守るだけみたい。簡単だし結構面白いわ」
「そうか、そりゃよかったな。お、とんかつか」
私は冷蔵庫から缶ビールを出してあげる。
「サンキュ。ぷはー、うまい」
雄太さんたら本当においしそうに飲むわね。
でも、なんだかムカムカする。
食欲もないし・・・
やっぱり疲れたのかな?
今日は早く休もう。
私は早々に食事を切り上げると、雄太さんには悪いけど先に横にさせてもらった。

                     ******

「ヒーッ!」
私はいつものように入り口を抜け、更衣室で強化レオタードに着替える。
今日でもう二週間。
着慣れたレオタードにさっと着替え、ブーツと手袋などを身につけてアイシャドウなどのメイクをする。
終わったところで用意されているブラッキー薬を一本飲んで準備完了。
最初はいやだったけど、飲みなれるとブラッキー薬のほろ苦さがたまらない。
躰の方もずいぶん強化されてきたようで、今ではリンゴを握りつぶすぐらいは簡単なこと。
なんだか最近はメイクをしなくてもうっすらシャドウがかかっているかのような感じだし、唇も黒っぽくなった気がするわ。
そういえばδ148号はメイクしなくてもよくなったようなこと言ってたわね。
そのうち私もそうなるのかしら。
うふふふ・・・
そうなったら家でもこの姿でいようかな。
雄太さん驚くかしら。
ううん・・・
ただ驚くだけじゃ許さないわ。
今度からδ167号って呼んで欲しいな。
昨日もそうだったけど、美乃里って呼ばれてもぴんと来ないのよね。
ナンバーで呼ばれるのに慣れちゃったせいかしら。
でも、ナンバーのほうがシックリくるのよね。
さてと、奴隷どもをしっかり働かせないとね。
うふふふふ・・・

「聞け! 戦闘員ども」
「「ヒーッ!」」
いっせいに右手を上げて敬礼する私たち。
午後になって工場長のカマキリ男様が参られたのだ。
我がワールドブラックの誇る改造人間であるカマキリ男様は、鎌桐と言う名前で工作活動にも従事されている。
私もカマキリ男様によってこの工場に配属されたんだったわ。
素質のある人間にしか見えないという特殊インクで印刷されたチラシ。
そのチラシで私は選ばれたのよ。
ああ、なんていう幸運だったのかしら。
私はこれからもずっとワールドブラックに忠誠を捧げるわ。
「奴隷の補充が行われた。担当の戦闘員は直ちに奴隷を作業に当たらせろ」
「「ヒーッ!」」
逆三角形の頭部を持つカマキリ男様が、右手の鎌を振るって指示を下す。
私たちはすぐに牢獄に入れられた奴隷を受け取りに行かねばならない。
同僚たちとともに私も向かおうとしたとき、γ63号が私を呼んでいることに気がついた。

「お呼びですか、γ63号」
ふと見ると彼女のとなりにはぼうっとした表情の高校生ぐらいの女の子がいる。
ハイネックのレオタードもまだまだ着こなせていない様子で、新入りであるのは明らかだった。
「δ171号よ。まだブラッキー薬の副作用でぼうっとしているけど、今日から監視役の一人に回すわ。みんなで面倒を見てあげてちょうだい」
「ヒーッ! かしこまりました。さあ、δ171号いらっしゃい。奴隷たちをこき使う楽しさを教えてあげるわ」
私はγ63号から彼女を預かると、ついてくるように促した。
なんとなくおどおどした様子で後をついてくるδ171号。
うふふふ・・・
可愛いわ。
私も二週間前はこうだったのね。

δ171号をつれて作業場に向かうと、すでに補充の奴隷たちが配置につかされていた。
うふふふ・・・
結構生きのよさそうな感じね。
あの男は大学生ぐらいかしら。
逃げ出そうとして暴れてくれないかしらね。
そうしたらみんなでたっぷりといたぶってやるのにね。
奴隷たちは私たち監視役が女だということで舐めてかかってくるくせがある。
だからたいてい一度は反抗してくれるのだけど、私たちワールドブラックの女戦闘員がそんなにやわなわけないじゃない。
私だってもう単独で奴隷二人ぐらいならあしらえるわ。
δ133号あたりなら華麗なムチ捌きで奴隷が三人かかったって敵わないでしょう。
私はδ171号を紹介するべく、みんなが集まっているところに進み出た。

「えっ?」
私は思わず脚が止まる。
補充で入ってきた奴隷の一人の顔を見た瞬間、動けなくなったのだ。
「あなた・・・」
「ん? ま、まさか美乃里・・・」
作業台につかされていたのは雄太さんだった。
どうしてこんなところに雄太さんが・・・
「み、美乃里。お、お前どうしてこんなところに・・・」
「あなたこそどうして? ここは私の職場よ。私はワールドブラックの女戦闘員としてここで監視役を務めているの」
仲間たちが何事かと私の方を見る。
どうして雄太さんがこんなところに・・・
「か、監視役? お前、あの化け物の仲間なのか?」
「化け物って・・・あなた失礼よ。カマキリ男様はこの工場の工場長なんですから」
まったく・・・人を化け物呼ばわりなんてどうかしているわ。
そんなことだからここへ連れてこられるのよ。
「た、助けてくれ美乃里。俺は仕事で外出中に襲われて連れてこられただけなんだ。なんかの間違いだよ」
雄太さんはすがるように私の両肩に手を置いた。
私はちょっとムッとした。
間違いですって?
ワールドブラックに間違いなんてあるわけないわ。
それになれなれしく私の肩をつかむなんてどういうつもり?
ここに来たからにはお前は奴隷なのよ。
武器を作る奴隷なのよ。
わかっているの?
監視役に手を触れるなんて赦さないわ。

「手を離しなさい! ゲスが!」
私は彼の両手を払いのける。
「うわ、あ、み、美乃里」
しりもちをつき、驚いたように私の顔を見上げる男。
「美乃里美乃里ってうるさいわね。私はワールドブラックの女戦闘員δ167号よ。奴隷のくせに私を変な名前で呼ばないで!」
私は乗馬ムチを手に取ると、二度三度と叩きつける。
ああ・・・
そうよ・・・
何でこんな男と今まで一緒に暮らしてきたのかしら。
ここにいるってことは戦闘員にもなれぬくずじゃない。
あのチラシだって読めないはずよね。
こんな男だったなんて最低よ。
男は頭を抱えてうずくまる。
何をやっているのこの男は?
ぐずぐずとうずくまっていて。
私は男のわき腹に蹴りを入れると、苦しんでいる男に向かって言い放った。
「さっさと作業につきなさい。ぐずぐずしていると食事も睡眠も与えないからそのつもりでね」
「み・・・美乃里・・・」
私はもう一度蹴りを入れてやった。

「うふふふ・・・これでもうあなたは立派なワールドブラックの正構成員の仲間入りね」
私の背後から声がかかる。
振り向くとγ63号が腕組みをしながら私の様子を見ていたのだ。
「ヒーッ! 申し訳ありません。すぐにこの男も作業に当たらせます」
「うふふ・・・いいの? その男、あなたの夫なんでしょ?」
「違います。こんな男はもう夫などではありません。ただのくず奴隷です」
私は憎しみを込めて男を見る。
今までこんな男に愛情を持っていたなんてぞっとする。
「それでいいわ。これで身の回りを始末したあなたはどこへも戻る必要がなくなった。今日からはここの一室を使いなさい」
「ヒーッ! ありがとうございます」
そうだったんだ。
身の回りを始末することで正構成員になれるんだわ。
うふふふ・・・
こんなことならもっと早くこいつをここへ連れてくるんだったわね。
でもいいわ。
今日からはもうパート構成員じゃない。
ワールドブラックの正構成員よ。
いいところに就職してよかったわぁ・・・
これからが楽しみよ。
私は喜びに打ち震えて、まだ床に転がっているくずのわき腹を蹴飛ばした。

END

以上です。
よろしければ拍手や感想をくださいませ。
拍手や感想はとても励みになりますです。
よろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2008/05/22(木) 20:37:14|
  2. 洗脳系SS
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ある主婦のパート(1)

え〜と、性懲りもなくまた妙なものを書いてしまいました。
内容もまあ、いつものごとくのものでございます。

それでもいいよってお方はどうかこの下をお読みくださいませ。
今日明日で一本の短編を投下いたします。
楽しんでいただければ幸いです。


「ある主婦のパート」

ふう・・・
私は電卓を叩きながらため息をつく。
「今月もぎりぎりだわ・・・」
目の前の家計簿と銀行通帳の預金残高、レシートの山を前にして私はついもう一度ため息をつく。
世知辛い世の中だわ。
何でもかんでも値上げ値上げ。
贅沢品なんて物じゃなく生活必需品がこうして値上げになっているのに、夫の手取りは変わらない。
ううん・・・
雄太(ゆうた)さんは充分がんばってくれているわ。
でも、会社の業績が上がらなければ、いくらがんばってもお給料は上がらないものねぇ・・・
ハア・・・
雄太さんは嫌がるけど、やっぱり私もパートに出ようかしら・・・
専業主婦でただこうしてため息をついているのも芸がないものね。
子供ができたら働けなくなるんだし、今のうちに少しでも貯金できればいいしね。

私は早速何か手ごろなパートはないかとまずは新聞広告やチラシを覗いてみる。
うーん・・・
レジ係や新聞配達・・・ポスティング・・・
どれもパッとしないわね。
あら?
これは何かしら?
“求む人材”ですって?
なになに、このチラシを読んだあなたは選ばれた人材です?
すばらしい世界があなたを待っています。
当組織で能力を発揮し、あなたの世界を変えてみませんか?
高給優遇、詳しくは面接で・・・か・・・
なにこれ?
なんか変なの。
大体仕事の内容も会社名も書いてないじゃない。
でも・・・
どうしよう・・・
なんか気になるわぁ・・・

「ねえ、あなた」
夕食後にくつろいでいる夫に私は話しかける。
「うん、なんだい?」
テレビのほうを見たまま振り向きもしない雄太さん。
もう・・・
ナイターのあるときはいつもこうなんだから。
そんなに野球が好きなのかしらね?
「この間も話したけど、やっぱり私パートにでてみようと思うの。少しでも余裕があれば先々安心だし・・・」
「その話か」
テレビを消してこちらに向き直ってくれる雄太さん。
うれしいな。
こういうところがこの人のいいところなのよね。
「確かに僕の給料が安いせいで君には苦労かけているからなぁ・・・」
「あ、そんなことないのよ。ただ、少しでも貯金ができれば、子供ができたときとかにも安心だと思うの」
「うーん・・・」
腕組みをして渋い表情の雄太さん。
やっぱり私にうちにいて欲しいのかしら。
「とりあえず面接だけでも受けてこようと思うの。気になる求人があったのよ」
「ほう・・・どれだい?」
私は雄太さんに昼間見たチラシを見せる。
「ん? なるほど、ビル清掃か。美乃里(みのり)は綺麗好きだからいいかもな」
えっ?
ビル清掃?
そんなこと書いてあったかしら?
私は雄太さんからチラシを返してもらって再度見る。
変ねぇ・・・
どこにもそんなこと書いてないと思うけど・・・
「まあ、それなら面接に行っておいでよ。受かったらそのときは働けばいい。ホントは家にいて欲しいけどね」
きょとんとしていた私だったが、雄太さんが許可してくれたのには驚いた。
「いいの?」
「ああ、もっとも、この世の中だ。とってくれるとは限らないよ」
「それはそうよねぇ」
確かにそうよね。
私みたいに何のとりえも資格もない主婦じゃ、企業もとってくれないかも。
でも、まあ、面接に行ってみるわ。
私はそう決めて、再びナイターを見始めた雄太さんをあとに食事の後片付けをし始めた。

                      ******

「ここだわ」
翌日私はチラシに記されていた面接場所にやってきていた。
電話連絡をしたら、午後からでもすぐ来て欲しいとのことだったので、とりあえず身支度を整えてやってきたのだ。
面接場所は何てことない雑居ビルである。
いくつもの小さな事務所が入っているようなところであり、どうやらその三階が目的地のようだった。

「ワールドブラック? 聞いた事無い会社よね」
まあ、大規模求人誌じゃなく新聞折込チラシで求人するぐらいだから、小さい会社なんだろうけどね。
私はコンコンとドアをノックする。
『どうぞ』
すぐに中から返事があって、私はノブを回してドアを開けた。

「いやぁ、この地区は応募がほとんどなくてあきらめていたところだったんですよ。あのチラシを読めた人がいてよかった。」
私は応接セットに案内され、スーツを着た中年の男性が私に正面に座るよう手で示す。
チラシを読めた人ってどういうこと?
チラシなんて誰だって読めるじゃない。
私は変なことを言うなぁと思いつつも、言われた通りに腰を下ろす。
「私はワールドブラックの人事を担当しております鎌桐(かまぎり)と申します。さて、早速履歴書を拝見させてください」
「あ、はい」
私は履歴書を取り出し提出した。
うう・・・
緊張するわぁ・・・
「ふむふむ・・・主婦の方でしたか・・・特に目立ったところもなし・・・埋もれていた人材か?」
面接担当の鎌桐さんがうんうんとうなずきながら、私の履歴書に目を通す。
私はどきどきしながらその様子を見ているだけ。
ああ・・・
どきどきするよぉ・・・

「はい、OKです。明日からこられますか?」
えっ?
何の質問も無しなの?
どういうこと?
「えっ? えと、明日からって? 採用・・・なんですか?」
私は恐る恐る訊いてみる。
「はい、採用です。いやぁ、もともとあのチラシを読める方なら無条件なんですよ」
鎌桐さんがニコニコしてそう言った。
「チラシを読めるって・・・チラシぐらい誰でも読めるんじゃないですか?」
「ハッハッハ、いやまぁ、詳しいことは明日お教えしますよ。それよりも勤務条件を確認しますが、基本は当組織の施設での内勤です。時間は九時五時と言うところですが、場合によっては残業もありますし、出張もあることがあります」
「出張も?」
私は驚いた。
パート採用なのに残業はともかく出張もあるなんて・・・
雄太さんになんて言おうかしら・・・
「ハハハハ、ごくまれにと言うことです。奥さんはパート採用ですから、基本は施設での監視役と言うところでしょう」
「監視役?」
なにそれ?
何を監視するというのかしら・・・
「ええ、施設内での監視役と言うか見張り役のようなものです。当組織は実力主義ですから、奥さんのようなパート採用でも成績がよければ正構成員にもすぐなれますし、お給料も気にならなくなりますからがんばってくださいね」
「はい、がんばります」
なんか変なこと言われたような気もしたけど、採用されたからにはがんばろうと思って私はそう返事した。

「ワールドブラック? 清掃会社じゃなかったっけ?」
私は仕事から帰ってきた夫に今日面接に行ってきたことを伝え、採用になったことを報告したのだ。
「違うみたいよ。それでね、早速明日から来て欲しいんだって」
「そうか・・・採用されたんなら仕方ないよな。がんばっておいで」
冷蔵庫からビールを取り出して飲み始める雄太さん。
やっぱりちょっと複雑そう。
「ええ、でも家事はちゃんとやるから心配しないでね。基本五時までだし。あ、でもたまに残業入るかも」
「残業あるのか? いったいどんな仕事なんだ?」
私が用意したちくわにチーズを詰めたものをつまむ雄太さん。
「それがね。なんかの監視役なんだって。詳しくは明日教えてもらうんだけど、いったい何を監視するのかしら」
食事の用意ができた私は、テーブルにそれらを並べていく。
今日は採用が決まったから、一応はちょっとしたお祝いのつもりでお刺身を用意。
まあ、スーパーで特売をしていたってのもあるんだけどね。
「監視役? ああ、多分流れ作業で作られる製品がきちんと作られていくか見ている作業じゃないのか? パートで人募集するったらそんなものだろ」
あ、なるほど。
確かにそれは監視役よね。
うん、それなら私にもできそうだわ。
「お、おいしそうだ」
運ばれてきたお刺身に眼を輝かせている雄太さん。
うふふ・・・
お刺身大好きだもんね。
「でしょ、今日はひらめが結構安かったのよ。だから奮発しちゃった」
「うんうん、うまそうだよ。いただきます」
私は雄太さんにご飯をよそってあげ、おいしそうに食べ始める姿に温かいものを感じていた。

                      ******

翌朝、私は雄太さんを送り出すと、すぐに身支度をして出勤する。
昨日の面接場所にいくと、鎌桐さんが待っていて、組織の施設と言うところに車で連れて行ってもらう。
そこは町外れの山すそにある寂れたような工場で、周囲には林が広がる殺風景な場所だった。
「こちらへ来なさい」
「あ、はい」
私は鎌桐さんに促され、工場の敷地内に入っていく。
あちこち赤錆だらけの工場は、見たところ稼働しているようには見えないけど・・・
今にも崩れそうな建物はガラスもあちこち割れていて、とても人が手入れをしているようには見えない。
本当にここが仕事場なのかしら?
もしかして私だまされている?
何かいやな感じがしたけど、とりあえずついていくと、建物の中に入り込む。

建物の中も荒れ放題といった感じだけど、外見ほどじゃないわ。
今にも崩れそうって感じに見えるけど、中だとそうは感じないわね。
カツコツと足音が響く。
やがて廊下が壁に突き当たったと思うと、そこには驚いたことに髑髏の文様が浮き出ていた。
何なのこれは?
悪趣味だわ。
「カマキリ男だ。新入りをつれてきた。開けろ」
鎌桐さんがいきなり壁に向かって声をかける。
何なの、いったい?
すると、いきなり突き当たりの壁がするすると横にスライドし、下に通じる階段が現れる。
「来い」
「は、はい」
妙に高圧的になった鎌桐さんにそういわれ、私は仕方なくあとについていく。
うーーー
あんまり変なところならやめてやるんだから。

驚いたことに階段を下りると壁が綺麗なコンクリートで作られている通路に出た。
地下はきちんと整備されているみたい。
それにしても地上の建物はほったらかしで、地下で作業しているのかしら?
「ヒーッ!」
「ヒーッ!」
「ええっ?」
私は思わず声を上げてしまう。
だって、廊下の突き当たりに全身を黒いタイツで覆った二人の男性が立ってて、しかもいきなり右手を上げて奇声を発するんだもん。
びっくりしちゃうわよ。
しかもこの人たちったら、顔を赤や黒で塗りたくり、ベレー帽をかぶって腰には髑髏のバックルのベルトを付けている。
何かのコスプレ?
ここはいったいどういう会社なの?

「来い」
彼らの立っていた背後の壁がまたしてもスライドすると、鎌桐さんが私を促す。
左右によけて道を開けた黒タイツの人たちが私を見ている。
うう・・・
変な会社に入っちゃったわ。
どうしよう・・・

「ここが更衣室だ。ロッカーの中には制服が一式入っている。着替えろ」
通路をちょっと行ったところで、私は一つのドアを指し示された。
どうやらここが更衣室らしいけど、ドアに何も書いてないのでよくわからない。
スライド式ドアはボタンで開閉するようになっているらしく、鎌桐さんがドアの脇のスイッチを押すとスライドした。
「すぐに指導の者をよこす。それまでに着替えていろ」
私を突き飛ばすように部屋の中に押し込め、鎌桐さんはドアを閉めてしまう。
何なの?
朝とずいぶん態度が違うわ。
でも、とりあえず着替えなきゃ・・・
私はいくつもあるロッカーの一番手前のものを開けてみる。
別に言われなかったからどれでもいいとは思うんだけど・・・
って、ちょっと待って。
何なのこれ?
ハンガーにかかっているのは黒いハイネックのレオタード?
それにロングブーツに手袋に網タイツ?
これが制服なの?
あわわわ・・・
どうしよう・・・

私がロッカーの前で固まっていると、いきなりスライドドアが開く。
振り返った私の前には、すらっと長身でとても美人の女性が立っていた。
でもその格好は普通じゃない。
黒いハイネックのレオタードを身にまとい、網タイツの上に黒いロングブーツを履いて、手にはひじまでの手袋を嵌めている。
腰には赤いサッシュを巻き、目にはべっとりとアイシャドウを塗り、唇は黒の口紅で黒く染まっているのだ。
しかも手には長いムチまで持っている。
「あ、あの・・・」
私が挨拶したものかどうか迷っていると、彼女は私をにらみつける。
「まだ着替えていないのね? 戸惑うのはわかるけど、さっさと着替えなさい」
「着替えるって・・・これにですか?」
私は恐る恐ると言う感じでロッカーの中を指し示す。
すると彼女はゆっくりとうなずいた。
「そうよ。下着もすべて脱いで着替えなさい」
「どうしても・・・ですか?」
うう・・・恥ずかしい。
このところ運動をサボっているから躰の線も崩れているし、できれば着たくないわ。
「早く着替えなさい! δ(でるた)167号」
いきなり彼女の手にしたムチが床を打ち鳴らす。
「ひっ」
私の反抗心はあっという間に打ち砕かれた。
私はすぐに上着とタイトスカートを脱ぎ、ブラウスも脱いでストッキングも脱ぎ捨てる。
「下着もよ」
「は、はい」
急いで下着も脱ぎ捨てて、私は胸と股間を隠して立ち尽くす。
「続けて」
「は、はい」
私は網タイツに脚を通し、レオタードをハンガーからはずして身につける。
背中のファスナーをどうにか上げると、裸でなくなってホッとした。
「ふう・・・」
体操したりするためにレオタードを着たことはあるけど、こんなに密着する感じはしなかったわ。
これってとても着心地がいいのね。
なんだか好きになりそうだわ。
私はブーツを履いて手袋を嵌める。
最後に腰のところに赤のサッシュを巻くと、私の姿は目の前の女性とほぼ同じになった。
「これでいいですか?」
「そこの椅子に座って」
「あ、はい」
私は指し示された椅子に腰を下ろす。
そういえば彼女の名前も何も聞いてないけど、おそらく彼女が私の指導担当の人なんだわ。

「えっ?」
私が開けたロッカーからコンパクトのようなものを取り出す彼女。
そして彼女はいきなり私の目蓋にアイシャドウを引いていく。
「あ・・・」
「動かないで」
「はい」
私はじっとして彼女が化粧してくれるのを受け入れる。
アイシャドウの次は唇。
真っ黒な口紅を塗られ、私の唇も黒くなる。
「これでいいわ。明日からは自分でメイクするのよ」
「あ、はい・・・」
私は鏡を見せられた。
すごい・・・
私が私じゃないみたい・・・
アイシャドウと口紅がまったくの別人に私をしてくれるんだわ。

「あ、あの・・・今日から・・・」
私はハッと気が付くと、挨拶をしてなかったと思い彼女の方に向き直る。
「これを飲んで」
えっ?
いきなり差し出されたのはどす黒い液体の入ったビン。
「こ、これは?」
「いいから飲みなさい!」
「は、はい」
うう・・・何なのこれは?
こうなりゃ自棄よ。
どうなっても知らないわ。
私は思い切って一気にビンの中身を飲み干した。
ドロッとした苦い液体が喉の奥に流れ込む。
「うえぇぇ、苦い」
「うふふふ・・・そのうち慣れるわ。それにこれからはそれがないと生きられなくなるわ」
笑みを浮かべる彼女。
「ど、どういうことですか?」
「それはブラッキー薬といってね。あなたの躰を強化してくれるの。普通の人間なんか足元にも及ばないくらいにね。その代わり、それを一日一回飲まないと死んでしまうわ」
ええっ?
そ、そんな・・・
「ど、どうしてそんなものを飲ませるんですか?」
「あなたが選ばれたからよ。あなたは我がワールドブラックの女戦闘員δ167号。今日からはワールドブラックの一員よ」
「こんな薬を飲むなんて聞いてないわ。やめます。もう帰ります」
私は立ち上がった。
もういい。
変な薬まで飲まされてやってられないわ。
こんなとこやめてやる。
でも、私の躰は言うことを聞いてくれなかった。
いきなりめまいがして私は床に倒れこむ。
「ど、どうして・・・」
「ブラッキー薬が効いてきたようね。少し眠りなさい。目覚めたら多少は考えが変わるわ」
くすくすと笑っている彼女を見上げた私の意識は、やがて闇に飲み込まれた。
  1. 2008/05/21(水) 20:30:33|
  2. 洗脳系SS
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今年最後は二次創作

今年最後の更新は二次創作SSです。

皆様はゲッターロボGをご存知でしょうか?
古いアニメですが、ゲーム「スーパーロボット大戦」などでおなじみかもしれませんですね。
そのゲッターロボGの敵百鬼帝国は、とても魅力的な手段を持っておりましたので、ずっと悪堕ちSSにしてみたいと思っていたものでした。

ということで、ゲッターロボGの二次創作SSです。
当時のアニメの記憶がもう定かではないので、ヒドラーやグラーの雰囲気が違うかもしれませんがご了承くださいませ。

それではどうぞ。


「イザナミアロー!!」
私はレバーに付いたトリガーを押しながら、大声で必殺技の名を叫ぶ。
必然性はないんだけど、名を叫ぶことでその武器の威力が増したように感じられるから不思議よね。
コクピットに座る私の前にはスクリーンが広がっていて、そこには動きが止まった百鬼メカが映し出されている。
今、私がトリガーを押したことにより、このイザナミの左手に備えられた弓から必殺のイザナミアローが発射され、狙いたがわずに百鬼メカの腹部に突き刺さる。
『グオォォォォォォ』
唸りともうめきとも付かない声が百鬼メカから発せられ、どっと地面に倒れこむ。
やったわ!
イザナミの威力を見たでしょ!
百鬼帝国なんかに地上は好きにはさせないわ。
日本にはゲッターロボだけじゃないんだから。

そう・・・
恐竜帝国亡き後、忽然と現れた百鬼帝国。
彼らはその名の通り鬼の群れだった。
外見は人間に近いものもいるらしいけど、いずれもが角を持ち、やさしさのかけらもない残忍な連中だ。
早乙女研究所のゲッターチームが、ゲッターロボで立ち向かっているものの、彼らだけでは手に余ることは間違いない。
それに・・・
世界各国だって黙って手をこまねいているわけには行かないのだ。

日本も早乙女研究所だけではなく、富士工学研究所がかねてから開発中だった宇宙作業用ロボットをベースにしてこのイザナミを開発し、私がパイロットとして選ばれて戦っているというわけ。
ロボットの操縦はパイロットの感性的なものが大きく作用するという。
男性ではなく私が選ばれたのも、感性的な理由が大きいらしい。
もちろん百鬼などに負けたくはないし、ゲッターチームにも遅れはとりたくない。
私は必死に訓練に励み、イザナミを乗りこなして見せたのだ。

「こちらイザナミ。パイロットの桜橋美由紀(さくらはし みゆき)です。司令部どうぞ」
『こちら司令部対策本部です。今石ヶ関(いしがせき)博士と変わります』
「了解」
私はイザナミアローで撃破された百鬼メカに近づいていく。
腹の部分を撃ち抜かれた百鬼メカはぴくりとも動かない。
これで四機目の撃破だ。
少しはゲッターチームに貢献できたかしら。
『桜橋君、石ヶ関じゃ』
「博士、ご覧になりましたか? 百鬼メカをやっつけましたよ」
『うむ、ヘリコプターからの映像で見ておったよ。ご苦労じゃった。帰還して休んでくれたまえ』
「了解しました」
石ヶ関博士はこのイザナミの主任開発担当者だ。
イザナミのことは隅々まで知り尽くしているといっていい。
女性らしい柔らかなフォルムの人間型巨大ロボットイザナミが、その全力を発揮できるのも博士たちのおかげ。
その努力を私が無にするわけにはいかないわ。

私は研究所がまわしてくれる輸送機の到着を待つ。
ゲッターロボと違ってイザナミには飛行能力はない。
そのため、専用の輸送機がイザナミを運んでくれるのだ。
イザナミのセンサーが輸送機の到着を伝えたため、私はイザナミを移動させようと輸送機に近づこうとした。
その時だった。

ガクンとイザナミは前につんのめるように倒れこむ。
「!」
私は必死でバランスを保とうと思ったものの、イザナミは脚がもつれるようにして地面に倒れこんだ。
シートベルトやエアクッションのおかげで怪我はしなくてすんだものの、コクピットにも衝撃が走る。
「な、何が?」
私は足元のカメラに切り替え、何が起こったのかを確かめた。
「えっ? これは?」
驚いたことに、イザナミの左足首ががっちりと掴まれている。
しかもそれは、あの倒したはずの百鬼メカなのだ。
まだ破壊しきれていなかったというの?
私はすぐに百鬼メカに止めを刺そうと、イザナミを立ち上がらせるために操作する。

ガリガリガリ・・・
何かが引っかかるような音とともに、立ち上がろうと手を着いたイザナミの両手に振動が走る。
「えっ? こんどは何?」
スクリーンに映されたのは、地面から現れた巨大な手。
それがイザナミの両手をがっちりと掴んでいるのだ。
地面の下に別な百鬼メカがいるんだわ。
『イザナミ! どうした、イザナミ!』
輸送機の機長の声が伝わってくる。
「こちらイザナミ。別な百鬼メカが!」
『よし、援護するからその隙に脱出を!』
「了解」
両手が封じられては力比べしかできはしない。
どうにか離脱して距離をとらなくちゃ・・・

輸送機が両脇に抱えたミサイルを、地面から突き出た手に向かって発射するために舞い降りる。
だが、突然地面から、その両手の持ち主と思われる百鬼メカの頭部が突き出してきた。
そして、その額についた角からビームを発射すると、輸送機はそのビームによって火だるまになってしまう。
「ああっ」
私の目の前で輸送機は地面に激突し、積んでいたミサイルもろとも爆発した。
「生駒さん・・・桐倉さん・・・くっそぉ!」
私はいつも助けてもらっていたパイロットたちの顔を思い浮かべ、イザナミのフルパワーで百鬼メカを振り払おうとレバーを思い切り引き寄せる。
グオーンという音がコクピットに響き、イザナミの巨体がかすかに振動して、全エネルギーを振り絞ろうとした。

「フギャ」
私の躰にショックが走る。
目の前が急速に暗くなっていく。
な、何が起こったの?
私がその理由・・・コクピットの絶縁を打ち消すほどの電気ショックを浴びせられたということ・・・に気が付くころ、私の意識は闇に沈んでいた。

                           ******

『こ・・・が・・・ナミの・・・ロット・・・』
『女性・・・とは・・・』
かすかに聞こえてくる誰かの声。
私はいったい?
ここは・・・どこ?
徐々に意識が戻ってくる中で、私はゆっくりと目を開けた。

「おお、目を覚ましたようですぞ、ヒドラー元帥」
片メガネの禿げ上がった老人が私を見下ろしている。
その隣には、まさか・・・あの歴史に出てきたヒトラー?
「クククク・・・これはなかなか、人間にしておくには惜しい美女ではないか」
違うわ・・・こいつの頭には両側から角が生えている。
老人の方にも額に角があるわ。
こいつらは鬼。
百鬼帝国の連中なんだわ。
私はすぐさま腰の拳銃に手を伸ばそうとした。

だがそれはかなわなかった。
私の手は動かすことができなかったのだ。
「くっ」
私は歯噛みしたが、私の両手も両足もいわば大の字のように台座の上に張り付けられているようで、手首足首のところで固定されているらしい。
何とかしようともがいたものの、私の力ではどうにもできなさそうだった。

「無駄なことはやめたまえ。その枷は人間の力でははずせるものではない」
「くっ」
私は悔しさに唇を噛む。
百鬼帝国の鬼どもがいるというのに・・・
妹を奪った鬼どもがいるというのに・・・
「イザナミのパイロットが女だったとは。いや、驚いたよ。クックック・・・」
ヒトラーそっくりの鬼が下卑た笑いを漏らす。
まさに鬼となったヒトラーというべきか。
「女で悪かったわね。残念だわ、これ以上お前たち鬼どもをのさばらせたくなかったけど、これまでのようね」
悔しいけどこれは私の油断。
イザナミのパイロットである私がおろかだったのよ。
私はここで死ぬだろうけど、後は頼むわ、ゲッターチーム。

「いやいや、君の人生はこれから始まるのだよ。そうだな、グラー博士」
ヒトラーのような鬼が傍らの老鬼に声をかける。
この白髪の老鬼はどうやらグラー博士というらしいわね。
「ひっひっひ・・・なるほど、それがよかろうかな? ヒドラー元帥」
負けず劣らずのいやらしい笑いをする老鬼。
こいつらはいったい何を考えているの?
私をどうするつもりなの?
殺すならさっさと殺しなさいよ。

「ひっひっひ、これが何かわかるかの?」
グラー博士が取り出したのはねじくれた円錐形のもの。
先が尖っていて、何か鬼の角みたいな・・・
私はぞっとした。
まさか・・・まさか?
「ほう、気が付いたかね? これは人間を我が百鬼帝国の一員として迎え入れるための角なのだ。これを移植すれば、人間といえども栄えある百鬼帝国の一員となることができるのだよ」
ニヤニヤと笑っているヒドラー元帥。
私は血の気が引いた。
私を・・・
私を鬼にするというの?
「君は人間としてはなかなかの美女だ。それに勇気もある。我が百鬼一族に迎え入れてもよかろう」
「じょ、冗談じゃないわ! 鬼なんか、鬼なんかになるものですか! 亜希(あき)を奪った鬼になんか誰がなるものか!」
私は必死に手足をばたつかせて、何とか戒めを解こうとした。

「ほう、お前はあの娘の姉妹か? なるほど似ておるわい」
「えっ?」
私は思わずグラー博士の方を向く。
「亜鬼、来るがいい」
老鬼が手招きする先を見た私は、心臓が飛び跳ねるのを感じていた。

「お呼びですか? グラー博士」
手招きに応じてやってきたのは一人の女性だった。
額に角が生えているけど・・・
まさか・・・
まさか・・・
「どうだ? この娘はお前の身内か?」
「はい、グラー博士。私の姉、美由紀でございます」
にこやかに微笑む顔は忘れもしない。
「亜希・・・」
私は妹の名を呼んでいた。
「久しぶりね、お姉ちゃん。お姉ちゃんがイザナミのパイロットだったなんて知らなかったわ」
昔と変わらない笑顔。
唯一つ違うのは・・・
彼女の額に角があることだった。
「亜希・・・あなたいったい・・・」
「うふふ・・・百鬼メカに破壊されたビルの中にいたとき、私は奇跡的に助かったの。ほかにも数人の人が助かったわ。私は彼らとともに百鬼帝国に連れてこられ、角を埋め込んでいただいたの。今ではグラー博士のお手伝いなどもさせていただいているわ」
「亜希・・・」
「うふふふ・・・おねえちゃん、今の私は亜希じゃなくて亜鬼なのよ」
私の目から涙がこぼれる。
亜希は・・・
亜希は死んだのだ・・・
亜希はあそこで死んだのだ・・・
この娘は亜希なんかじゃないわ。
「お姉ちゃん。心配しなくても大丈夫。すぐにお姉ちゃんにも角が埋め込まれるわ。そうすればお姉ちゃんも百鬼帝国の一員になるの。偉大なるブライ大帝様のしもべになれるのよ」
私はいっそのこと気が狂ってしまえばいいのにと思った。

「さて、おしゃべりはこれぐらいじゃ。早速手術をはじめようかの」
グラー博士が手術の準備に入る。
私は覚悟を決めた。
鬼になんかならない。
たとえ死んでも鬼になんかなるものか。
私は舌を噛み切ろうと口を開けた。

「おっと、そうはいかないぞ」
「はぐっ」
ヒドラー元帥が私の口に枷を嵌める。
そんな・・・
なんてことなの。
これじゃ舌が噛み切れない。
「クククク・・・何人もの人間が鬼にしてやるというにもかかわらずに死を選びおったわ。自殺などさせんよ。お前には百鬼の一員として働いてもらわねばな」
「ムググ・・・」
私は必死に口枷をはずそうとしたが、手も足も動かせない以上どうしようもない。
ああ・・・
誰か・・・誰か助けて・・・

キュイーンという音がして、私の額に歯医者の使うドリルの巨大なものが近づいてくる。
麻酔も何もかけられないらしく、私はその光景を黙って見ているしかない。
「ミヤーー!!」
口枷がはまっているせいで、自分でも何を言っているのかわからない。
「痛いのは最初だけじゃ。角が埋め込まれればすぐに痛みは消えうせる。その後は鬼としての自覚が生まれ、百鬼の一員としての誇りを持つようになるじゃろう」
「ヒギーーー!!」
私は目をつぶる。
額に激痛が走り、ゴリゴリゴリという振動が骨に響く。
そして、グッと硬いものが押し込まれたとき、私は何も考えられなくなった。

                          ******

亜鬼の差し出したタオルを受け取り、角の周りの血と、だらしなくたらしてしまった唾液を拭く。
あれしきのことでうろたえてしまった自分が恥ずかしい。
百鬼一族にあるまじき失態だわ。
確かにあの瞬間は人間などという下等な存在であったものの、角を埋め込まれるという光栄な瞬間に怯えを感じていたなんて・・・
「クククク・・・気分はどうだ? 美由紀よ。いや、今は美由鬼であったな」
「はい、ヒドラー元帥。とてもすばらしい気分ですわ。すぐにでも偉大なるブライ大帝様にお目通りを願い出て、その足元にひれ伏したく思います」
私は偽りのない気持ちを申し上げる。
そう・・・
偉大なるブライ大帝様に早くお目にかかりたい。
そうして今までのことをお詫びし、百鬼帝国の一員となった喜びを申し上げるのだ。
「クククク・・・それでよい。すぐにでもブライ大帝がお会いなされるだろう。だが、美由鬼よ、その前にやらねばならぬことがあることを忘れるな」
「もちろんです。ブライ大帝様の邪魔をする地上の人間ども。ことにゲッターチームをこの手で葬り去ることです」
そう、ゲッターチームこそブライ大帝様の邪魔をする憎き存在。
私がこの手で必ず葬り去ってやるわ。
「すでにお前のイザナミは、メカ美由鬼として改造を終えておるわい。いつでも出撃可能じゃ」
さすがはグラー博士。
イザナミもきっと喜んでいるに違いないわ。
「わかりました。早速出撃いたします」
私は百鬼帝国の一員としての新たなる黒い躰にぴったりしたパイロットスーツに着替え、メカ美由鬼の待つ格納庫へと向かっていった。

END

以上です。
お楽しみいただければ幸いです。
名前などはちょっと遊びすぎたかも。

それではまた来年。
皆様よいお年を。
  1. 2007/12/31(月) 19:14:29|
  2. 洗脳系SS
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こんなネタも大好きです

舞方はこんなネタも大好物です。

ということでちょこちょこっと書きましたシチュ抜き出し短編の女教師MCモノです。
よければ読んでみて下さいませ。


「何度言ったらわかるんですか、黒洲(くろしま)先生? 先生のやっていることは覗き、痴漢行為ですよ」
私はレオタードの上にジャージを羽織り、体育館入り口でうろついていた黒洲先生に言い放つ。
最近いつもいつもこの太った中年教師は新体操部の練習を覗き見ているのだ。
最初は気がつかなかったが、レオタード姿の生徒たちがそわそわしているので、どうしたのか聞いたところ、時々黒洲先生が覗いているというではないか。
顧問としてそんなことを許すわけには行かない。
それにいつも汗をかいている、この太った中年教師が私はどうも好きになれない。
薄笑いを浮かべて反省している様子のまったく見えないこの男に私は苛立ちを覚える。
「黒洲先生、もし今後もこういうことがあれば、職員会議に提出しますので。そのつもりでいてくださいね」
「いやはや、誤解ですよ吹浦(ふくら)先生。私はたまたま通りかかっただけですから」
汗を拭き拭きニヤニヤと笑っている黒洲先生。
こんな男が生徒たちのレオタード姿を覗いていたのかと思うとぞっとする。
「わかりました。黒洲先生は方向音痴なんですね? 国語科準備室がこちらにあると思っておられるようですから」
「なっ・・・」
「とにかく、このあたりをうろつかれると迷惑なんです。生徒たちも萎縮していい演技ができなくなるんです。インターハイで不本意な成績を残したくはありませんので。いいですね!」
私は相手に言い返す暇も与えずに一気に言い放つ。
これぐらい言ってやらなければわからないでしょうからね。
国語科教師が聞いて呆れるわ。
「クッ」
何か言いたそうだった黒洲先生だが、私は体育館の入り口をぴしゃりと閉める。
ふん、いい気味だわ。

「先生お見事」
「先生ありがとー」
「吹浦先生やるー」
「デブ黒いい気味ー」
新体操部や体操部の女生徒たちが口々に歓声を上げてくれる。
インターハイ間近の今、生徒たちは本番同様にレオタード姿なのだ。
観客に見られるのはともかく、興味本位でいやらしい視線に晒させるわけには行かない。
顧問である私が彼女たちを守らなくちゃね。
黒洲のような変態教師なんてさっさと首になればいいのよ。

                ******

私がきつく言ったせいか、あれから黒洲先生は体育館近くには姿を見せない。
国語科準備室に篭もってなにやらしているらしいけど、生徒たちを覗き見しないのなら問題は無いはず。
もっとも、教師としての腕前もあまり褒められたものではないみたいなんだけどね。
時々教頭先生に嫌み言われているようだし。
あーあ・・・あんな人さっさとやめちゃって欲しいなぁ。
顔を見るだけで不愉快な気分になっちゃうわよね。

「吹浦先生、遅くまでご苦労様」
新体操部の顧問として部活動を指導していた私が職員室に戻ってきた時には、すでに夜の9時を過ぎていた。
寒々とした蛍光灯の灯が一画だけ点いている職員室は、普段ならもう誰もいないはずだった。
私は職員室の明かりを消し、戸締りを確認して守衛さんに鍵を渡すだけで一日が終わるはずだったのだ。
「黒洲先生・・・」
私は太ったこの中年男が職員室に残っていたことに驚くと同時に、思わず身構えてしまう。
こんなところでとも思うが、この男なら人目が無ければ私を襲うぐらいはしかねないと思ってしまったのだ。
「お疲れ様です。ずいぶん遅くまでお残りですね」
私はできるだけ内心の不安を出さないように、当たり障りの無い言葉を交わしてさっさと職員室を出ようとした。
まずったわね。
帰りに着替えるつもりで、職員室まではレオタードの上にジャージを羽織っただけで来てしまったのだ。
黒洲先生にしてみれば、まさに獲物がかかったようなものかもしれない。
「いやいや、待っていたんですよ、吹浦先生」
「クッ」
私は思わずあとずさる。
やっぱりこの男は私を待っていたんだわ・・・
守衛室まで逃げた方がいいのかしら・・・
でもまさかそこまでは・・・
いざとなれば大声上げれば守衛さんに聞こえるかな・・・

「吹浦先生。この通りです」
そう言って深々と頭を下げる黒洲先生。
「えっ?」
私は一瞬面食らってしまった。
黒洲先生が謝っている?
「いやはや、年甲斐も無くレオタード姿の少女たちに見惚れちゃったんですなぁ。それでもう少し見たいと思い、つい覗きのようなマネをしてしまいました。謝って赦されるものではありませんが、この通りです。赦して下さい」
頭を下げ、謝罪する黒洲先生。
「や、やめてください。頭を下げられても困ります」
私はとりあえず油断しないようにして黒洲先生の様子を窺う。
もしかしたら私を油断させようとして・・・
ふう・・・
ここまで疑っちゃうなんて私もどうかしているかもね。
本心で謝っているのかもしれないし・・・
「吹浦先生にも大変ご不快な思いをさせてしまいました。幾重にもお詫びします」
国語化教師らしく、丁寧な口調で謝る黒洲先生。
「わかりました。でも二度としないで下さい。もし今後同じようなことがあれば・・・」
「いやいや、そのご心配は無用です。私は明日、辞表を提出いたしますから」
頭を下げたまま、懐から封筒を取り出してみせる黒洲先生。
まさかそこまで・・・
「黒洲先生、私はそこまでは・・・」
そりゃあ、やめればいいとは思っていたけど、これじゃ私が追い出したみたいじゃない。
私は黒洲先生のそばへ行き、そこまでしなくてもと言うつもりだった。

「おっと・・・」
はらりと黒洲先生の手から封筒が離れ、私の足元に落ちてくる。
「あ・・・」
私は無造作にそれを拾い、黒洲先生に差し出した。
「えっ?」
私の目の前に突き出される木彫りの人形。
古びたもので、黒ずんでいて、何か得体の知れない雰囲気がある。
いや、それよりもその人形が耳まで裂けたような口で笑っている。
この人形はいったい?
角みたいのが頭にあって・・・
まるで・・・
まるで悪魔のような・・・

「ふふ・・・あは・・・あははははは・・・」
まるで目の前の人形が笑い出したかのような笑い声。
その笑い声が黒洲先生のものだと理解するまでに、私はちょっと時間が掛かった。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・」
黒洲先生は笑い続けている。
何がそんなに可笑しいのかしら。
それよりも・・・
どうして私はこの人形から目が離せないのかしら・・・
「うひゃひゃひゃ・・・引っかかりましたね吹浦先生」
引っかかった?
何に引っかかったと言うの?
「うひゃひゃ・・・この人形はね、私の友人が南米で呪術師に押し付けられたものでしてね。現地では心をゆがめる悪魔と言うそうですよ」
「心をゆがめる悪魔?」
私はまったくこの人形から目が離せない。
ニヤニヤ笑う口の中にはご丁寧に牙らしいものまで彫られている。
両手を腕組みして、人間をあざ笑っているかのよう・・・
「ええ、友人は知らなかったようですがね、私はこれがまぎれもない本物だとわかったんですよ」
「本物?」
「そう、これは心をゆがめてくれる悪魔なんですよ。持ち主の思った通りにね」
持ち主の思った通りに?
私はぞっとした。
それが事実ならば、私の心は黒洲先生にゆがめられてしまうということなの?
まさか・・・
「もちろん無制限じゃありません。悪魔には取引が必要ですからね。うひゃひゃひゃひゃ・・・」
ぞっとするような笑い声を響かせる黒洲先生。
私はただそれを聞きながら立ち尽くしていた。

「さて、吹浦先生にはこれから私の女になってもらおうかな。君は結構その体つきがいやらしくてね。レオタード姿を見ては勃起していたよ」
鳥肌の立つような黒洲の言葉。
でも私は彼がどんな顔をしているのか見ることができない。
きっといやらしく笑っているんだわ。
最低。
こんな男の言いなりになるなんてありえない。
こんな人形で何ができるのよ。
「黒洲先生! いい加減にしてください! 訳のわからないことはもうやめておとなしく私を解放しなさい。さもないと大声を出しますよ」
私は人形から視線をそらすことができないまま、どうにかして黒洲の卑劣な行動から逃れようとしていた。
催眠術とかで聞いたことがあるわ。
何らかの拍子に相手に催眠をかけ、視線をそらすことができなくさせる。
黒洲がやっているのもきっとそれだわ。
暗示に掛かりやすいとは思いたくないけど、黒洲の言いなりになるような暗示なんてごめんこうむるわ。
催眠術は相手が嫌がることはさせられないはず。
絶対に言いなりになんかなってやるものですか!
「おやおや、私に逆らってはいけない。“君は目の前にいる黒洲鐐造(くろしま りょうぞう)を人間的にも男としても敬い尊敬しているのだから”ね」
ふざけたことを言わないで!
黒洲鐐造を人間としても男としても敬い尊敬しているですって?
そんなの当たり前じゃない!
私は黒洲先生をすごく尊敬しているわ。
黒洲先生は素晴らしい教育者ですもの。
尊敬するのは当たり前じゃない。
「“黒洲鐐造の言うことは全て正しく疑念を挟む余地は無い。君は黒洲鐐造に身も心も全てを捧げ、彼の女であることを喜びと感じる”のだ」
黒洲先生の言うことは全て正しく疑念を挟む余地は無いのは当然だわ。
黒洲先生は最高のお方ですもの。
間違えるはずなどありえないわ。
黒洲先生は神様のようなお方なの。
私は彼に身も心も全てを捧げるわ。
私は彼の女。
彼のためなら何でもするわ。
「“吹浦芽久美(ふくら めぐみ)は黒洲鐐造の女であり、他の男に心を奪われることは一切無い。一生を黒洲鐐造に捧げ尽くし、彼の求めることならどんなことでも喜んで行なう”」
「はい。私吹浦芽久美は黒洲鐐造様の女です。他の男などには一切心奪われることはございません。一生を黒洲鐐造様に捧げ尽くし、彼の求めることはどんなことでも喜んで行ないます」
私は鐐造様のお言葉を繰り返す。
そうよ・・・
私は身も心も鐐造様のもの。
鐐造様に全てを捧げるわ。
ああ・・・
なんて素晴らしいのかしら・・・

「はう、あん、あん、鐐造様・・・鐐造様ぁ。最高です。最高ですぅ」
鐐造様のペニスが私の躰を突き上げる。
職員室に鍵をかけ、誰の邪魔も入らない二人の世界で私は鐐造様に可愛がっていただいている。
鐐造様のご希望で私はレオタードを身につけたまま。
股間の部分をずらして入れていただいたの。
はあん・・・
天にも昇る気持ちってこのことなんだわ。
最高のセックス。
鐐造様の汗が飛び散り美しい。
太目のお腹が弾力のあるクッションとなって私の快感をさらに増大させているわ。
ああーん・・・
イく・・・イく・・・イッちゃうー・・・

                ******

「ひゃあう・・・こ・・・こんなこと・・・」
レオタードの股間に鐐造様のモノを模したバイブを嵌め、スイッチを入れてやる。
「ふああああ・・・」
たちまちレオタードの股間部分の布には染みが広がり、彼女が快楽を感じていることがわかる。
両手両足を縛り上げ、身動きをとれなくした上で絶えず股間を刺激して発情させる。
この娘ももうすぐ鐐造様の好みの女となるわ。
うふふふ・・・

「ふふふ・・・いい声でよがるじゃないか。快楽には逆らえないということかな?」
笑みを浮かべながら鐐造様がレオタード姿の少女を見ている。
すでに調教を終えた新体操部の部長がその鐐造様のペニスを咥え、うっとりとした表情で見上げていた。
「はい、鐐造様。あの娘ももうすぐ鐐造様の素晴らしさがわかりますわ。いずれ新体操部の少女たちは全て鐐造様のメスとなるでしょう。うふふふふ・・・」
手元のバイブのスイッチで強弱をつけてやり、少女を快楽の虜にする。
やがてあの娘も涎をたらして鐐造様のペニスをねだるようになるのだわ。
うふふ・・・
なんて素敵なのかしら。
鐐造様の素晴らしさを少女たちに教え込む。
これこそが教育というものだわ。
そのお手伝いができるなんてなんて私は幸せなのかしら。
「ふふふ・・・赤いエナメルのボンデージ。よく似合っているじゃないか芽久美。まさに少女たちの上に君臨する女王だな」
「ああ・・・ありがとうございます鐐造様。鐐造様のおかげで私は真の教育に目覚めることができました。これからも私は鐐造様のために少女たちに性の喜びを教えていきますわ」
私は鐐造様にお褒めいただき、思わず股間をぬらしていた。
  1. 2007/08/10(金) 19:20:25|
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北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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