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リニューアルレッスン |
2007.12.8 |
前話で、アウトフレーズに関してひとまず終わりと書いたが、どうもまだ書き足りず、アウトフレーズを含め、オルタードスケールの復習をしよう。
Am7-D7-105.mid 上はAm7 - D7と言うコード進行を持つ練習用のmidiデータだ。3桁の数字はテンポを示しているので、自分の技量に合わせてテンポを変えてみよう。 問題はこのコード進行でどのスケール使うかだ。まずはダイアトニックコードの復習をしよう。一般的な調性音楽の場合、コード進行からキーを調べるには□7コードを見ると良い。□7と言うコードネームは7つあるダイアトニックコードの中で1つしかなく、それは5番目のコードとなる。よってD7を5度と考えるとキーコードはGmaj7となる。するとAm7は2度の位置にある事が判り、これはII-V進行、IIm7-V7になっているのが判ってくる。 最初のコードがAm7だからキーはAm、これも間違いではないが、そうなるとハードロッカーは無意識にAナチュラルマイナーを使ってしまうだろう。でもD7に対してはそれが合わなくなる。その場合、D7はDm7でなくてはならないし、D7に対しては知識のないハードロッカーだったら「しょーがねぇや、D7はメジャーペンタにしよう」・・・。これが「無知の成せる技」なのだ。これでは恥ずかしい。 このmidiデータをカラオケにギターを弾くなら、D7はV7、Am7がIIm7、そしてキーはG、だからGメジャースケールを使えばそれだけで弾ける。調性音楽においてII-Vを知る事が大切なのはこういう理由もある。ジャズ的に表現をすると、Am7ではAドリアン、D7ではDミクソリディアンとなるが、GメジャースケールはAドリアンでもありDミクソリディアンでもある。 とは言え、これをいつもGメジャースケールで弾く訳ではない。ロック風に弾くのであれば、両コードともAマイナーペンタトニックスケールで弾くのが最適だろうし、知識の無さから出てきたAm7をAナチュラルマニアー、D7をDメジャーペンタ、これでも実は問題が無かったりもする。 本レッスンは一応は初心者に向けての発信なので、II-Vコード進行でアドリブ練習するなら、次の順でやると良いだろう。
1、Aマイナーペンタトニックスケール ここまでが万人向けのスケールだ。初心者の方は、まずは1から4までをクリアしてから、下へ進もう。 次にコード毎にスケールを替えて弾いた時の事を解説する。要するにV7部分のD7でスケールを替えようと言う話。 D7で使える一般的なスケールは次の通りだ。
Dミクソリディアン(これはAドリアンと同じなので構成音は変化無し) このDリディアンb7thを含め、下のスケールは構成音がGメジャースケールから外れるので、アウトフレーズを作る際に用いられる。リディアンb7thというスケールはミクソリディアンの第4音をシャープ、もしくはリディアンの第7音をフラットさせたもので、チャーチモードではないが、ドリアン、ミクソリディアンの次に覚えておくべきものである。
Dコンディミ 上の4つを覚えたら中級者以上と言えるだろう。これらはそれぞれに数音のアウトノートがあり、どのように弾いてもアウトフレーズを作り出す事が出来る、まさにジャズっぽいスケールだ。さらにD7の裏コードのAb7を代理コードとして使うと、、、
Abメジャーペンタトニックスケール これら使えるようになり、全てアウトフレーズ用だ。つまり、音を外したくないのならばD7ではDミクソリディアンかDメジャーペンタトニックスケールを使うしかない(しつこいけどこれは=Aドリアン=Gメジャースケールだ)。 そして最初のコードAm7では、、、
Aドリアン が利用出来る。アウトフレーズを作る際はメロディックマイナーとハーモニックマイナーを使えば良い。ジャズではドリアンとメロディックマイナーが定番である。 またII-Vと言うコード進行はしばしばVコードだけのワンコードと想定して演奏する事があり、そうなるとAm7が鳴っている時でもD7とその裏コードであるAb7で利用出来るスケールを使うと、自然にアウトフレーズになってくれる。相当にしつこいかと思うが、この時Dミクソリディアンを使うと、Aドリアンと構成音が同じなので、アウトにはならない。 ちょっとだけアウトしたいが、コードを意識しないで楽に演奏をしたい、そういう人にはAメロディックマイナーを使うのが最適だ。と言うのもAメロディックマイナーとDリディアンb7thは構成音が同じだからだ。
Aメロディックマイナーの構成音
Dリディアンb7thの構成音 Am7のところでAメロディックマイナーを使えば、D7になってもそのまま弾いてもDリディアンb7thと同じなので、コードが替わってもスケール変更する必要は無い。勿論、D7だからD音を中心に音を構成した方が良いが、アウトフレーズを作るのなら、その辺は無視しても良いだろう。 「IIm7-V7と言うコード進行があったら、IIm7に対するメロディックマイナーを使えばV7になってもそのまま使える」 そう覚えてこう。
Gメジャースケールの構成音 AメロディックマイナーとGメジャースケールの違いはAがナチュラルかフラットするかであり、この2つ音を使い分ける事により、微妙なアウト感を生んでくれる。 たった2つのコードが鳴っているだけなのに相当の選択肢があるのをご理解頂けたろうか?。だからここまでが理論で、実践となると、今度はギタリストのセンスが物を言うのである。ロックが好きで好きで溜まらない。変なアウトノートなんて使わずにシンプルが大好き!、そんな人はAマイナーペンタトニックだけで弾き切るだろう。これも1つのセンスである。 今回はせっかく前話でオルタードスケールを学んだので、D7部分ではオルタードスケールを使う、そんな練習をすると良いだろう。 次にオルタードスケールの定番中の定番のフレーズをご紹介しよう。多くのギタリストがこの下降フレーズに類似するものを使うので是非、完全な指癖にしてしまおう。
Dオルタードの定番1
Dオルタードの定番2
Abオルタードの定番1
Abオルタードの定番2 ミソはオルタードスケールでb5th音(=#4th)を排除する事だ。オルタードで一番気持ち悪いフレーズの並びと言うのはb5th - b6th - 7thの全音移動で、b5thを排除し、b6thから一気に3rd音に降りると、自然に定番フレーズになる。上の譜面を参考にオクターブ上でも弾けるようにしておくと、いざと言う時に便利だ。 下はDオルタードとAbオルタードの定番1を弾いている。バックのコード音を聴きながら、どこの音が外れているか、特に裏コードのAb7を意識したAbオルタードとDオルタードのニュアンスの違いをチェックすると良いだろう。
Dオルタードの定番3
Dオルタードの定番4 定番3では次のようなポジショニングを取る。
II-VやV-Iと言ったコード進行の場合、定番と言われるオルタードスケールは1小節の中で演奏される事が多く、1オクターブちょっとあれば作れてしまう。よってこのようなポジショニングの方が簡単に弾ける事もある。 下のサンプル音源はかなりいい加減に弾いているが、基本は両コードともAドリアンで、音が外れている部分ではD7のところで、Dオルタード、Abオルタード等を使っている。後はオレの指癖とでも言おうか、定番フレーズを弾くよりも、スケールを意識しないで、オンリーワンな斜めラインの弾きまくりでアウトフレーズを作っている。
Dオルタードでの斜めライン
Aドリアンでの斜めライン
Aメロディックマイナーでの斜めライン
Abオルタードでの斜めライン お判り?。AメロディックマイナーとAbオルタードは同じでしょう?。Aメロディックマイナーを第7音から弾き始めるとAbオルタードになるのだ。そして先日も述べた通り、Aメロディックマイナーの第4音から弾き始めると今度はDリディアンb7thになってくれる。 仮にだ。Aメロディックマイナー、Abオルタード、Dリディアンb7thの関係を知らなかったとすると、これまた「無知の成せる技」で、一生懸命に3つのスケールを覚えようとしてしまう。こうやって音楽理論と一緒に覚えると、効率が良い。 だからこのII-Vと言うコード進行をIIm7に対するメロディックマイナーだけで弾いても、知らないうちにIIメロディックマイナー、VIIオルタード、IVリディアンb7thを使っている事になる。 ただ、「なんだ、II-Vでアウトするにはメロディックマイナーで弾けばいいんだ」と安易に考えず、何度も述べている通り、中心音、主音とも言おうか、それぞれA、Ab、Dだからコードに対して、それを意識するように練習しよう。いずれにせよ、本来のV7であるD7のオルタード、Dオルタードを弾くのが基本なので、それを怠ってはならない。練習では「絶対に楽をしちゃいけない」のだ。 1分38秒くらいから1分50秒くらいまで、これらの斜めラインを組み合わせて一気に弾いている。ドリアンと他のスケールとは半音のずれがあり、それを一気に弾き切る事で、クロマチック風に斜めフレーズを弾いている事になり、かなり気持ち悪いフレーズになっているのが判るかと思う。 ここまで音を外すのもどうかと思うが、それをオンリーワンと捉えるか、センスがないと感じてしまうか、それは個人の自由で、少なくともオレはこのフレーズに関しては、誰も真似が出来ないだろう、もしくは同じフレーズを弾くのは相当に困難を極めると思うので、ポジティブにオンリーワンなフレーズだと考えている。 さて、今回もAドリアンで言うところの第1ポジションと第2ポジションしか使っていない。指板で言えば4フレットから10フレットまでの限定。こう言ったコードによってスケールや利用する音に変化を持たせたり、アウトフレーズの研究をする場合は、第1、第2ポジションだけを使ってある程度突き詰めるても良いかもしれない。 と言うのも、2オクターブ半もあればおおよそのフレーズは作れるからだ。初心者はまずアドリブの練習をする際、フレーズを作る事から初め、それを指癖にして行くのだから、第1、第2ポジションだけでも十分にバンドやセッション等で通用するフレーズを作れると思う。作って作って作りまくって、それでフレーズが尽きて初めて他のポジションで色々と試すのも1つの練習法かもしれない。 勿論、全てのポジション、0〜22フレットまで自由に使いこなすのが(理想ではなく)常識として捉えて欲しい。だから運指練習は全てのポジションで行うようにしよう。 さて、具体的な練習法を示そう。コード進行があり、コード毎にスケールを変更する場合、特に今回のように1小節毎にスケールが変化する場合、幾つかクリアしないとならない事がある。AドリアンとDオルタードで考えみよう。 まず、コードが替わる度にAドリアンとDオルタードを交互に弾く事になるが、その切り替え部分が明らかに「替わったぞ」とわかってしまうようなフレーズは駄目ではないが、流暢に音が繋がってこそ初めてフレーズになるのだから、コードの変化と共に一瞬途切れた感じになってしまってはかっこ悪い。 また今回のようにII-Vがループするような場合、厳密にAm7ではドリアンを、D7ではオルタードを、と使い分ける必要は無い。例えば、、、 Am7 - D7 - Am7 - D7 このように2度のループを1つのループとして考えて、最初の3つ、Am7 - D7 - Am7をワンコード化し、Am7にしちゃう。よって鳴っているコードはAm7 - D7のループだが、ソリストは、、、 Am7 - Am7 - Am7 - D7 このように3小節でAドリアンを使い、4小節目で初めてDオルタードを使う、こういう練習が望ましいだろう。 皆さんは「食う」と言う言葉をご存知だろうか。これは上を例に挙げると、本来4小節のD7でDオルタードにチェンジするのだが、3小節目の途中から、まぁ3拍目か4拍目からDオルタードを弾いちゃう。このように前の小節の途中から弾き始める事を「食う」言う。そうすると当然Am7のところでもDオルタードのスケールが弾かれるので、ここで最初にアウトフレーズになるのだ。 だから言い換えると、 Am7 - Am7 - Am7/D7 - D7 3小節目の中にAm7とD7が入っていると考えて良い。練習に当たっては「食う」にせよ食わないにせよ、しっかりと自分の中でどこでスケールを変更するか、それを考えなくてはならない。そうでないと練習にはならないからだ。コード毎にスケールを替える、上述したが、露骨にスケールが変わったと判るようなアドリブよりも、知らないうちにオルタードになっていて、フレーズがアウトしていた、そういう流れを作る練習なのだ。無論、これはオルタードだけでなく、リディアンb7thやコンディミ等の他のスケールを使う時でも同じだ。 慣れてきたら、フレーズの長さにより、今までAm7でドリアンを使っていた部分でも時折、オルタードや他のスケールを盛り込み、より多くのアウトフレーズを作る練習もしよう。 今後の課題にするつもりだが、ジャズやフュージョンでは下のようなコード進行がある。 Am7 - D7 - Gmaj7 - Bm7/E7 - Am7 - D7 - Gmaj7 - Gmaj7 キーは今回のmidiデータと同じくGで、基本的にGメジャースケールで弾き切れる。フュージョンを演奏するのならそれで問題ないが、ジャズっぽく、より高度に演奏するのなら、やはりコードによってスケールを替えるのが望ましい。しかし、いきなりでは難しい。だから最初の2小節、ここは今回と同じワンコード化でD7にしちゃう。 そして4小節目にBm7とE7が2つ入る。本来、Bm7から次のAm7へ行くところを、E7を入れる事で、次のAm7へ行く為のセカンダリードミナントモーションになる。ここも厳密にはBm7で利用するスケールとE7のスケールを使うわけだが、2拍毎にスケールを替えるのは上級者でも難しい。よってここE7のワンコードにしちゃうする。 5、6小節目は1、2小節目と同じくどちらかにワンコード化すれば、バックのコードは上の通りだが、ソリストは次のようなコードを基にアドリブを組み立てて行く。
1, Am7 - Am7 - Gmaj7 - Bm7 - Am7 - Am7 - Gmaj7 - Gmaj7 そして4、5小節目でBm7とAm7とするならば、モード流に言えばBm7はBフリジアン、Am7はAドリアン、これは両方ともGメジャースケールだから、結果、D7とE7の2つのセブンスコード以外のコードは全てGメジャースケールで弾く事になる。 つまり、コードが複雑であったら、セカンダリードミナントを含め、IIm7-V7部分を見つけ(上ならAm7 - D7と、Bm7 - E7だ)、ここをIIm7もしくはV7のワンコード化にしちゃう。これで複雑だと思われたコード進行でも楽になっていく。 このIIm7-V7をIIm7でワンコード化すると、Aドリアンとなり、イコール、DミクソリディアンでありGメジャースケールだ。これだと何の意味も無いので、Aメロディックマイナーを使うと、よりジャズっぽくなる。同時にそれは中程で書いた通り、Abオルタード、Dリディアンb7thを弾いている事にもなるので、一石二鳥だ。 ジャズをジャズらしく弾きこなすにはハードロッカーからすれば足し算の連続だ。でもこうやって引き算をしてもジャズをジャズらしく弾く事が可能だ。これはハードロッカーにもあり難い話だと思う。そして引き算をしまくった最終形がモードであり、Am7かD7のワンコードにしちゃう訳である。 よってこれを読破したらもう1度、新88話辺りから再読する事をお勧めする。もう1度この項にやってきたら、今度はギターを抱えて、同じく再読しよう。そうやって皆さんがこのループ地獄にはまっている間、オレは次のネタを考えるのであった。
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