消費者金融大手のアイフルが私的整理の「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」に着手したことで、過払い利息返還請求や金融危機による消費者金融業界の苦境が浮き彫りになった。アイフルは債務返済猶予や店舗・人員の削減で再建を目指すが、経営環境は厳しく、業界再編につながる可能性もある。
多重債務問題を受けて改正された貸金業法が07年に施行され、消費者金融各社は不振に陥った。上限金利の引き下げで過払い利息の返還請求が急増し、損失が拡大した。
来年6月に融資を年収の3分の1以下に抑える総量規制も適用され、各社は前倒しで融資を圧縮。プロミス、アコム、アイフル、武富士の大手4社の3月末の融資残高は5兆513億円と3年前から約2兆円も減少した。外資系は売却・撤退が相次いだ。
追い打ちをかけたのが金融危機だった。消費者金融各社は資金を市場調達するケースが多いが、市場の混乱で金利が高騰。大手銀行傘下のプロミスとアコムは、銀行の信用力をバックに金利は抑えられているが、銀行傘下でないアイフルと武富士は高金利が収益を圧迫し、アイフルは私的整理に追い込まれた。
アイフルはリストラによる経営再建案をまとめ、主力行の住友信託銀行やあおぞら銀行などに約2800億円の債務返済を来春まで猶予してもらうことで同意を取り付けたい考え。だが、米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は18日、アイフルの格付けを「デフォルト(債務返済不履行)」一歩手前の「CC」に引き下げ、市場での資金調達は一段と苦しくなる。
主力行は債務返済猶予を前向きに検討する意向だが「ビジネスとしての将来性は厳しい」(主力行幹部)との声も漏れる。業界では「大手4社すべての生き残りは困難」との見方が強く「武富士とともに再編の対象になる」との観測も出ている。【永井大介】
事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)は、過剰債務企業が裁判所を通さずに再建を図る「私的整理」の新たな手法。会社更生法などの法的整理と債務免除など従来の私的整理の両方の利点を備え、活用が増えている。アイフルは債務の免除は求めていないが、返済猶予を仰ぐためADRの活用を決めた。
ADRは改正産業再生法に基づき08年秋から運用が始まった。民間の第三者機関「事業再生実務家協会」に所属する弁護士などが仲裁役となり、企業と債権者が協議し再生計画案を策定・実行する。
手続きは約3カ月と法的整理の6カ月~1年程度より短い。従来の私的整理は倒産のイメージは受けにくかったが、金融機関の意見がまとまらない例が目立った。手続き中も金融機関以外の取引先には債務を支払える。アイフルの場合、返還請求されている過払い利息も支払いは継続される。【小倉祥徳】
毎日新聞 2009年9月18日 22時34分