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モードは難しいのか? |
2004.12.20 |
本レッスンでは幾つかのモード(スケールの1つの考え方)を紹介している。
ドリアンスケール この3つさえ知っていれば大概の曲はこなせる。マイルス・デイビス以降のモード系ジャズと言われたジャズでもモードの中でこの3つが多用されている。 本サイトで初めてモードに出会ったと言う読者もいると思うが、実は我々ロックギタリストは2つのモードを利用している事が多い。それがアイオニアンスケール(イオニアンとも言われる)とエオリアンスケール。 別の表現をすると前者はメジャースケール、後者はナチュラルマイナースケールを指す。キーがCメジャーだった場合、CアイオニアンスケールはCメジャースケールを意味し、キーがCマイナーであったらCエオリアンスケールはCナチュラルマイナースケールの事なのだ。 理論書内でのモードについての説明を見ると、多くはグレゴリオ聖歌だの教会旋法だの書かれていて「教会で使われる音楽」と言うイメージを強く持ってしまいがち。オレもそんな1人だったし、しかもジャズで使われるスケールの一種であると単純に記されている事もあり、ロックには無関係だと思っていた。 結局、理論書とは初心者の為の物でなく、ある程度一定の知識を学んだもののアンチョコ的存在であり、そのせいで初心者は理解に苦しんだり、誤解、曲解をしてしまう。 最初から「多くの演奏家はアイオニアンスケールとエオリアンスケールを使っている」と書いてあればとっつき易いのに・・・。所持しているスケール本は運良くこんな事が書かれてあった。「アイオニアンスケールはメジャースケール、エオリアンスケールはナチュラルマイナースケール、よって説明は省略する」と書かれてあり、これがモード究明の突破口だった。 「モードは難しい」、これは理論書に詳細に渡って書かれている事が少ないからこそ誤解し、曲解してしまう。「モードは誰でも使える、使っている」これが正しいのだ。勿論グレゴリオ聖歌時代のモード、ジャズ的モード解釈、ロック的モードの解釈、それぞれ若干の違いはあろうが、基本は一緒なのだ。 誰もが知っている「咲いた〜咲いた〜チューリップの花が〜」の「チューリップの歌」もドレミファソラシドと言うスケール、これはメジャースケールだが、モードで言えばアイオニアンスケールになり、ジャズ風に言えばチューリップの歌はアイオニアンスケールを使ってメロディが書かれているとなるのだ。 そもそもジャズの世界では(ジャズ史には詳しくないが、ない知識を振り絞って)、モード奏法が流行する前には全てをコードに頼る演奏をしていた。初めにコードありき、コードの響きに従ったアドリブが必要だったのだ。コードが細分化し、複雑になればなる程、アドリブもそのコードに縛られて複雑化していく。 これを嫌ったのがマイルス・デイビスで、そんなコード毎に音を考えていたのでは自由にアドリブが出来ない。コードなんて無視して1つの音階で演ろうじゃないか、そこでモードが利用されるようになったのだ。 それまでのジャズは、例えばCメジャーの曲ならCmaj7、Dm7、Em7、Fmaj7、G7、Am7、Bm7−5と言うコードが基本的に使われるが(これにaugやdim7も加わるが)、それだけでなく1小節に2つ〜4つもコードを当てはめ、テンションノートも色々と付加される。 3コードが基本のブルースでも12小節の中に15個くらいのコードが配置されてしまう。1度この15個バージョンのジャズブルースの譜面を見た事があるが、これがブルースだなんて誰が思うかと言うくらい複雑怪奇であった。 この頃のジャズは複雑に変化するコードに対応しながらアドリブソロを取る必要があり、コード毎に使う音が全く違うと言ってもいいくらいだろう。頭が悪かったらとてもじゃないが出来ない芸当である。 マイルス・デイビスはそういう時代に揉まれていたから、が物覚えが悪かった事はないだろうが、コードなんてうざったい、要らん!、と思ったのは確かなようで、取り合えずベースに延々と1つのスケール内でラインを弾かせちゃって、アドリブもスケール1個だけで弾いても問題ないだろう?、これだったらコード進行を頭で追わずストレス無しに思いっきりアドリブ出来るぜ!、と判断したのだろう。 ジョン・コルトレーンと言うサックスプレーヤーはモード奏法が確立されるまで、あまり出来の宜しいプレーヤーではなく、モード奏法を利用するようになって、頭角を現したそうだ。彼はきっとコード進行を覚えるのが苦手だったに違いない。 そう言えばサックスやトランペットと言った管楽器はコードが弾けない。リズム楽器にはなれないリード楽器である(ビッグバンドのように複数のプレーヤーによって和音を出せるが)。だから管楽器プレーヤーと言うのはピアニストやギタリストよりもコードの概念が薄く、コード、コード進行を覚えるのは苦手だったのかもしれない。 ジャズの場合、メジャーコードではアイオニアンスケールだけでなく、ミクソリディアンスケールやリディアンスケールが使われる事が多い。マイルス・デイビスがモード奏法(モード奏法を書くから難しく感じるのかも、単に「あるスケールを利用した奏法」と理解しよう)を開花させたMilestonseと言う曲のアドリブ部分はジャズに詳しくないオレでも判るくらいの完璧なるミクソリディアンスケールだ。 同じくマイナーキーでもエオリアンスケール(ナチュラルマイナースケール)の他に、ドリアンスケール、フリジアンスケールが使われる事が多くなる。モード奏法のバイエル、練習曲とも言えるSo WhatではDm7とE♭m7(この曲はコードと言う概念すらないのかもしれないが、便宜上そうなる筈)、メリハリを付ける為に半音上がったり下がったりするだけのコード進行のない曲。これはそれぞれDドリアン、E♭ドリアンスケール中心に使われている(ところどころエオリアンスケールの音やパッシングノートとしてクロマチックスケールも入っているようだ)。 勿論、全くコード進行がないジャズばかりってのも嫌気が差し、従来のようにコード進行を持つ曲も存在し(ジャズの場合、曲の半数以上はブルースなのだからむしろその方が遥かに多いのではなかろうか)、マイルス・デイビス=モード奏法だけと考えるのは間違っている。 とにかくモード奏法と言う1つの概念があり、「コード進行を無視して(コード進行そのものがなく)スケールで弾き倒す、コード進行があっても1つのコード内では使うスケールも1つ」なのである。 だったらロックやブルースと同じじゃないか。そう、同じなのだ。またロックでも曲の中には1つのスケールでは弾かない事だってあるし、コード進行にがんじがらめにされているギターソロだって数多い。 だからドリアンスケールもミクソリディアンスケールもリディアンスケールもモードの一種なんて考えずに、メジャースケールやナチュラルマイナーと同じく、用途に合わせて使い分ける只のスケールだと思っていた方がいい。 曲によってナチュラルマイナーじゃなくドリアンスケールを使おうとか、メジャースケールだとあまりにも明るくなり過ぎるから、ちょっと泥臭くなるミクソリディアンを使おう、ちょっと民族音階っぽくなるリディアンスケールを使おうか、って程度の問題である(厳密には間違った解釈だが、こう思った方が簡単だ)。 勿論、各コードに対応する7つのモードはそれぞれ1つのスケールであるから、幾ら簡単だと言っても結局は暗記を必要とするので、物覚えが悪い人にはいずれにせよ厄介なのかもしれないし、どこかで述べたが、このコードの時はこの音は使わない方がいいですよ、と言うアボイドノートが存在するので(どんなスケールにもあるが)、結局はコード進行を覚えていないと、とんちんかんな演奏になる。 モードを知る、言い換えると複数のスケールを知る、と言う事は多彩な表現力に繋がる。マイナーコード(キー)にて、ナチュラルマイナースケールしか知らない人と、ハーモニックマイナースケールをメロディックマイナースケールも知っている人ではアドリブの表現に大きく違いが出る。 これと一緒でメジャーコード(キー)でメジャースケールしか使えない人間と、ミクソリディアンスケール、リディアンスケールも知っている人間とでは互いが同等のテクニックを持っていれば、当然後者に軍配は上がるだろう。 まだ良く判らんと言う人。例えばCm7とCm6が1小節毎に繰り返される(これはコード進行ではない、Cmと言う1つのコードにテンションが付加するだけ、コードクリシェと言う)、ベースはド、ミ♭、ソ、シ♭だけでラインが構成され、これが延々と続く、そんな曲があったとする。
そんな曲あるのか?・・・。腐る程ある!。ジョー・サトリアーニのCool#9は基本はCm6だけであるし、彼の曲はこの手の基本的なコードは1つと言うのが存在するし、渡辺香津美の最高傑作アルバム「MOBO」でも半数の曲がこの手のワンコード、コードクリシェ系の曲だ。ロックインストの始祖、ジェフ・ベックもこの手の曲が多い。 これでCエオリアンスケール(Cナチュラルマイナースケール)を使うとあまりにも普通過ぎるから、Cエオリアンスケールの第6音を#させたCドリアンスケールを使う。これであなたはCドリアンスケールを使ってマイルス・デイビスっぽいモード奏法を行っている事になる。 Cドリアンスケールだと考えずにナチュラルマイナースケールの6番目の音を#させただけと考えて欲しい。たったこれだけでナチュラルマイナースケールよりも泥臭いフレーズを表現出来るのだ。 そう言えばレッド・ツェッペリンの「IV」の中のMisty Mountaion Hopと言う曲。サビの部分だけD〜Gと言うコード進行が見られるのだが、他はひたすらA7。ここで普通にZEPっぽく弾くとAメジャーペンタトニックスケールを使う事になるが、ここでのジミー・ペイジはAミクソリディアンスケールを使っている。 なんだよぉ〜ZEPもモード?、ミクソリディアンかよぉ〜と溜息を吐いたり、A7コードはメジャーコードなんだからAメジャースケールを使えばいいじゃないか!、と短絡的には思ってはならないのだ。コードのおさらいにもなるがA7の7とは♭7が使われている。 メジャースケールの第7音はナチュラルな第7音のであるから7thコードには全く合わない音となる(メジャースケールが使えるのはmaj7thコードだ)。ここは意識して第7音がフラットしているスケールを持つミクソリディアンスケールを使わなくてはならない(もしくはリディアンフラット7スケール)。つまりこの曲でメジャーペンタトニック以外でギターソロを弾くにはモードを使わざるを得ないのである。 ZEPの曲でモードが使えるのは結構ある。Immigrant Songもその1つで、この曲、F#mがキーだと思っている人が多いと思うが、Aと解釈してもいいし、Eと解釈してもいい。 ライブではジミー・ペイジはAメジャーペンタトニックスケール+αでギターソロを弾いているっぽいが、キーがEであるとするとこの曲はF#ドリアンスケールが使える。そしてAメジャーペンタトニックスケールの音は全てF#ドリアンスケールに含まれているので、ジミー・ペイジとほとんど同じ演奏が可能になる。 Black Dog、この曲のギターソロ部分はA7。本人はAメジャーペンタトニックスケールとAブルースペンタトニックスケールを混ぜて使っているようだが、AミクソリディアンスケールかAリディアンフラット7スケールが使える。 まぁ初心者は二兎追う者は一兎も得ず、なることわざにあるように、いきなりあれもこれも覚えようとしても身にならないかもしれないので、まずはロックでは基本である、メジャースケール(アイオニアンスケール)、ナチュラルマイナースケール(エオリアンスケール)、メジャーペンタトニックスケール、マイナーペンタトニックスケール(ブルースペンタトニックスケール)の4つをまず完全に頭に叩き込んで、その後に他のモードスケールを覚えるのが順当だろう。
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