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リニューアルレッスン |
2008.01.02 |
アドリブ、もしくはインプロヴィゼーション、日本語にすれば即興演奏だ。一般的にはその場でフレーズを作って演奏する事を指すが、実はこれは間違い。まぁ表現的なものであるが、これを間違う事で、アドリブが難しいと思う初心者ギタリストもいるだろう。 「その場でフレーズを作る」、これが微妙に違うのだ。音楽の神様が降臨し、その場であっと驚くフレーズを弾いちゃう事も間々ある。でも多くは「その場で弾き慣れたフレーズを繰り出す」のがアドリブだ。つまりだ、アドリブの際、フレーズは作るものでなく、今まで自分が培ってきたテクニック、理論、それをひっくるめて、脳味噌や指が覚えている短いフレーズを1つ1つ引き出しから取り出し、切った張ったしているに過ぎないのである。 料理だってそうでしょう?。料理の知識がない人は幾ら器用でも美味しい料理は作れない。どの具材を利用するか、牛肉にするべきか、豚肉か、鶏肉か・・・、また塩やしょうゆ、砂糖などの調味料の匙加減はそれまでの経験によって決められる。 料理本のレシピを見ながら料理を作る、これはいわゆる音楽で言う完コピーって事になる。そうでなく、かつて記憶した料理本の内容や自分の舌の記憶を頼りに料理を作るのがアドリブだ。料理の天才なら1度レストランで味わった料理をすぐさま再現出来るだろうが、凡人にはそんな事、逆立ちしたって出来っこない。何度も通い、そこのシェフと知り合いになり、調理法を教わって初めてその料理を作れる。アドリブとはそういうものなのだ。 アドリブは即興、その場で考えながら弾く事だが、その場でフレーズを作り出すのでなく、その場で過去に弾いたフレーズをどう組み合わせるかを考える事なのだ。まずこれを理解しなくちゃならない。 誰もが認めるような優れたアドリブを弾くミュージシャンはテクニック、理論に加えて音楽を作る「センス」に大きく比重がある。それが優れていればいる程、音楽の神様が頻繁に降臨する。 しかし、そこそこのアドリブを演奏する程度ならセンス、音楽の神様は必要としない。上述した通り、アドリブとは過去に弾いたフレーズを引き出しから取り出し切った張ったするだけで良いのだから。そしてそれを今度は「経験」と表現する。「経験が豊かだ」なる言葉は、引き出しに多数のフレーズを構成する細かなパーツが存在している事を指す。 パーツや個々のフレーズとは「指癖」と言う言葉に置き換えられる。「指癖を作ると似たようなフレーズしか弾かなくなるから、なるべく指癖を付けないようにしている」、良くこんな妙な表現をする人がいる。言葉は難しい。言いたい事は判るが、正しくは「少ない指癖だと似たようなフレーズしか弾かなくなるから、多数の指癖を身に付ける」である。 10個の指癖しかないギタリストよりも100個の指癖を持つギタリストの方が表現は豊かになる。だから指癖を付けないのでなく、その反対で、多くの指癖を作り出す、そう考えるようにしよう。 そして皆、口を揃えてこう言う。「アドリブ上達の秘訣はコピーしかない」。初心者は自分の引き出しの中が空っぽだから、まずは他人、プロのギタリストのフレーズを模倣し、それを引き出しに入れていこう、こういう事になる。これも間違いではない。でも、言葉が足りないのだ。 本サイトはマイナーペンタトニックスケールとディープ・パープルのSmoke On The Water、リッチー・ブラックモアが弾くギターソロ程度なら何となくコピー出来る、そういう人に向けて発信しているが、ではSmoke On The Waterを弾けたからアドリブが弾けるようになるのか?、決してそうはならないだろう。 Smoke On The Waterの24小節のギターソロをどう捉えるかである。24小節全体を1つの流れとして記憶していると、リッチーのフレーズを弾けてもそれをアドリブに活かす事は難しい。24小節からフレーズを構成する要素であるパーツを取り出す事でアドリブを可能とする。 例えばSmoke〜の10、11、12小節目の譜面を下に示す。
この真ん中の11小節目のフレーズ、これを1つのパーツとして考える。このフレーズを他の曲で活かす事が出来て、初めてアドリブを弾けたと言えるのだ。
次のフレーズもパープル好きならBurnの最初のフレーズをシャッフルにしたと判って頂けるだろう。そして20秒からのフレーズ、これが上記譜面をシャッフルビートに変換したもの。その後もSmoke On The Waterから幾つかパクっていて、最後の44秒で、再び上記譜面を1オクターブ高いフレーズとして弾いている。 Smoke On The Waterのリッチーのフレーズを完コピーした、これはあくまでもアドリブをする為の序章に過ぎない。そこからリッチーをフレーズを分解し、自分の引き出しにパーツとして保存する事が大切なのだ。 今回の音源の90%以上のフレーズはSmoke On The Water、Burn、Child In Timeの3曲から頂いているだけだ。オレ独自のフレーズなんてそれぞれのフレーズを繋ぐ為のほんのちょっとした部分のみ。だからこのギターソロにはセンスと言う音楽の神様は介在しない。 勿論、リッチーのフレーズをどの順番で、どう繋げて行くか、これにはセンスが必要かもしれないが、これはセンスでなく、経験さえあれば可能な事。 さて、Smoke On The WaterのキーはGmだが、上の音源はAm-D7と言うコード進行だからキーはGメジャーとなる(利用しているスケールはAマイナーペンタとなる)。まずここに変化があるし、ビートは8ビートでなくシャッフルビートになっている。キーがSmoke〜と同じGmだったら、同じ8ビートやテンポだったら引き出しからパーツとして取り出せるだけでは駄目で、引き出しから取り出す時に自分で加工出来るようにならなくてはいけない。 そう、アドリブとは言い換えると、引き出しに入れている記憶したフレーズ、パーツをどの順番で、どのように加工して取り出すか、となる。単に誰それのフレーズを完コピーした、これだけではアドリブは決して上達しない。完コピーした後が勝負なのである。 色々な人のフレーズをコピーしろ、これの意味は、完コピーしなさいと言う事でなく、自分の力だけでは引き出しは満杯にならないから、他人のフレーズをパクりないさいって事であり、後は、そのフレーズをしっかりと引き出しに格納し(記憶、指癖)、瞬時に取り出す事が出来るようになれば良い。 オレは他人のフレーズを完コピーする才能が皆無だった。もし貴方が、オレのように完コピーが苦手だったり、そもそも完コピーする時間がない、そうであったら、無理に何十小節もコピーする必要は無い。大切なのは、自分がドキッとしたフレーズである。「嗚呼、こういうフレーズを弾きたいな」、そう感じたフレーズだけをパクれば良い。オレは今も尚、このピンポイントコピーしか実践していない。
上は今回紹介した音源の最初のフレーズ、Child In Timeのキメフレーズ部分である。これがカッコイイと思ったから、Child In Timeはここしかコピーしていない。それでも良いのだ。自分がカッコイイと思った1〜4小節程度のフレーズを10、50、100、それをどんどん引き出しに入れていけば、完コピー出来なくてもアドリブ演奏は可能になる。 最後にもう1度書く。アドリブとはその場でフレーズを作り出す事でない。その場で弾き慣れたフレーズを繰り出す事である。
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