岡田外相が打ち出した「オープン記者会見」の中身
やっと外務省の記者会見が普通に国際標準になりそうです。セキュリティが人一倍重要な役所が会見をオープンにした以上、少なくとも他の役所がセキュリティを言い訳にして、記者会見をオープンにしないことは難しくなりました。
これが他の省庁にも広がっていくことを願っています。というか、これからもこれまで以上にビンビンにプッシュします。
ただ、岡田さんが打ち出したオープン記者会見について、具体的な中身がきちんと伝わっていないといけないので、念のため説明しておきます。
まず大方針は「原則として、記者クラブ所属報道機関以外の全てのメディアにも解放する」(岡田氏)です。
そして、その対象となるのは以下の方々です。
・日本新聞協会
・日本民間放送連盟
・日本雑誌協会
・日本インターネット報道協会
・日本外国特派員協会会員
・外国記者登録証保持者
・フリーランス記者
記者クラブというのは、日本新聞協会と民放連(日本民間放送連盟)の加盟社の記者のみとなっているので、上の2つの団体に所属する記者には、もともと記者クラブの加盟資格があります。しかし、これまでは、仮にその団体の加盟社の記者でも、社を通じてそれぞれ当該の記者クラブに入会していることが必要でした。それぞれの報道機関の社内ポリティックスなどの事情で、新聞協会加盟社の記者であれば誰でも会見に出られるというわけではなかったということです。
それが、これからは基本的には、上記の団体に加盟している社の記者であれば、誰でも会見には出られることになるので、例えば朝日の別の部署の記者が、朝日の記者クラブの記者に気を遣って会見に行けないとか、NHKのクローズアップ現代の記者やNスペのディレクターがNHK報道局の外務省霞クラブ所属の記者に会見の出席や撮影を妨害されるというような馬鹿げたこと(これが本当にあるんですよ。)もなくなります。
上の2つの団体以外、日本雑誌協会と日本インターネット報道協会と日本外国特派員協会会、外国記者登録証保持者、フリーランス記者はこれまで記者会見からは排除されていた人達なので、これで事実上記者会見はフルオープンになったことになります。
ビデオニュース・ドットコム的には私たちが昨年結成したインターネット報道協会の枠ということになりますが、一番重要なのは、外務省の会見がフリーランスにも開放されたことだと思います。これによって、事実上ジャーナリズム活動をしている人であれば誰でも、外務省の会見に参加できるようになり、質問もできるようになりました。ヒラリー・クリントンさんと岡田さんの外相会談の会見にも出れることになるので、手を挙げて当ててもらえれば、ヒラリーさんに直接質問もできるようになるわけです。
尚、フリーランスについては、「これらの媒体に定期的に記事を提供する人に限り」となっているので、自称フリーランスというだけではダメそうです。まあ、自称フリーランスの活動家や通行人、見物人、観光客までが、ヒラリーさん見たさに会見に入ってこられたり、会見で暴れられたりしても困るということでしょう。イラクでの記者会見でブッシュ大統領がイラク人記者から靴を投げつけられたことがありましたが、せいぜい靴しか投げられないようにするためには、入り口のところでセキュリティチェックは必須になるでしょうね。
これは主要先進国では今や常識ですし、アメリカ大使館などでも厳しいチェックがあります。アメ大は金属探知機があって、携帯電話やキーホルダーにしている小型ナイフさえも、建物の中に持ち込めません。これまで日本が甘すぎたとも言えると思います。
フリーの方は、雑誌なりテレビなり何らかの媒体に自分の制作物が掲載/放送されているエビデンスを提出して、自らのフリーランス活動の実態を証明することを求められることになると思います。
何本か前のエントリー「記者会見をオープンにするのは簡単なことですよ」で私が書いた、「報道目的であることが確認できる人」という条件がこれにあたります。
September 19, 2009
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September 20, 2009
コメント
岡田さんは、「頑固」そうで回りは大変そう
だと感じていましたが、実はタフネスなんですね。
会見公開で、ますますタフな政治家になることを
期待すると同時に、他の大臣たちも、見習って
もらいたいです。
September 19, 2009
よかったですね。民主党政権はこんな感じで良くも悪くも何かと2転、3転して修正していくようになると思っていたので、徐々に解放方向に進むだけじゃないかな~っと思ってました。
ところで、その媒体についてですがどのようなスクリーニングが行われるのでしょうか。ヤクザ系でもエロ系でもオールOKになるんでしょうか。また赤旗や聖教新聞といった発行元と特定の政党が結びついてるところはどうなるのでしょうか。
あと、日本インターネット報道協会ってHPまだないんですか?ちゃんとしたHPがあって会員一覧とか啓発について書かれてるHPがあるべきだと思うのですが。
September 19, 2009
携帯電話やキーホルダーにしている小型ナイフ
というのは、
携帯電話も持ち込み禁止ということですか?それともこれは携帯電話にしている小型ナイフと読むべきですか??
September 19, 2009
一点教えていただきたいのですが、
今回のことで、フリージャーナリストにも公開になったということですが、研究者がその場に言って質問をすることは可能なのでしょうか?
日本の件はこれからだと思うので、神保さんも分からないとは思うのですが、アメリカの場合はいかがでしたか?
September 19, 2009
ようやく扉が開きました。
岡田氏の頑固さは、こういうときに効果あります。
小沢一郎氏が最初に記者会見オープン化を試みて以来、長い年月を要しました。
もしかすると官邸が一番遅いかもしれませんが、最も簡単なのは、
官邸に報道官を置くことではないでしょうか。
考えてみると、官房長官が報道を仕切るのは無理があります。
『週刊朝日』によると、組閣前、上杉隆氏の報道官起用が
噂されたというジョークもあるようです。
September 20, 2009
日本インターネット報道協会があらたな記者クラブになられてもこまるので、団体に加盟していなくても報道目的なら出席できるように審査体制の整備をもとめてほしいです。
September 20, 2009
>日本インターネット報道協会があらたな記者クラブになられてもこまるので、団体に加盟していなくても報道目的なら出席できるように審査体制の整備をもとめてほしいです。
インターネット報道協会でも何協会でもいいのですが、あなたはそのような業界団体が自主的に管理をするより、政府に誰が会見に出られるかを審査をして決めてもらう方がいいと思われているということですか。
September 20, 2009
神保さん、努めて公明正大であろうされているのは解らなくはありませんが、意味不明なコメントまで全部公開して、ちょっと投げやりではありませんか。
ビデオニュースと違って、ここは誰でもコメントをできるようにされているようなので、一体誰が紛れ込んでいるかわかりません。また、あくまで個人サイトですから、何を公開するかしないかも、独断で自由に判断することが許される場所でもあります。
悪気もなく素朴な気持ちからちょっとずれたコメントを書いている方も大勢いるのかもしれませんが、悪意のある書き込みがあっても不思議はありません。例えば平野さんのテカや記者クラブのテカも紛れ込んでいるいるかもしれないのですから、ある程度節度をもってコメントを公開していった方がいいのではないでしょうか。
上の表現の自由に関するコメントなど、神保さんが、若いジャーナリストを育てるためにどれだけ苦労されているかをよく知っている身としては、とても看過できませんよ。
老婆心ながら、コメントさせていただきます。
September 20, 2009
>政府に誰が会見に出られるかを審査をして決めてもらう方がいいと思われているということですか。
私は上の発言者ではありませんが、現状を鑑みるに、その方が遥かにマシだと思っています。
情けないことですが、それほどまでに、業界団体による自主規制が多くの国民から信頼されていないがために、岡田氏に支持が集まっているのだと思います。
なお、同じ会見参加の拒否でも、「記者クラブが拒否した」というのと、「○○省が拒否した」というのとでは、国民が受取る意味が違うわけで、そのような緊張感の存在こそ、情報公開の本旨に適うものではないでしょうか。
September 20, 2009
記者クラブが解放されることは喜ばしいことですが、日本インターネット協会のサイトが検索しても見つかりません。
名前にインターネットを冠する協会にしてはあまりにもお粗末過ぎやしませんか?
インターネットを使ったメディアが世間から胡散臭く思われないよう出所を明確にする意味でも、ぜひこれを機にサイトを立ち上げて欲しいです。
September 20, 2009
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