文部科学省は、秋の大型連休返上で、09年度補正予算全項目の洗い直し作業に取り組むことになった。川端達夫文科相がヒアリング開始を22日と指示したのを受け、同省には19日も職員が次々と出勤した。霞が関の常識や前例が通用しない、本格的な「政治主導改革」が始動し、ある職員は「旅行をキャンセルした。まさかこんなことになるとは……」とつぶやいた。
18日深夜、川端氏と副文科相2人、政務官2人の初顔合わせとなった「政務三役会議」終了後、坂田東一事務次官と山中伸一官房長が大臣室に呼び出された。2人は省内所管業務一覧と政策説明用資料を携えていた。川端氏は所管業務や政策の説明を断った。2人には、「最優先でやらなければならないのはこちらだ」と、マニフェストの関連部分や09年度補正予算の重点見直し項目、10年度予算の概算要求の変更・追加の優先検討項目などを記した「指示書」を差し出した。
川端氏は「ヒアリングは22日から。見直しはゼロベース。必要な予算のために身を削ることを考えてほしい」とたたみかけた。民主党政権が各省庁に求めようとしているのは、「予算は(必要額を)積み上げていくもの」という発想から、「必要なものに使うため、捻出(ねんしゅつ)するもの」という発想への転換。さらに、天下り問題への対策として、04年4月以降の退職者全員のその後の職歴を調べることなども指示した。
見直す補正予算が多岐にわたることなどから、他省庁より早めの作業着手となった文科省。省幹部らの対策協議は19日早朝に及び、21日までに局ごとの提示案を整理するスケジュールを確認した。
民主党が「子ども手当」「高校無償化」など福祉や教育重視の経済政策を掲げていたこともあり、「教育関連予算は削減対象となりにくいのでは」との楽観論が省内に広がっていたが、ある幹部は、「驚いている暇はない。さまざまな提示オプションを考えてヒアリングに臨みたい」と気持ちを切り替えていた。【加藤隆寛】
毎日新聞 2009年9月20日 東京朝刊