リニューアルレッスン
　　　　　１０４話　超簡単なアウト法

2007.11.22

ただこれは音楽理論云々よりも、ギタリストのセンスと過去の実績(先人達からのパクリ、洗脳)によって方法論なるものが作られているようだ。

マイナーペンタトニックスケールを考えてみよう。これをマイナーコードで扱うのは問題ないが、このスケールはメジャーコードである□7コード上でも使える。□7コードの構成音を数字で表すと、1st, 3rd, 5th, b7thであり、マイナーペンタトニックスケールのb3rdは厳密に言えばアウトノートである。さらにはマイナーペンタトニックスケールには4th音も含まれていて、これはテンションノートにすると11thだ。一般的に□7コードには11thは付けないのだから、これも本来はアウトノートと呼ばれても良い性質を持っている。また良くマイナーペンタトニックスケールに加えてb5thが多用されるが、これも□7コードから考えるとアウトノート以外の何物でもないのである。

でも我々はこれらをアウトノートとは言わない。それは先人達、黒人ブルースマンが使っていた音であり、それを白人、黄色人を含む全世界の人々がそれを聴き、ある意味洗脳されちゃったから今では当たり前に使っている音だ。

音は１オクターブに１２音存在する。これを全て利用するのがクロマチックスケールと呼ばれる。つまり、スケールと名が付いているのだから、結論からするとどの音を使っても誰からも文句は言われないのである。b3rdやb5thが当たり前なのだから、まずは「１２音を使うのは常識」である、そう考えないと音をアウトさせる事は難しく、また楽しめない。

この「１２音を使うのは常識」、これに付随し「音がスケールアウトしても堂々としていろ」、これも必要だ。おどおどして弾いていると、聴く側は「あっ、あいつ今ミスったぜ！」と言われてしまうのである。実はつい最近までオレもどうやって音を外して行くか、色々と錯綜してしまって、今一歩、自分のアウトフレーズに自信を持てなかった。

そんな時に録音した音源ってのはやっぱり単なる「ミストーン多発」の失敗テイクにしか聴こえてこないのだ。でも、たがが外れたと言うか、ひょんな事から、別に何を弾いたって問題ないじゃん、と思い、そうやって弾いた音源はそれが美しいフレーズか否かは置いといて、自分の中では立派な「意識したアウト音」であり、フレーズに幅が出来たと満足しちゃっている自分がいる。

せっかくなので、わざとアウトさせた音ばかりを使ったアドリブを聴いて頂こう。ネタはGm7の一発である。だからGマイナーペンタトニックスケール、Gドリアン、Gナチュラルマイナーを使うのが一般的だが、今回はGドリアンを基本としながら、ひたすらアウトまっしぐらな音源だ。

ギター音はちょっぴりジョン・スコフィールドのコーラスをかましたオーバードライブサウンドを真似てみたので、フレーズもなんとなくジョンスコっぽくなっているのが面白い。

さてさて、これだけではギターな日々のネタになってしまう。本レッスンはSmoke On The Waterくらいは弾けて、マイナーペンタトニックスケールだったらなんとかなるかなぁ、そんなビギナーズに向けてのネタであるから、「どう？、アウトって面白いでしょ、じゃぁ頑張って！」で終了しちゃならない。

まず、マイナーペンタトニックスケールだけでもアウトさせる事が出来るネタ、新８５話、新８６話を復習しよう。

１、□mコード上ではマイナーペンタトニックスケールの２度上ずらし
２、□mコード上ではマイナーペンタトニックスケールの５度上ずらし

この２つが音をアウトさせる基本である。マイナーペンタトニックスケールを２度上、５度上にずらしてもアウトするのはどちらも１音アウトするだけで、他はコードにマッチした音が使われるので、わざと変な使い方さえしなければこの１音のアウト音が気持ち良く聴こえてくる筈だ。

さらに新８８話のドリアンの項も復習し、ひとまず、マイナーペンタの２度ずらし、５度ずらし、そしてドリアンの第１ポジションは完璧だ！、となって頂きたい。ドリアンだって□m7コード上で使うと、コードのb7thとドリアン上の6thが半音でぶつかり合うので、これも本来はアウトノートなのである。

ではここから新たなアウト法を伝授しよう。

３、□mコード上では半音上のマイナーペンタトニックスケール、もしくはドリアンを使う

今回はGm7のワンコードだから、Gm7が鳴っているのにG#m7(=Abm7)で使うスケール、G#マイナーペンタトニックスケールかG#ドリアンを使っちゃうのである。どう考えたって気持ち悪い筈だ。そう、はっきり言って気持ち悪い。でもこれはロックブルース寄りのフュージョン、ロック系ミュージシャンでも極普通に行う技なのだ。勿論、当たり前だが、これをギターソロ全編で使ってしまうと、気持ち悪いを通り越して単なるミスでしかない。

でも、、、

４、アウトさせたスケールを使ったらすぐに元のスケールに戻れ

これを励行する事で、ミスがミスでなくなるのだ。フレーズ、メロディ作りの基本は「トニックで始まりトニックで終わる」であったし、「ロングトーンはコードトーン内に収める」、これも今までに何度も念を押している。

要するにGm7が鳴っている時に、延々とG#マイナーペンタトニックスケールを使っていたら、そりゃぁ単なるミスでしかない。でも、例えば１小節の中の前半の２拍で半音上のスケールを使い、残り２拍で元のスケールに戻してやったら、途端にミスが「アウトさせたフレーズ」になってしまうのだ。

ミスとアウトフレーズの違いはこれだけなのだ。ミスは延々と半音上のスケールを弾いちゃった・・・、アウトフレーズは半音上のスケールを使ってちょっとだけ音を外して、おやっ？、聴く側がちょっと違和感を持った瞬間に元にスケールに戻り、平然とオンノートを弾く事を言うのである。

例えばこんなフレーズ。２拍目だけ半音上のG#マイナーペンタトニックスケールを使っている。

このように最後はロングトーンで1st音であるGに落ち着いている。ここで4th音のCをロングトーンに使って着地すると、かなり気持ち悪い。だからまずは慣れないうちはスケール内でもコードトーンに着地する、これを励行しよう。

５、□mコード上では短３度上のマイナーペンタトニックスケール、もしくはドリアンを使う

２度上、５度上の他に短３度上のスケールを使っちゃうのだ。今回はコードがGm7だからBbマイナーペンタトニックスケールかBbドリアンを利用しちゃう。勿論これも延々と短３度上のスケールを使ってしまうと単なるミスになるので、１小節の中で１拍か２拍程度、盛り込むと良いだろう。

実はジャズやフュージョンギタリストは良く短３度上のメロディックマイナースケールを使うが(今回ならBbメロディックマイナースケール)、今回はサンプル音源も含め、敢えてマイナーペンタトニックスケールとドリアンを使っている。

まずはこの５つの項目だけでアウトフレーズを練習して頂きたい。そして以前提供したmidiファイルをバックに何十回もそれを録音しよう。弾いている時に違和感があっても、聴いてみると問題がないフレーズがあったり、やっぱり駄目、ミストーンにしか聴こえないフレーズがあったりするから、それがどうしてなのかを考えれば、次第にアウトフレーズに慣れてくるだろう。

当たり前だが、曲によってはどうアウトさせても合わないのもある。そういう時は無理にアウトさせる事はない。