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裁判員裁判:強盗強姦罪で求刑通り懲役15年 青森地裁

全国3例目となる裁判員裁判が開かれた青森地裁第1号法廷=青森市で2009年9月4日午後3時32分、丸山博撮影
全国3例目となる裁判員裁判が開かれた青森地裁第1号法廷=青森市で2009年9月4日午後3時32分、丸山博撮影

 全国で初めて性犯罪を審理した裁判員裁判で、青森地裁(小川賢司裁判長)は4日、2件の強盗強姦(ごうかん)罪などに問われた住所不定、無職、田嶋靖広被告(22)に対し、求刑通り懲役15年の実刑判決を言い渡した。判決は「極めて身勝手な動機から、女性の人格を無視した卑劣な犯行を重ね、生涯癒やされない心の傷を負わせた。被害者が被告に厳しい処罰を望むのは当然で、重く受け止めなければならない」と指摘した。

 法廷では被害者の実名や住所が伏せられたが、被害状況は詳細に読み上げられ、裁判員裁判が原則とする「口頭主義」と被害者保護のバランスの難しさが課題に上がった。裁判員を務めた牧師の渋谷友光さん(45)は判決後の記者会見で「守秘義務がない傍聴席に犯行内容が読み上げられていくのは大丈夫かと思った」と振り返り、被害者が別室からモニター越しに意見陳述したビデオリンク方式は「被害者の音声を変えても良かった」と話した。裁判員を務めた別の男性(29)も「犯行過程が詳しく語られたことが衝撃でした」と述べた。

 男性が被害者になりにくい性犯罪事件で、今回の裁判員は男性5人、女性1人だった。男女比についても「男性3人、女性3人が望まれる」「普通のくじでいい」などの意見が出た。

 判決について吉松悟・青森地検検事正は「判決の懲役15年は求刑をしっかり受けとめていただいた結果だと思う」とコメント。被告側の主任弁護人を務めた竹本真紀弁護士は「国民の意識が反映された判決になった気がする。控訴については被告と相談する」と話した。【山本佳孝、矢澤秀範】

 ◇被害者感情を重視 量刑相場にとらわれず

 今回の裁判員裁判は東京、さいたま地裁に続き3例目だが、過去2例の判決の量刑は求刑より軽かった。青森地裁判決は「一生刑務所に入ってほしい。だめならできる限り長く」と厳罰を求めた被害者の感情を重視したと言える。あるベテラン裁判官は「厳しい判断。プロの裁判官は被告の反省などを一定程度考慮する場合が多かった」と分析した。

 弁護側は被告の恵まれない成育歴を強調し「懲役5年が適当」と主張した。これについて、ある検察幹部は「弁護側の主張する量刑は軽すぎて、あり得ない。裁判員の一般感覚からかけ離れ、判決が逆に重く振れてしまったのでは」と話した。

 裁判員の一人は会見で、評議で示された過去の同種事件の量刑データを見て「従来の性犯罪に対する判決が低すぎたと感じた」と話した。量刑相場にとらわれない裁判員ならではの視点が結論に影響したとみられ、判決は「時間をかけて犯した罪に対する自覚を持ち、反省を深め更生させる必要がある」と指摘した。

 一方、小川裁判長は「裁判所は被告の更生をあきらめているわけではない。むしろ被告の更生への期待を込めた懲役15年と受け止めていただければ」と説諭した。裁判員と裁判官が、被告の今後について真剣に議論したことがうかがわれた。【坂本太郎、銭場裕司】

毎日新聞 2009年9月4日 15時39分(最終更新 9月5日 0時33分)

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