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リニューアルレッスン |
2008.06.05 |
テーマメロディとコードバッキングをこなせたら、後はアドリブするだけだ。この曲はアレンジによって、テーマ部分と同じく、Aメロ、Bメロが出てくるタイプもあるが、オリジナルもそうだし、大半はAメロ部だけ、つまりEm7 - Bm7と言うコードだけで進行していく。 前話の最後にこの曲のキーはEmで、Bメロで平行調のGに転調すると書いたが、アドリブするに当たっては、ここはEドリアンを使うのが一般的である。勿論Eマイナーペンタトニックスケールでも弾けるが、ハードロック風にアレンジされるのならまだしも、ジャズ曲をマイナーペンタだけで弾くってのはちょっとカッコ悪い。 そもそもこの曲はEドリアンにb5thが加えたものがAメロ部で使われているのだから、テーマメロディよりも音数が少ないマイナーペンタだけを使うのは如何なものだろうか?。まだマイナーペンタしか覚えていない人は、これを機にドリアンを覚えよう。 ドリアンに関しては新28話、新29話で復習して頂きたい。とにかくAメロ部分と同じく、ドリアンにb5thを加えたスケールを猛勉強しよう。 と・・・、これで終わっちゃうのもなんともアホらしい。そこでだ。アドリブ部分、ここは1小節中の後ろの2拍ではBm7が使われている。そこで、Eドリアンの他にBドリアンが使えるのが判ると思う。神経質になるのなら、最初の3拍をEドリアン、残りの2拍をBドリアン、それを使い分ける事だが、1小節の中でスケールを使い分けるのはちょっと難しいと思う。 ジャズの特徴は?、ジャズらしいアドリブ、フレーズとは?、その問いに対する答えは簡単だ。「如何に普通でないフレーズを、他人の異なるフレーズを繰り出すか」である。Take FiveではEドリアンを使う、これが普通な訳だから、Eドリアンの他にところどころでBドリアンを使えば、普通じゃなくなるのである。
Eドリアンの構成音
Bドリアンの構成音 ご覧の通り、ほとんど同じ音が使われている。異なるのはEドリアンがキーをEとした時、3番目の音がb3rdのG音になるのに対して、Bドリアンでは(キーがEとすると)、ナチュラルの3rd音のAbが使われる点。要するにBm7が鳴っている時にAbを使う分には問題はないが、Em7が鳴っている時にAbを使うと、マイナーコードにメジャー音が使われてしまうので、違和感を持つ。 でもそこがミソだと思うのだ。まず速いパッセージでの経過音の場合、ぶっちゃけちゃうと、どんな音を使っても、つまり半音をずらずらと並べるクロマチックスケールで弾いても気にならないし、仮にEm7部分で違和感のあるナチュラルの3rd音のAbをロングトーンで伸ばしても、すぐにBm7と言う音が鳴るのだから、ある意味、コードに対するフレーズの先食いとなり、如何にもジャズらしくなってくる。 このBドリアンは言い換えるとEミクソリディアンになる。Em7をメジャー化しE7と仮定するのと同じ事なのだ。Em7でE7のスケールを使う・・・。物凄く違和感があると思うが、案外合うのだ。 例えばオレは同じモード系の曲でハービー・ハンコックの曲でCantaloupe Islandと言う曲がある(詳細と音源は新99話と、エッセイな日々363話)。コード進行はFm7 - Db7 - Dm7 - Fm7となり、基本は□7ではミクソリディアン、□m7ではドリアンなのだが、Dm7でミクソリディアンを使う事が多い。これはDm7をD7にしちゃっているのだ(バックで鳴っているのはあくまでもDm7)。 次に使えるスケールとしては、マイナーペンタトニックスケールの2度上ずらし、5度上ずらしである。
Eドリアンの構成音
F#マイナーペンタトニックスケールの構成音(2度上ずらしのマイナーペンタ)
Bマイナーペンタトニックスケールの構成音(5度上ずらしのマイナーペンタ) おっと?、F#マイナーペンタ、Bマイナーペンタの構成音、全てがEドリアンに含まれている。これだとジャズ特有のアウトフレーズが弾けないし、そもそも意味がないのでは?、そう感じるかと思う。確かにアウトノートにはならないが、Em7が鳴っている時に、F#マイナーペンタ、Bマイナーペンタとして、フレーズを構成する事で、Eドリアンではあまり利用されないフレーズを簡単に生み出す事が出来るのだ。 例えばG音と言うのはEドリアンの3番目の音、b3rd音になる。この音を使う事でマイナー感を出せるようになる。F#マイナーペンタとBマイナーペンタにはこのG音がない。だから、コード感が希薄のフレーズが生まれる。コード感が希薄であればある程、フレーズは浮遊し、アウトフレーズっぽい響きになるのだ。 また反対にF#マイナーペンタとBマイナーペンタでそれぞれのコード、F#m7とBm7と言うコードトーンでフレーズを構成する事で、Em7が鳴っているのに、異なるコードトーンが鳴るのだから、これも人間の耳いはアウトした風なフレーズになってくれるのだ。
F#マイナーペンタでF#mのコードトーン
BマイナーペンタでBmのコードトーン 上2つはEドリアンの中の音であるが、果たして、Eドリアンと言うスケールを用いて、このようなフレーズを繰り出せるであろうか?。やはり様々なコードトーン、F#マイナーペンタ、Bマイナーペンタを意識する事で、この手のフレーズが生まれるのだと思う。 但し、「なるほど2度上で弾くのか・・・」と短絡的に考えて、「Eの時12フレットからの第1ポジションだからF#の14フレットからのマイナーペンタを弾けば良いんだ」では情けない。勿論、そう考えても悪くはないが、もう一歩踏み込んで、F#マイナーペンタをEの12フレットからのポジションで考えてみよう。
12フレットはF#マイナーペンタの第5ポジション あくまでもTake Fiveを弾きこなすにはEドリアンが前提なのだから、F#マイナーペンタの第5ポジション、b7th音(F#マイナーペンタのb7th音はEドリアンの1st音である)のEから始まるF#マイナーペンタを弾く感覚で弾くのが良いと思う。 F#マイナーペンタの第1ポジションを利用するのだったら、同じくb7th音を中心としたフレーズを組み立てると良いだろう。
14フレットはF#マイナーペンタの第1ポジション 5度上のBマイナーペンタを使う場合でも12フレットのポジションを意識してみよう。
12フレットはBマイナーペンタの第4ポジション もう1度書こう。2度上、5度上ずらし(Take FiveならF#とB)のマイナーペンタを使う場合、元のスケールがEドリアンである場合、両者ともその元のドリアン内の音しか使われない。アウトフレーズが醍醐味のジャズなのだから、F#、Bマイナーペンタを使っても全てオンノートになる。だから一見意味が無さそうに思える。 しかし、ミソはEドリアンの全ての音を使わず、しかもEm7が鳴っている時にF#m7やBm7のコードトーンを使う事で、Eドリアンとして弾いていた時には思いつかないフレーズを繰り出せるのだ。実際はオンノートなのだが、Eドリアンとしてのフレーズではないから、アウトしているように聴こえるのである。 Eドリアンにb5thを加えただけのフレーズでもこのようなユニークなのものある。単に4th, b5th, 5thとクロマチックフレーズを作るだけでなく、通常4thや5th音を使うところを、b5thの1音で代用してしまう。
Eドリアンでb5th音を意識して・・・ 弾いてみると判ると思うが、4th、5th音でなく、b5th音を絡める事で、コード感が希薄になるし、さも半音下にずれたフレーズを使っているかの感覚になってくる。勿論、耳で聴いていても半音ずれている感覚を持つ事も出来る。 ジャズではマイナー系のコードではドリアンではなく、メロディックマイナースケールを使う事も多いらしい。多くのスケール本にはメロディックマイナーの使い方は上昇はメロディックマイナーを使い、下降フレーズではナチュラルマイナーに戻せと書いてあるが、余程のしっかりとした構成の楽曲でない限り、無視して良い。上昇、下降ともメロディックマイナーを使いまくろう。
Eメロディックマイナースケールの構成音 メロディックマイナーと言うスケールはドリアンの第7音を半音上げてナチュラルの7th、D音をEbにするだけである。これはEメジャースケールの第3音のAbを半音下げてGにしたスケールとも言い換える事が出来、マイナースケールの癖して、やたらにメジャーっぽい。 だから7th音がナチュラルになると、その前の6th音と絡めると、かなり気持ち悪いフレーズになってくれる。だから、このスケールは使い辛い、耳障りだと言うも多いと思う。オレもこれを使い出した事はやたらに気持ち悪かった。が・・・、人間は慣れるのだ・・・。最近では意図的に使う事が多い。 またこれぞジャズってなスケールとして、Em7をIIm7と解釈する、ここまでが上の解説だが、ここを細分化する。細分化する常套手段はII-Vである。よってEm7のところをEm7 - A7と言う仮のコード進行を作ってしまう。勿論、ここでA7だからとAミクソリディアンを使ってもこれはEドリアンと同じ構成音だから面白味がない。 そこでA7を裏コードであるEb7に変えてしまう。つまりEm7 - Eb7と言う半音下がりのコード進行にしてしまうのだ。となるとEbのドミナント系のスケールの多くにアウトノートが含まれ、アウトフレーズを作れるようになるのだ。ではこの時にEbオルタードスケールを使ったとしよう。
Ebオルタードの構成音 おやおや?、これはEメロディックマイナースケールと同じではないか。単にEメロディックマイナースケールの第7音からスタートしたスケールだ!。そう、その通りなのだ。Em7の時にEドリアンでなく、Eメロディックマイナーを使う、使えると言うのはII-V可した上で、さらにV部分のコードに裏コードを使った、これを想定しての事なのだ。 この他、Ebコンディミ、これは言い換えるとEディミニッシュスケールに当たり、本来ならばEdimと言うコードに使うスケールだが、マイナーの響きがあるので、Em7にEディミニッシュスケール(Ebコンディミ)を使うのも間違いではなく、オレはこれを使うのが好きだったりする。 またEm7であってもEコンディミも使える。いや、その前にEm7をIIIm7と仮定すると使われるスケールはドリアンでなくフリジアンになる。上のEbオルタード(Eメロディックマイナー)を使うよりも、余程ストレートだ。そしてナチュラルマイナースケールの2nd音がフラットしたのがフリジアンとなる。
フリジアンを数字で表す
Eフリジアンの構成音 このようにEフリジアンはCメジャースケールと同じになる。Em7でこれを使う時のポイントは当たり前にb2nd音だ。ぶっちゃけちゃうとオンノートである癖にEm7の響きには合わない。だからメロディを大切にするようなフレーズを作る場合は、確実にEm7時にEフリジアンを使うとおかしくなる。 Take FiveはBm7と言うコードも入ってくる。上述した通り、Em7 - Bm7と言うコード進行が合った場合、一般にはIIm7-VIm7と考えるべきで、キーはやはりDなのだ。だからDメジャースケールで弾くところを全音下げてCメジャースケールで弾くのだから、音はアウトする。そしてアウトする音がb2ndとb6thなのだ。 しかし理論は課題解釈したって構わないし、特にBm7が入ろうが基本はEm7のワンコードなのだからEフリジアンを使っても、先に述べた通り、メロディアスなフレーズを作らない限り(特にメカニカルなフレーズで押し通す場合)誰も文句は言わないし、言わせない。 と言う事でEコンディミに繋がる。
Eコンディミを数字で表す Eフリジアンと構成は似ているし、6th音は元々Eドリアンに含まれている。要するにEm7時にEコンディミを使う時、完全にアウトするのはナチュラルの3rd音だけ。しかも運が良い事にTake FiveではBm7と言うコードも鳴るので、Eからの3rd音であるAb音はBからの6th音になり、Bm7時にはBドリアンを、そう解釈すれば、このAb音も、100%アウトするとも言い切れない。 このように微妙な立場にある音ってのがジャズ、いや、ジャズ以外でもワンコード物の音楽には使える、キーポイントになる音にもなってくれるのだ。ほとんどの人、特にロック系のギタリストはマイナーコードが鳴っているのにナチュラルの3rd音なんて使わないだろうし、もっと言えば、ナチュラルの3rd音なんてご法度、使わないのでなく、使ってはならないのである。でもそこであえて利用する事で、(フレーズの良し悪し、好き嫌いはあれ)オンリーワンなギタリストになれるのだと思う。 このようなEm7の一発のアドリブのところをEマイナーペンタ、Eドリアン+b5th、F#マイナーペンタ、Bマイナーペンタ、Eメロディックマイナー(Ebオルタード)、Eディミニッシュ(Ebコンディミ)、Eフリジアン、Eコンディミ、また今回説明していないが、当然Eナチュラルマイナーだって使って良いし、裏コードに当たるEbミクソリディアンも使えちゃう。 文章だと判り辛いかな?、纏めてみよう。
○基本スケール
○Eドリアンの応用として
○Eドリアンの代わりに
○Em7をIIm7でなく、IIIm7やVIm7と解釈すると・・・
○Take FiveはEm7 - Bm7と言う流れだからBm7のワンコードと考える
○Em7をIIm7と解釈し、I7としてA7を仮定し、それに裏コードのEb7として
Ebに対するドミナント系スケールが使える
○Em7をメジャー化してE7と解釈するとEに対するドミナント系スケールが使える
○E7の裏コードのBb7と解釈し、Bbに対するドミナント系スケールが使える これだけ解釈があるのだから(他にもEホールトーンとかも頑張れば使えるし、Bm7を中心に考えればさらに選択肢は広がる)も同じ構成のアドリブソロなんて何度も繰り出せないと言っても過言ではなく、これぞアドリブなんてフレーズも出てくるだろう。スケールの練習にもなるし、ドミナントモーション、セカンダリードミナントと言うコード進行を学べるし、アウトフレーズも作れる、Take Five、単純ながらして面白い曲であろう。 まずは一般的なEドリアンを使って曲を楽しみながらアドリブ練習をし、それに慣れたら、今度はb5th音を加えてみる。この音を1つ加えただけで、フレーズに幅が広がると思う。平行して、Eドリアンを意識しつつ、F#マイナーペンタ、Bマイナーペンタでそれぞれのコードトーンを弾く練習もしよう。さらにはBドリアンを利用し、Eドリアンとの相違を見極める。 ここまででかなりかっちょいいフレーズを作れる筈だが、さらにワンステップアップとして、よりジャズっぽくする為に、EメロディックマイナーやEディミニッシュスケール、Eコンディミ、Eフリジアン等も混ぜてみよう。その時、初めてオンリーワンなアドリブソロを弾ける筈だ。 最後に、これは今のオレもそうなのだが、無理にかっこいいフレーズを作ろうとせずに、まずは上記のスケールを指に覚えこませ、容易にスイッチ出来るようにするのと、2つ以上のスケールを混在させ、それをあたかも経過音であるかのように弾ける練習、これをまずした方が良いだろう。指が慣れないうちは、頭ばかり大きくなって、良いフレーズを作ろうなんてしない方が良いと思う。 と言う事で練習用のカラオケ用のmidiを用意した。
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