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リニューアルレッスン |
2007.11.28 |
では最後に纏めていこう。アウトフレーズの大半は理論で説明出来るのだ。 A、様々なスケールを使う マイナーペンタトニック、ナチュラルマイナー、メジャーペンタトニック、ミクソリディアン、ドリアンと言った一般的なものを使わずに、それ以外のスケールを使うと自然にアウトフレーズになって行く。
□7の構成音
□m7の構成音 1、□7でリディアンb7thスケールを使う
リディアンb7thの構成音 #4thをテンションノートに直すと#11thである。これがアウトノートになるので、この音を絡めたフレーズを作ればそれは全てアウトフレーズになる。 2、□7でオルタードを使う
オルタードスケールの構成音 b2nd、#2nd, #4th, b6thはそれぞれb9th, #9th, #11th, b13thになり、全てがアウトノートだ。よってこのスケールを使えばどんなフレーズでもアウトフレーズになる。容易にアウトフレーズを組み立てられる反面、7音中4音がアウトノートだから、妙なところに着地すると、それがミストーンになるので、弾く時は一気に弾き切るのが良いだろう。
3、□7, □m7でコンビネーションディミニッシュスケールを使う
コンビネーションディミニッシュスケールの構成音 b2nd, #2nd, #4thはそれぞれb9th, #9th, #11thで、□7で使えばがそれらアウトノートになり、□m7で使うとそれに加えて、3rd音がアウトノートだ。3rd音はメジャーコードで利用する音なので、使わない方が無難だとは思うが、b3rdと絡めてのフレーズであればさほど問題はない。 また半音上のディミニッシュコードの構成音である、b2nd, 3rd, 5th, b7thの4音だけを使うと様式美なハードロック、ヘヴィーメタルでも使えるフレーズになる。 4、□7でハーモニックマイナー・パーフェクト5thビロウを使う
hmp5の構成音 b2ndとb6thがそれぞれb9th、b6thでこれがアウトノートになる。これはどう使おうが、誰が使おうが、全てがエキゾチックなサウンドになってくれるので、アウトフレーズ初心者には最適なスケールだ。 5、□m7でメロディックマイナーを使う
メロディックマイナーの構成音 アウトするのは7thのみだが、4thからの4音は全音間隔なので、これを上手く使う事でユニークなアウトフレーズを組み立てられる。反面、バッキングの状態により、全く合わない曲も存在するのも確か。
6、□m7でフリジアンを使う モードの一種、フリジアンも一般的なスケールに入るのだが、ドリアンを使う頻度の方が遥かに多いので、どうしても忘れられがちになってしまう。アウトノートはb9thに当たるb2ndである。
7、□m7でディミニッシュを使う ディミニッシュよりもコンディミを使うのが一般的なようだが、オレは□m7ではディミニッシュを使っても全く問題がないと思っている。b5thと7thがアウトノート、逆を言えばそれ意外はオンノートだから、コンディミと同様に使いやすいスケールだ。メロディックマイナーの代用として考えても良いと思う。 8、□7でホールトーンを使う
ホールトーンの構成音 #4thとb6thがそれぞれ#11th, b13thになるアウトノートだ。全て全音間隔に配置されているので、使いどころを誤るとただのミストーンに聴こえてしまうので難しいスケールだ。しかし、ギター上での音の配置は判りやすく、2〜4拍程度の短いフレーズを速弾くと、浮遊感が出て、アラン・ホールズワースのようなフレーズになってくれる。 B、スケールずらしの理論 アウトノートを使うのならコードに対するスケールから別のコードで使われるべきスケールを使う手法もある。 1、5度上ずらし 何故5度上のスケールが利用出来るかと言うと、例えばGm7やG7のワンコード曲があった時、このGm7、G7をトニックコード(Iコード)に見立て、調性音楽特有のドミナントモーション、V-I、もしくはI-Vと言うコード進行があたかも存在するように演奏する手法があるからだ。 そしてGm7、G7をトニックコードとするとVコードはD7になり、このD7に対するスケールが利用出来るようになるのだ。よってAで解説したDミクソリディアン、Dドリアン、Dリディアンb7th, Dコンディミ、Dオルタード、D-hmp5、Dホールトーン等がGm7やG7で扱えるようになる。 2、半音上ずらし 単に半音ずれるからアウト感を楽しむ、そう覚えているだけでも良いが、これにも理論がある。1のV-Iと言うコード進行の際、VコードはbIIコードに代用できる。例えば下のコードを順に弾いてみて欲しい。
Gmaj7をトニックにII-V-Iをする
Gmaj7をトニックにII-bII-Iをする この時のAb7をD7の代理コードと言う。そう、Ab7がD7の代理コードだからAb7のスケールを扱えるのだ。よってGm7、G7がトニックであったならAbミクソリディアン、Abドリアン、Abリディアンb7th, Abコンディミ、Abオルタード、Ab-hmp5、Abホールトーンが使える。 3、増4度ずらし 判りやすく言うと本来利用すべきスケールのb5thをトニックとするスケールを弾く事である。これはV7の代理コードがbII7であるのと同じ意味なのだ。V7をI7にするとVI#7になり、これを裏コードと言う。G7ならDb7である。G7の裏コードはDb7、Db7の裏コードはG7、そういう裏表の関係にある。 この場合、特にオルタードスケールが良い按配となる。下はGミクソリディアンにb5thを加えたもので、水色の部分がDbオルタードスケールの1オクターブ分だ。つまり、Dbオルタードスケールと言うのはb5thが加わってはいるが、全てインスケールなのだ。 結果、Gミクソリディアンにb5thが加わっただけだからアウトフレーズにならないのでは?、と思いがちだが、Dbオルタードスケールとして弾くからこそ、例えば3rd - b5thと言う運指になり、これはGミクソリディアンだけではあまり考え付かないでしょう?。オルタードスケールが難しいと思ったら、Dbマイナーペンタトニックスケールでも良い。 さらにこれに上述した5度ずらしを併用するとDオルタードスケールになり、Dbオルタードスケールと半音のずれを生む。これもDbマイナーペンタトニックスケールとDマイナーペンタトニックスケールでも構わない。 4、短3度ずらし これはディミニッシュコードが大きく関連してくる。ディミニッシュコードは短3度を4つ積み重ねて出来たコードで、それぞれの構成音がトニックになる性質を持っている。またディミニッシュコードは半音下の□7(b9)の代理コードでもある。 これを踏まえると、G#dimはBdim, Ddim, Fdimにもなり、G7(b9)、Bb7(b9)、Db7(b9)、E7(b9)でもある。よってG7のワンコード曲はBb7、Db7、E7に対応するスケールも使えると言う事になる。Db7は上で解説したのと同じなので、Bb7、E7も3と同じように考えて差し支えない。 この短3度ずらしはコンディミスケールを使えば全て補える点も理解しておかないとならない。短3度の関係にあるGコンディミ、Bbコンディミ、Dbコンディミ、Eコンディミは全て同じ音構成なのだ。つまりGコンディミの構成音で、G7, Bb7, Db7, E7の全てのコードトーンを弾く事が出来てしまうのだ。 よって、ただコンディミを使うのでなく、短3度の関係にある□7コードのコードトーン中心にフレーズを構成すると、よりジャズ的なアプローチが可能になる。 さらに拡大解釈をすると、これまたV-Iにしちゃうと、Gm7、G7がトニックだとD7がVコードに該当する。だからD7の代用としてF7, Ab7, B7のスケールが使えるとも言えちゃうのだ。 せっかくだからコンディミをもっともっと拡大解釈しちゃおう。コンディミの構成音をもう1度掲載しよう。
コンディミの構成音 特徴は半音、全音の繰り返しである。となると、b2nd, 3rd, 5th音、この3つに注目し、それぞれそれをトニックの1st音として始めて行くとどれも1st, 2nd, b3rd, 4thになる。これお判りか?。b2ndを1st音に見立ていると、次の#2ndは2ndになり、3番目の3rdはb3rd、4番目の#4thは4thになる。この1st, 2nd, b3rd, 4thと言うのは3つのナチュラル、ハーモニック、メロディックマイナースケールの最初の4つの音と同じだ。 つまり、G7で利用されるGコンディミの中には、それぞれAbm7、Bm7、Dm7で利用するマイナースケールの最初の4音が含まれている事になる。もっと言えば全てが1st, 2nd, b3rd, 4thであるからしてAbm7(11), Bm7(11), Dm7(11)のコードトーンがとってもマッチするのだ。楽をするのならそれぞれのナチュラルマイナーを弾くのがもっともマッチする。コンディミにこれらのコードのナチュラルマイナースケールのb6thが含まれているからだ。 だからGコンディミを弾きつつ、これらのコードトーン、スケールをさりげなく数音からなる短い1フレーズを入れてやると、鳴っているコードそのものはG7だったりGm7だったりするのだから、かなりユニークなアウトフレーズになっていくのだ。本当にこんなことしているのか?、と疑問に思うだろうが、これはハービー・ハンコックが良くやるパターンでもある。 C、注意点 Aの手法でもBの手法でもだらだらとそればかりを使っても効果は薄い。幾ら理論に裏づけされていたとしてもG7しか鳴っていないのにAb7のスケールばかり使われては誰が聴いてもミストーンだろうし、気持ち悪い。だからインフレーズとアウトフレーズをどう使い分けるかが鍵になってくる。 Bのずらし理論だけでもG7やGm7ワンコード曲でも他にBb7, Db7, E7,D7, F7, Ab7, B7のスケールが、さらにAの□7で利用出来るスケールを掛け合わせた分のスケールを利用出来る事になり、コンディミを拡大解釈するとG7はAbm7, Bm7, Dm7にもなっちゃうのだから、あまり複雑な事をせずに、コードトーン+αくらいにしてアルペジオでフレーズの節々に挿入するとかの方がお洒落なのかもしれない。
さて、このアウトフレーズ、何もモードだけとは限らない。むしろII-V-Iを要する調性音楽で使われる事の方が多いように思える。とにかくミソはVコードの時である。Vコードが鳴っている時に上述した□7時のアウトフレーズが使える。 例えばCmaj7 - Em7 - Dm7 - G7からなる循環コードがある。キーはCなのでこれはどのコードでもCメジャースケールを使えばメロディを組み立ている事が出来る。だからG7で音をアウトさせる。しかし、オレもそうだが、1小節なんてたかが2〜4秒くらいのもの。いきなりスケールチェンジってのが難しい事もある。 そこで後半のDm7 - G7のIIm7-V7の一発化をお勧めしたい。この2小節にDメロディックマイナーを使ったとする。
Cメジャースケールの構成音
Dメロディックマイナーの構成音 何故Dメロディックマイナーを使うかは次のV7コードと絡めて楽に弾けるからだ。V7は本来ミクソリディアンを使うが、そうでなくリディアンb7thを使ってみる。
Gリディアンb7thの構成音 そう、DメロディックマイナーとGリディアンb7th同じ構成音である。要するにDm7 - G7をDm7の一発と考えてしまう。バックはCmaj7 - Em7 - Dm7 - G7が鳴っているが、ギターソロはCmaj7 - Cmaj7 - Dm7 - Dm7のイメージで弾く事になる。これなら2小節毎のスケールに切り替えだからG7だけの時よりも遥かに楽になる筈だ。 反対にII-Vの部分でVを主体とする手法もある。Dm7 - G7をG7の一発と考えちゃう訳だ。この時は両方をGコンディミで弾き切る。と言うのもGコンディミは言い換えるとDディミニッシュだからだ。Dm7でDディミニッシュを使っている事になるのだから間違いじゃないし、2小節と言う余裕を持ってアウトフレーズを作る事が出来る。 これはバックで実際に鳴っているコードがG7でなくbII7に置き換えられてDb7でも同じ事。DbコンディミとGコンディミとDディミニッシュは同じ構成音である。 コード進行と言えばブルースだ。ロック系のブルースは3コードが主なので、使われるのはI7, IV7, V7の3つ。GのブルースならG7, C7, D7だ。全て7thコードだから、それぞれを今まで解説したアウトフレーズ理論を使えば、ロックブルースでもジャズブルースのようなアウトフレーズを作り出せる。 とにかくアウトフレーズの理論、作り方ってのは無数にある。今回でひとまずアウトフレーズに関するネタは打ち止めとするが、アウトフレーズを習得するには、自分の好みのアウトフレーズを奏でるプロのギタリストを見つける事にある。後はひたすらそれを耳コピーするしかない。 そしてなるべくなら、耳コピーしたフレーズが何故使われたか、それを理論的に解明出来ると良いだろう。その時にバックでどのコードが鳴っているか、これを意識せねばならない。モードなら比較的楽だが、調性音楽の場合はII-V-Iがどこにあるか、最低限、それだけでもチェックするように。 勿論プロギタリストの中でも無意識に、単なる指癖としてアウトしているフレーズも多いとは思う。ロックギタリストの多くはそうだろうし、特にクロマチックが多用されるようなフレーズは理論を検討してもあまり意味がないので注意しよう。 下はG7のワンコード曲でアウトフレーズを多用したサンプルだ。基本はなんと!、Gマイナーペンタトニックである。これに半音上のAbマイナーペンタトニックで多くをアウトさせ、ところどころでGオルタード、Dオルタードを使っている。それと主に第1ポジション、第2ポジションの2弦、3弦でクロマチックスケールを利用している。 今回のようなソロはオルタードを使わなくてもマイナーペンタにn2ndとb5thを加えるだけでもほぼ同じようなフレーズになってくれるだろう。要するにペンタトニックスケールしか知らなくても、ジャズギタリストのようにアウトごっこが出来ちゃうのである。
このような半音上がっては戻るフレーズを様々なポジションで弾けば気軽にアウト出来る。また譜面のようにハンマリングオン、プリングオフを多用する事でレガートになるので、流暢に聴こえてくる。 3弦に注目しよう。これはアウトしているようで本当はオンノートである。と言うのも3弦3フレットからはb3rd, 3rd, 4th, b5thとなるのだから、ブルースでは当たり前に使われる音だ。後はこの4音をどの順番で使うかで、アウトっぽくなるのか、ブルージーになるのかだ。そして最後、4小節目の最後の音、G7のコードでしっかりとトニックG音で終了している。
こちらは斜めライン中心のフレーズで、弾いてみれば判ると思うが、途中でちゃんとGのコードトーンを入れており、最後もGのコードトーンで終了している。弦を多く跨ぐので難度の高いフレーズだが、下の譜面だったらさほど苦労せずに運指が出来ると思う。
これはメカニカルなフレーズから変化を持たせ、基本はマイナーペンタトニックの半音上がりだが、最初はV7-I7を想定した際のVの代理コードのbII7になるAb7のコードトーン、次にV7であるD7のコードトーン(それぞれAbミクソリディアン、Dミクソリディアンの構成音だ)、最後にGのコードトーンで着地、そんな構成になっている。この時にミクソリディアンでなく、Abオルタード、Gオルタード等を使うとさらにフレーズはうねってくるだろう。
上は譜面上ではGm7になっているが、G7でも使えるフレーズだ。2小節目は単純にGオルタードスケールをなぞっているだけだが、とても美しいアウトフレーズになる。これとほぼ同じようなフレーズをパット・マルティーニが弾いている。本来、Gm7であったらここはオルタードでなくコンディミを使うが、パット・マルティーニはオルタードとコンディミを混ぜたようなフレーズになっている(単なる指癖のような気もするが、理論派だけに意図的に妙な音使いをしているのかも)。 1小節目は単にGドリアン、もしくはGミクソリディアンのフレーズになるが、さりげなく4度の音使いをしているのミソ。3小節目は上でも紹介しているb5thを絡めた斜めラインである。 このようにインスケールの音を要所要所で使う事で、その過程でどうアウトしようが問題はなく、後は着地音をミスしなければ立派なアウトフレーズになる。そして最も重要な事項が「アウトフレーズは自信を持ってかませ!」である。少しでも躊躇したら、聴く側に「あいつ、ミスしやがった」と言われるのだ。
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