「南京大虐殺は誤解」などとした河村たかし名古屋市長の市議会本会議での発言について、市に意見が相次いでいる。市長を支持する声もあるが、歴史家の間からは「事実誤認も多く、無用の議論」などの声も出ている。【山田一晶】
市広聴課によると、18日正午までに寄せられた意見は58件。メールが8割で、電話、ファクスの順だった。内訳は「よく言ってくれた」「発言を支持する」などの好意的な内容が37件、「公的な場で言う話ではない」「歴史認識に誤りがある」などの批判的意見が21件だった。市内在住者の割合は不明。河村市長の他の発言に対する意見に比べ、かなり多いという。
日中友好協会愛知県連合会(石川賢作会長)は16日付で「河村市長の認識を問う」とする文書を発表した。「南京市に人口は30万人もいなかった」などの発言は誤り、と指摘。「市長の認識は出発点で間違っている。国際法と人道に反した大きな事実にこそ注目すべきだ」と主張している。
一方、名古屋市東区の中国総領事館は静観の構え。市長答弁が新内閣発足の前日だったため、新内閣と中国との関係に水を差したくないとの思いがあるようだ。名古屋市と南京市は友好都市提携を結んでいる。広報担当者は「歴史的事実は変えられない」としながら「30年以上の名古屋市と南京市の交流は政治、経済、教育と多岐にわたる。中日友好、両市の交流拡大を目指したい」とコメントした。
南京事件について研究書のある歴史研究家の話を聞いた。
現代史家の秦郁彦・日大講師は「すでに70年以上が経過しており、市長が調査して何かが分かるという話ではない。規模や内容については今でも議論があり、決着していない。歴史家に委ねるべき問題だ」と述べた。さらに「(南京事件を認めると)日中友好のためにならないと言うが、政府は公式に残虐行為の存在を認めている。これすら否定するのはごく例外の人だ」と批判。また「記念館には不都合な展示もあるだろうが、是正を求めるなら学術的観点から行うべきだ。政府や市長が言えば、内政干渉になる」と指摘する。
都留文科大の笠原十九司教授(比較文化論)は「事件が存在することは史学的にも結論が出ている」と述べ「南京には犠牲者の遺族が多く残っており、河村市長の発言は、南京の人々への名誉棄損だ」と非難した。
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まあ、(犠牲者)30万人は絶対真実と違いますわ。30万人以下でしたから、人口は。一般的な戦闘行為は残念ながらあった。誤解されて伝わっておるんではないかということを今感じておりまして。きちっともう一回検証し直す必要がある。
南京の記念館に私も行ってきましたけど、30万人、30万人と、どわーっと書いておりますよ。そこにすごい数の中国の小学生が来て、日本軍は大変残虐なことをしたということを見て帰っていく。今のままの展示だと、中国の皆さんがやはり日本人に対して大きな誤解をするのではないかというふうに危惧(きぐ)しております。
毎日新聞 2009年9月19日 地方版