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リニューアルレッスン |
2008.06.05 |
Take Five、ロック系ギタリストにはきっと縁のない曲だろう。何せこれは本格的なジャズ曲だからだ。しかも5拍子と言う弾き辛い構成だ。しかし、この曲はスケールの練習に最適であり、是非とも、練習曲として、ロック系のギタリストにも弾いて貰いたい曲でもある。 ギターな日々442話とギターな日々444話で、稚拙ながらオレの演奏を聴いて頂きたい。10年くらい前にTVCFでも使われていた曲だから皆さんもきっとご存知だろう。オリジナルはデイヴ・ブルーベック・カルテットである。
まずはテーマ部分のメロディとコードを理解しなくちゃならない。テーマはAメロとBメロに分かれ、構成としてはA-B-A形式になる。下に基本となる譜面を示そう。
AメロはEドリアンにb5th音が加わっただけのフレーズだ。12フレットからの第1ポジションでも弾けるが、弾き易さを考えると、上譜面のように第5ポジションを利用した方が良いだろう。 この時、単にタブ譜だけを追っただけでは弾いた事にはならない。このAメロは典型的なドリアン+b5thのスケールで作られているのだから、ドリアンの何の音を使っているか、それを意識しながら弾く事をお勧めする。 Bメロはコードに対するコードトーン中心に構成されていて、スケールと言う概念ではフレーズは作られていないので、これは指にもう覚え込ませるしかなかろう。勿論、慣れたらAメロと同じく、どのコードトーンが使われているか、それを意識する事を忘れてはならない。 バッキングはAメロでは1小節の中で3拍2拍でEm7とBm7が交互する。大雑把に言えばEm7のワンコードと言えよう。そしてBメロ部は躍動感のあるコード進行に変わっていく。基本はC6 - Bm7 - Am7 - Gmaj7 - C6 - Bm7 - Am7 - B7となり、その後再びAメロが続く(C6をCmaj7としてもOK)。 さて、問題はコードバッキング。今、示した通りに弾いても全く問題はないが、あまりにも当たり前過ぎちゃう。ジャズだから複雑化するって訳じゃないが、もうちょっと細分化しても良いと思う。 コードの細分化で一般的なのはドミナントモーションやセカンダリードミナントモーションと呼ばれるもの。詳しくは新76話、新78話、新79話、新80話を見て頂こう。 要するにあるコード、例えばC6、これをトニックコードに見立て、コードの性質を利用して、C6に行き着く前にドミナントコードであるG7を挟んでしまおうって事なのだ。 Bメロの最後のコードがB7になっている。これがそもそもドミナントモーションなのだ。Aメロに戻る際、トニックコードのEm7に対するドミナントコードがB7なのである。
C6をトニックコードとするとドミナントコードはG7 だからBメロ部分を1つ1つ細分化すると、C6を弾く前にG7を鳴らす、同じくBm7の前にはF#7、Am7の前にE7、Gmaj7の前にD7を挿入すれば良い。さらにドミナントモーション用のセブンスコードにテンションノートを加えると、よりジャズっぽくなる。今回は#9thとb9thの音を加えてみた。
Bメロのコードをジャズっぽくしてみた
Aメロもちょっとだけいじくってみよう。Em7 - Bm7と言うコード、これはそのままだが、Em7の押さえる場所を変更すると、ぐっと低音がしっかりとし、落ち着いた雰囲気になる(この押さえ、正しくはEm7でなくEmとなるが・・・)。
コードと言うと6弦トニックのフォーム、5弦トニックのフォームの2種が主に使われるが、ジャズやフュージョンの場合、その他のフォームも多く使われる。下はEm系のコードだ。実際に弾いて確かめてみよう。
また3小節目のBm7を、5弦トニックの押さえで弾くとさらに音域が低くなるし、左手の移動も少なくなるので良いかもしれない。
Bメロの最初のコードであるC6、これは言い換えるとAm7になる。両者の構成音を見てみよう。
C6の構成音
Am7の構成音 並びが違うだけで全く一緒でしょう?。C6とAm7の関係はそれぞれ代理コードになるのだ。C6の代理コードはAm7であり、Am7の代理コードはC6なのだ。Take Fiveの場合、演者によってここの解釈が異なり、Bメロ部は音が1つずつ下がった感じが良いとC6で演奏する人もいるし、6弦5フレットをトニックとするAm7を使う人もいるのだ。 ついでなのでC6でなくCmaj7は何に変化するか、これも書いておこう。
Cmaj7の構成音 これはAm7(9)で代用する事が出来る。
Am7(9)の構成音 Cmaj7にA音を加えればAm7(9)になるし、Am7(9)からA音を排除すればCmaj7になる。よってCmaj7とAm7はやはり代理コードの関係であり、ルート音を何にするかでコード名が変わるだけで、ほぼ同じ扱いを受けると考えても良いだろう。 スケールを考えてみよう。CメジャースケールとAナチュラルマイナースケールは平行調と呼ばれ、同じ構成音になる。だから当然コードだってCとAmは同じく扱われるのだ。 C6やCmaj7の代わりにAm7を使う場合、当然セカンダリードミナントが変化する。C6の場合はG7であるが、Am7の場合はE7になるのだ。 そしてAm7を使う時、次のBm7をGmaj7にする手口もある(これは上述のCとAmと言ったような平行調の関係ではない)。
Bm7の構成音
Gmaj7の構成音 違いはA音とG音だけ。Bm7の代理コードはGmaj7であり、Gmaj7の代理コードはBm7、これが成立する(Gmaj7をトニックのIとするとBm7はIIIとなり、Imaj7とIIIm7が代理コードの関係になるのだ、CならばEmとなる)。 そしてこれもBm7をGmaj7とするのだから、セカンダリードミナントもF#7から、D7に変化する。さらに次のAm7に移行する時、本来ならセカンダリードミナントとしてE7を使うところをマイナー化してEm7にしちゃう。こうするとさらにぐっと落ち着くのだ。
Bメロの手前から・・・
Bメロにどのコードを当てはめるか、これは各自の自由だ。しかし、ベース、ピアノと言った他のリズム隊との相談にもなろう。ベースがCからスタートするラインで弾くのならやっぱりAm7でなくC6が適当だと思う。ちなみにうちのバンドでは、最後のパターンを使う事が多い。 Take Fiveを自分のものにするには、テーマメロディと上に示した3つのパターンのコードバッキング、これを完璧に弾ける事、これが先決であるが、テーマメロディとコードバッキングをこなせたら、70%以上はクリアしたと言っても良いのだ。 Bメロは代理コードやドミナントモーション、セカンダリードミナントの復習にもなる。いい加減に左手のフォームを記憶するだけでコードを弾くのでなく、何故このコードが使われるのか、頭で考えながら弾く練習をしよう!。 さて、ここで復習してみよう。この曲のキーは何か?、それを考えるのだ。 Aメロ部はEm7とBm7が交互に繰り返され、冒頭で書いた通り、これはEm7のワンコードと考えて良い。調性音楽として捉えるのなら、キーはEmだ。しかし、モード的に考えると、ここはドリアンと言うスケールが使われるのだから、ドリアンはIIm7に対するスケール、よって、モードとして捉えると、AメロのキーはDとなるのだ。まぁこれはあくまでも屁理屈で、キーはEmだと言っても全く間違いではない。むしろBメロのコード進行を見ると、キーはEmであると言った方が正しい。 ではそのBメロ、これをどう考えるか・・・。基本はC6、もしくはCmaj7からスタートするからキーがCになる、そう考えると間違いなのだ。ここでのC6、Cmaj7はIVに当たり、実はキーはGなのだ。C6 - Bm7 - Am7 - Gmaj7と言う流れはIV6 - III7m - IIm7 - Imaj7と言うコード進行になる。 そしてGとEmは平行調の関係にあるのが判るでしょう?。つまり、この曲はBメロを知ると、モード曲ではなく、調性音楽になり、とAメロ部のキーはEmであり、Bメロで平行調のGに転調するのである。
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