さて、今回は、前々回の続きでコスプレ用のコスチュームを販売する際の法律上の問題についてご説明したいと思います。 |
1.コスプレ用のコスチュームを販売すること
|
キャラクターのコスチュームを販売する際に問題となる法律は、例によって、著作権法、商標法、そして不正競争防止法です。
以前(第4回-1)ご説明したように、キャラクターのコスチュームは、そのコスチューム自体の独自性がどれだけ強いかによって、著作権によって保護されるものとされないものとに分けられます。
たとえば、綾波レイ(エヴァンゲリオン)のセーラー服や神宮寺さくら(サクラ大戦)の袴など、一般的なセーラー服や袴によくあるような配色や柄で成り立っているコスチュームなどに関しては独自性が弱く、そのため著作権によって保護される可能性は低くなります。
(なお、独自性の有無は純粋にコスチューム(ここでは衣装に限定)のみで判断しますので、髪型や髪の色、その他動作が特徴的であっても、それはコスチュームの著作物性の判断に影響することはありません)。 |
そして、そのような独自性の弱いコスチュームに関しては、それ自体で誰の商品かを判別することが難しい、つまり「自他識別力」が乏しい、ということになりますので、商標法や不正競争防止法に違反するという恐れも低いわけです。[1],[2]
|
2.そのコスチュームにキャラクターの名前をつけて販売することの法律上の問題
|
通常、コスチュームを販売する際には、何のキャラクターのコスチュームかを明示して販売することになろうかと思われます。もちろんコスプレイヤーの方から依頼を受けてコスチュームを作るときであっても、どのキャラクターのコスチュームを作るかは明らかにしてもらうかと思います。
では、そのようにコスチュームにキャラクターの名前をつけて販売することは法律上問題ないのでしょうか。
|
(1)著作権法
この点、まず第5回「パブリックドメインって何?」の回でご説明したとおり、キャラクターの名前自体が著作権法で保護されるわけではありません。
したがって、キャラクターの名前を使ったとしても著作権法違反になることはありません。
|
(2)商標法、不正競争防止法
他方、コスチュームにキャラクターの名前を使う場合、商標法と不正競争防止法との関係が問題となります。
まず、キャラクターの名前自体が商標登録されている場合があります。
したがって、その場合は、そのキャラクターの名前を商品名に使うことはできなくなってしまいます。たとえば、ピカチュウやドラえもんなどは商標登録されており、これらを商品の名前につけることはできなくなります。
また、キャラクターの名前自体が商標登録されていないとしても、不正競争防止法が適用される場合もあります。
それは、そのキャラクター自体が有名で、そのキャラクターによるマーチャンダイジングが進んでおり、そのキャラクターの名前を見ただけで何の商品か(またはどの会社の商品か)がわかる程度になっている場合です。そのような場合は、無断でそのキャラクターの名前を使うと不正競争防止法違反になってしまいます。
もっとも、通常コスプレの対象になるキャラクターというのはコスプレイヤーの中である程度有名なものがほとんどですから、ある意味キャラクターの名前をコスチュームの名前に使うとすると、ほとんど不正競争防止法違反となる可能性があることになります。
しかしながら、コスプレ用のコスチュームを売るのに、何のキャラクターのコスチュームかを明示できないとすると、非常にコスチュームを売るのが難しくなりますよね。
そのため、キャラクターの名前を使いたい、でも商標法や不正競争防止法違反になるのは嫌だ、という声にお答えして、ひとつの方法をご紹介します。
それは、キャラクターの名前の後に、「風」とか「タイプ」とつけることです。
商標法や不正競争防止法は、基本的に商品の出所表示機能(つまり、この商品は誰が作ったのか)を保護する法律です。
で、なぜ「風」や「タイプ」をつけると良いかというと、「(キャラクターの名前)風」とすると、そのキャラクターそのものでないことを前提に、基本的にそのコスチュームがそのキャラクター「っぽい」こと、つまりそのキャラクター名はあくまでコスチュームがどういう形をしているかの説明として使われているに過ぎないことになります。
したがって、「風」とか「タイプ」とかをつけている限り商品の出所表示機能は害しないということになります。
これは、実際問題として、「(ブランド名)風」や「(ブランド名)タイプ」という形で、商標権侵害となりそうなバッグを販売するのに使われたりしています。[3]
したがって、キャラクターの名前の後に「風」や「タイプ」を使えば、直ちに商標法や不正競争防止法違反になる可能性を下げられるというわけです。
|
3.結論
以上のように、コスプレをめぐってはいろいろな法律問題が考えられます。
ただ、コスプレ自体が新しい文化ということもあり、またコスプレ自体アニメや漫画の販売促進活動の一環として大目に見られてきたこともあり、その法律上の争点はまだまだ広く認識されているわけではありません。
もっとも、コスプレが今以上に普及し、コスプレで多大な収益を上げる企業が今以上に出てきた場合には、今まで大丈夫だったからといういい訳は通用しません。今後実際に法律上の紛争が生じてきたときに、どのように対処すべきかを考える際にこの文章がお役に立てばいいなぁと考えています。
|
ということで、まぁ必要なときに再度目を通してみてください。よろしくです!
次回は、僕が声オタということもあり、声優の権利についてご説明したいと思いますー。
|
|
コスプレ衣装制作と法律
コスプレイヤーを演じることと法律
|