以前にも似たような事をどこかで書いた気もするが・・・。
オヤジギタリスト達、まだ10代だった頃は大変だった。アルバムと言えばレコードだ。アルバムを通しで聴くのならレコードでも特に問題は無いが、ある曲をマスターするにはまずそれをカセットテープに録音する必要があった。ディープ・パープルのHighway StarだったらHighway Starのギターソロ部分だけを録音する。それをカセットデッキを利用して再生を繰り返す。
速弾き部分を聴き取れなかったらもう市販の譜面に頼るしかない。テープスピードを落とすには普通のカセットデッキ、カセットテープでは駄目で、オープンリールデッキと言うプロ向けのオーディオ機材を買う必要があった(当時でも安いのでも7、8万はする代物でガキンチョが手を出すのは無理)。しかも速度を落とすと音程も落ちる。半分のスピードにすると1オクターブ低く再生されてしまう。CDがレコードに取って代わってもそれは変わらなかった。
しかし21世紀の今、時代はアナログからデジタルへ変化した。そこでこれからギターを始める人も、今、必死で練習中の人も、若人もオヤジも、このデジタルの恩恵に授かった方が良いに決まっている。要するにパソコンを駆使しましょうって事だ。強く言えば、恩恵に授かるのでなく、デジタルミュージックを使いこなさないとならない。
まずCDは全てパソコンのハードディスクに保存し、容量の問題もあるので、mp3かwmaと言った圧縮ファイルにしちゃおう。それを前提に使えるツール類を解説する。
オーディオ再生ツール jetAudio
日本語環境だけプラグインモジュールが必要だが、あとは本体をインストールするだけで、midiを含めたほとんどオーディオファイルが再生出来る。特筆すべき点は、、、
- フリーソフト
有償版もあるが、フリーソフト版でも以下の事が全て可能になっている。
- リッピング
CDからのリッピングが出来、出力はほとんどのオーディオファイルに対応している
- コンバート
別の形式のオーディオファイルにコンバートする機能がある。入力、出力ともほとんどのオーディオファイルに対応している。midi音源もmp3やwmaに変換出来るのが良い。
- テンポのアップ、ダウン
50%ダウンから200%アップまで可能で、70%程度までは聴くに堪える事が出来る。テンポを70%にすると余程の速弾きでない限り、音を1音1音追う事が可能。
- キーのアップ、ダウン
原曲のキーを自在に変更出来る。これにより、例えばキーがGmのSmoke On The Waterのキーを全音上げてAmにしてAマイナーペンタトニックスケールの練習が出来るのだ。
- リピート機能
任意の位置、任意の長さでリピートさせる機能がある。テンポのアップ、ダウンと併用すると、聴き取りにくいフレーズのみを延々とリピートさえ、耳コピーする事が可能。
- 簡易録音
パソコン内臓のサウンドカードの性能によるが、ミキサー機能のあるサウンドカードがあれば、jetAuidoで再生しているmidiファイルに自分のギターを被せ、それを録音する事が出来る。
つまりこのソフトだけで、CDからのリッピング、耳コピー、録音と全てが可能なのである(パソコンによっては録音が出来ないのもあるが)。現在ver6とver7の両方が入手可能だが、ギター練習用で利用するのであれば、ver6の方が無駄が無い。
wavファイル波形エディター SoundEngine
wavファイルの加工、修正を目的としたフリーソフトだ。各種エフェクト機能が充実している。ver2から使い勝手が上がり、かなり便利なツールである。ギター練習用として次の2つの機能が便利だ。
- テンポのアップ、ダウン
jetAudioは10%毎のアップ、ダウンしか出来ないが、これはスライダー方式なので任意の好きなテンポに設定出来る。
- リピート機能
マウスで任意の部分を選択すればリピートが可能。また波形エディターなので、必要な部分だけを切り取ってファイルに保存しておけば、毎回その部分だけを聴けるので、例えばギターソロを2小節毎に切り取って1つ1つで練習が可能だ。
ただ、欠点としてフリーソフト版はwavファイルにしか対応していないので、midiファイルを読み込んだり、mp3, wmaと言った圧縮ファイルは1度jetAudio等でwavファイルに変換させる必要がある。
wavファイル波形エディター Sound It
有償ソフトだが、オーディオ・インターフェスを買うと大概、LE版がおまけで付いてくる。行える事は上のSoundEngineと同じだが、編集出来るファイルはwavファイル以外も可能で、またエフェクト機能はやはり市販品、SoundEngineよりもしっかりしているものが多い(特にリバーブやディレイ機能はSoundEngineよりも数倍優秀)。SoundEngineだけでも十分なので、わざわざ買う事は無いが、少なくともいちいちwavファイルに変換する手間が省けるので、オーディオ・インターフェース等のおまけでついてきたら利用しよう。
TAB譜作成、閲覧ソフト Power Tab Editor
これを数年前に見つけた時は感動した。ソフト本体はフリーソフトだし、インターネットを探し回れば、有名なロック曲だったら大抵を無料でダウンロード出来る。
TAB譜作成、閲覧ソフト Guitar Pro
オレは所持していないが、色々な人から聴くとかなりの優れもの。残念ながら上述のPower Tab Editorはちょっとマニアックな曲となると世界中を探し回っても譜面が見つからない。しかしGuitar Pro用の譜面はPower Tab Editorよりも遥かにデータが存在していて、ほぼどんな曲でも見つける事が出来ると言っても過言ではない。ソフトの値段も8千円程度なので、特に高いとは思わない。書籍形式の譜面を買い漁るよりも確実にリーズナブルだ。
オーディオミキサー(DAWソフト) Music Studio Producer
midiデータ、wavデータの両方をトラック毎に管理出来るツール。midiデータを作ったり、既存のmidiデータの加工、修正に便利。またmidiトラックとオーディオトラックの両方を扱えるので、このツールだけで、midiカラオケと自分が演奏したギター音を録音、加工などが可能だ。フリーソフトでここまで出来るのは凄い。
ただどうもアンプシミュレーターソフトのGuitar Rig2との相性が悪く、ほとんどフリーズしてしまうので、他のアンプシミュレーターソフトでも利用出来るかどうかは不明。問題があるようなら、Jet Audioでmidiデータを再生し、波形エディターのSoundEngine等でギター音を録音し、最後にミックスダウンでこのMusic Studio Producerを使うって手もある。
本格的に、例えばデモテープ、インディーズ向けのCD等を作るにはもっと高機能のミキサーソフトが必要だが、そうでなく、自分のギターフレーズをチェックする程度だったらjetAudioとこれがあれば十分だ。
オレが利用しているのはちょっとマイナーならしいがプロ仕様のSamplitude Proと言う代物だが、オーディオ・インターフェースのおまけで良く付いてくるのが、Cakewalk Sonar LEやTracktion、Cubase LE、これで十分過ぎる機能がある。
midi自動作成 Siger Song Writer
コードやメロディを入力するだけでバッキングデータまでも作ってくれるmidiエディター。練習用のカラオケ作りに非常に便利である。最近の本レッスンのmidiデータのほとんどはこれで作成している。市販ソフトだが、色々な練習用のカラオケデータを作りたいのだったら是非ゲットすべき。
またオーディオミキサーと同じく、オーディオインターフェース等のおまけでlite版がついてくる時もあるので、その手のハードウェアを買う際に、どんなおまけソフトが付いて来るか、チェックする事も必要だ。確か通常の市販バージョンはそこそこ高価だが、おまけで付いてくるのとほぼ同機能のバージョンが安価で発売されていた筈。
アンプシミュレーターソフト
正式なカテゴリ名はなんて言うのなら判らないが、要するにパソコン内でバーチャルなアンプ、エフェクターシミュレーターだ。一番有名なのはGuitar Rig2だろう。これは5万近くするが、今ではプロのギタリストも使っているので、余裕があったら買おう(パソコンへの負荷が物凄いので初期のWinXPパソコンだとかなりきつい)。
パソコンへの負荷がさほど掛からずに、安価なのがIK MultimediaのStealthPlug。これは1万5千円くらいで買える。利用出来るアンプやエフェクターはGuitar Rig2の10分の1程度だが、一般的なハードロックやフュージョンサウンドはこれで十分出せる。むしろ一般的な音だったらGuitar Rig2よりも容易に作り出せ、また音質も良いかも知れない。
おまけソフトも充実しているのでお買い得だ。ただ、1つだけ欠点はノイズゲート(ノイズリダクション)の性能がイマイチ。だからガンガンに歪ませ、バラード系の音楽に乗せて演奏するとちょっとノイズが耳障り。
勿論、手元にホンモノのエフェクターとしてのマルチタイプのアンプシミュレーターがあれば、特に必要は無い。
◇
音質をさらに向上させるにはサウンドカードとかオーディオ・インターフェースと呼ばれる外付けのお弁当箱のようなハードウェアを必要とする。オレが利用しているのはEdrolのUA-3FX(ローランドブランドもある)である。これに真空管シミュレーションが付いたのがUA-4FX。しかしこのUA-FXシリーズ、欠点はおまけソフトが波形エディターのSound Itしかない点。音源をトラック管理するミキサー、DAWソフトを別に買わないとならない(上述のMusic Studio Producerでもなんとかなるが、Guitar Rig2は使えない)。
同じUAシリーズでもUA-25はDAWソフトが付いてくるので、無駄な出費をしたくないのだったらUA25の方が良いかも知れない。こいつは確かmidiインターフェースも付いているので、ギター以外にキーボードも入力出来る。UA-3とUA-4はギター以外にも普通のマイク入力も可能だからヴォーカルインターフェースとしても使える。だからmidiを用意出来れば、自宅がカラオケハウスに変身。
オーディオ・インターフェースは他にもLine6等から発売されているので(店頭価格2〜3万)、機能とおまけのソフト、この両方をしっかりと把握しないと無駄遣いをするので注意あれ!。またUSB接続とFire WIre接続(これって一体何?)ってのがあるので、これもチェックしないとならないだろう。
オーディオインターフェースを利用しても所詮ラインインでパソコンでギター音が入力されるので、上述のGuitar Rig2等の入力後にパソコン内でギター音を作らないのであれば、絶対に必要なのがマルチタイプのアンプシミュレーターである。今は高機能なものでも3〜4万程度で買えるのでデジタルに移行するのなら、購入する事をお勧めする。
極力フリーソフトやおまけソフトを使うのであれば、完全デジタル移行にさほど散財する事はないだろう。学生さんだったらもうすぐ正月だからお年玉で揃えても良いし、オヤジだったら年末のボーナスで奥さんに黙って買っちゃえる程度の出費で済む。
何故、完全デジタル化が望ましいか。それは録音である。とにかく自分の演奏を録音して聴けば、自分がどんなに下手糞か、理解出来るのだ。オレも本サイトを運営し、自分のギターを録音するようになってから、技術やセンスが向上した。とにかく毎日録音し、自分の演奏を聴いて反省しよう。またmidi規格に精通する事により、カラオケトラックを作れ、作曲だって出来ちゃう。
これからはアマチュアであっても、オヤジであっても、Audio、DAW、midi関連ソフトはワードやエクセルを扱うのと同じように使いこなさないとならないだろう。もうそういう時代に来てしまったのだ。
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