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リニューアルレッスン |
2007.11.13 |
とうとうリニューアルしたビギーナズレッスンも100話を超えた。そこで初心に帰るって訳でないが、恐らく、未だに「ロックには理論なんて必要ねぇ!、センスあるのみ!」と言う人もいるだろうから、そうじゃないよってネタを書こう。 Dm7 x 4 - Em7 x 4 貴方がセッションに参加し、上のコード進行でアドリブを回そうとなった時、どう弾く?。もし貴方が初心者に毛が生えた程度であれば、聞くは一時の恥、ベテランに「キーは何ですか?」、「どのスケールを使えば良いのですか?」と尋ねれば良いが、物を尋ねるなんて小っ恥ずかしくて出来ないなんて人は、このコード進行が与えられた瞬間、必死になってどのスケールを使えばいいかを考えなくちゃならない。7thコードが判らないなんてのは論外である。 最初がDm7だからDマイナーペンタトニックスケールかDナチュラルマイナーだな、と思って弾いちゃうと、Em7のところで音がアウトしてしまう。おっかしいなぁ、じゃぁEm7はEマイナーペンタかEナチュラルマイナーでいいやぁ〜。そう考えちゃう人、きっといると思う。 間違いではない。でもここでダイアトニックコードってを知っていると、このコード進行はIIm7 - IIIm7であり、キーはC、もしくはAmだってのが瞬時に理解出来るのである。つまり、2種類のスケールを使わずとも、Cメジャースケール(=Aナチュラルマイナースケール)だけで弾けちゃうのだ。 全音間隔の2つのマイナーコードのコード進行の場合、低い方のコードの全音下のメジャースケールを使う、これは音楽理論の基本中の基本。だからF#m7 - Abm7なるコード進行があったらキーがEのEメジャースケール(=Dbナチュラルマイナースケール)、Am7 - Bm7だったらキーはGメジャースケール(=Eナチュラルマイナースケール)である。 そして他のギタリストがそうやってメジャースケール1本で弾いていたら、オンリーワンな人を目指す為に、モード理論を使って、両方にドリアンを用い、Dドリアン、Eドリアンと言った弾き方でもすればいいだろう。 これはバッキングでもそう。ギタリストが3人もいたら、これだけのコード進行で下手したら10分くらい演奏している。だからDm7をDm7、Em7をEm7、いつも同じポジションでコードをジャラーンなんてしていたら飽きちゃう。だから色々なポジションのDm7を知っていればコードヴィンシングも変化してくるし、さらには9th、11thと言ったテンションノートを混ぜたり、Dm7をDm6とする事だって出来る。 セッションでカッコイイと感じるのはバッキングが上手いギタリストだ。強烈に歪んだ音でパワーコードしか弾けないなんて人は、他のギタリストから「煩いからオレのアドリブ最中は大人しくしていてくれ」なんて言われかねない。 Dm7 - Ebmaj7 おっ、これは前話のモードネタでやったじゃないか。と考えても良いが、これもダイアトニックコードをまず当てはめると、IIIm7 - IVmaj7となり、キーはBbになるので、Bbメジャースケールだけで弾ける。 セッションの場合、ギタリストが何人参加するによるが、大概、1曲に対して、2、3回は順番が回ってくる。だから最初はBbメジャースケールで弾き倒し、次はDナチュラルマイナーとEb-hmp5を使ってスパニッシュを意識し、さらに順番が回ってきたら、DドリアンにEbリディアンでモーダルなフレーズに切り替えれば良い。スケールが変わればフレーズも変わり、フレーズのマンネリ化防止にもなる。 セッションで一番楽なのはワンコード一発物。G7だったら延々とG7を弾く。これも理論を持ってすればマンネリ感は薄れる。先日まで書いていた□7で利用出来るスケール、マイナーペンタトニックスケール、メジャーペンタトニックスケール、コンディミスケール、hmp5スケール、モードからはドリアン、ミクソリディアン、リディアンb7thが使え、レッスンネタにはしていないが、オルタードスケール、ホールトーンスケールと合計9つのスケールを扱える事になる。 ワンコード物でもコードトーン中心にビバップフレーズを使えば、コード感が多く出るし、反対にスケールを利用していても4度フレーズやクロマチックフレーズを多用すればコード感は希薄になり、メリハリを付ける事が出来る。 ただ、何時間もワンコードだけだとバッキングが退屈する。特にベーシスト。ギターセッションの場合、ベーシストはギタリストの為にリズムを刻むのだから、G7一発なんて3分も演っていたら飽きちゃうだろう。だからどうしても2〜4つくらいのコード進行を与える事になる。 そんな時にギタリストはキーに対するスケールだけで行くか、コード毎にモーダルなイメージでモードスケールを取り入れるかを瞬時に判断しなくちゃならない。理論を知っていないとどうにもならないのである。 循環させるのだったらブルースが楽だ。ブルースを上手く弾くにはブルースを追求しないとならないが、コードの基本は3つだし、マイナーペンタトニックかメジャーペンタトニックスケールを知っていれば弾ける。しかもベーシストもそこそこ飽きない。でも3コードすら知らない、知っていてもパワーコードでジャラーン!、これでは頂けない。セッションに参加するのだったら上手い下手は置いといて、ブルースとはどういうものか?、それくらいの知識は必要だろう。ブルースは7thコードの鳴りがカッチョイイのだから、冒頭で書いたように7thコード知りませんじゃお話にならない。 若干理論から外れるが、ロックギタリストはF、Bb、Ebと言うキーはまず使わないと言って良いだろう。でも弾けませんじゃ済まされない。もしセッションにキーボーダーや管楽器奏者が参加していたら、この3つがキーになる事だってある(ロックセッションだったら管楽器奏者ってのはまず参加しないだろうが、オレ主催のセッションは来る事が多い)。しかも参加してくれる管楽器もキーボードもジャズ畑の人だったらF、Bb、Ebってのは当たり前なのだ。 勿論、セッションってのは嫌がらせやいじめをする場ではないので、上級者は一番低いレベルの人に合わせてくれるのだが、時と場合によってはレベルの低い者が頑張って努力をしないとならない事もあるのだ。初心者に優しいセッションの方が多いだろうが、自分は初心者だから我侭が通じると思っちゃいけない。ペンタトニックしか知らなくても構わない。でも、マイナーペンタの他にメジャーペンタも覚える必要はあるし、どんなキーでも扱えるようにならないと(ちなみにオレは我侭でEbだけは嫌いと言い続けているが・・・)。 以前から何度も書いている事だが、本サイトで扱っている理論ネタはポピュラー音楽を演奏する上での基礎でしかない。例えばこのレッスンが音大の授業内容のようなネタばかりだったら、そりゃぁ「ロックに理論なんていらねぇぜ!」となるだろうが、そうじゃない。だから基礎すらを理解しない、したがらないギタリストにはちょっと閉口する。 オレは本サイトを通じて、皆さんにはただのギタリストでなく、ミュージシャンになって頂きたい。ただのギタリストで良いのだったらGuitar Magazine誌のMookの地獄のうんたらシリーズなどでメカニカル、テクニカルなフレーズだけを弾いていれば良いだろう。でもミュージシャンになるには、その手のフレーズも大事だが、音楽理論から見るフレーズ作りってのも大切なのだ。 20代の初め、ハードロックからフュージョンに走った時期あった。フュージョンギタリストを目指したのでなく、フュージョンはロックよりも音楽理論を知らないと弾けない。だからフュージョンを弾く事で音楽理論を学ぼうとした。しかし周囲の目は冷たかった。「理論に走ると理論から離れられなくなって個性が失われるぞ!」、何人かからそう言われた。 でもこれは違う。フュージョンも音楽の基礎を知れば良い。やはり音楽の基礎すらも知らないギタリストってのはその程度でしかない。仮にだ、理論に走って没個性になってしまったら、その人は、理論に走らなくても個性がないのである。むしろ個性がない分、理論に走った方が、より確実な演奏が出来る。 半年程前にある音楽ライターが書いたエッセイを読んだ(タイトルも著者も失念)。あるページに、何故日本の歌手やミュージシャンはニューヨークで録音したがるのか、なんて内容があり、読んで納得。ニューヨークはスタジオミュージシャンがすぐに見つかるのだ。 勿論日本でもスタジオミュージシャンなんて腐る程いるだろう。しかし、その場で意図を伝えて、どんな事でも出来るスタジオミュージシャンってのが日本には少ないらしい。結果、大物スタジオミュージシャンに大金を払ったり、その人の為だけにスケジュールを調節したりと何かと面倒なのだそうだ。 それがニューヨークだと、目当てのミュージシャンが捕まらなくても、低賃金であいよっ!、とやってくれる人がわんさかいるのだそうだ。譜面は読めて当たり前、コードも細かくテンションノートや分数コードが記されていてもすぐに弾けちゃう。ここはラテンリズムで、これはボサノヴァ風にっても「うん」と頷き、すぐにやってくれる。これはテクニック云々でなく、やはり理論を知っているから可能な事なのだ。 作曲に関しても理論を知っていると楽が出来る。センスがあって鼻歌で曲を作る人もいるだろう。では鼻歌で作ったメロディにどのコードを被せるか、これをセンスだけやってのける人は滅多にいない。テンションノートを加えるだけで響きは変わるし、トップノートを何にするかと言ったコードヴォイシングでも変化する。増してや代理コードやセカンダリードミナントを使えばどんどんとコード進行は細分化される。 スティーヴィー・ワンダーは転調の名人だ。恐らく彼はセンスもあるし音楽理論もあるのだろう。でも我々アマチュアが、どこまでセンスだけで曲の中に転調を挟む事が出来るだろうか?。一番の基本である平行調への転調だって判らないでしょう?。平行調への転調はII-VやV-Iと言う基本コード進行を知らないと理解できないのだ。 結論。理論に溺れて個性を失う事はあり得ない。仮に、それで個性を失ってしまったら、間違った解釈をしているか、音楽センスそのものがないかである。そして本当にセンスがないのだったら、理論を学習しないとミュージシャンどころかギタリストにもなれない。
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