福島刑務所(福島市南沢又)は、受刑者の医療費が08年度で4年前の2・2倍の1億円以上に増加し、対応に苦慮している。受刑者の増加や高齢化により、病気の治療で受診するケースが増えたのが原因だ。同刑務所の川村龍雄総務部長は「これ以上増加すれば、物品費などを削って費用を工面しなければならず、刑務所の運営に支障をきたす」と話している。
風邪など軽い病気は刑務所内の診療所で治療するため少額で済む。一方、糖尿病など中高年に多い病気にかかっている受刑者も多く、がんや脳腫瘍(しゅよう)などの重病患者もいる。外部の病院に診せると多額の費用がかかり、放射線治療で数百万円を請求されることもあるという。健康保険法では、受刑者には保険給付されないため、刑務所が費用全額を負担しなければならない。
同刑務所によると、05年3月末の受刑者は約650人だったが、今年8月末で2倍の約1300人に増加。60歳以上の割合は12%(約80人)から19%(約230人)になった。平均年齢は05年8月末の44・3歳から今年8月末で46・1歳に上がった。
入院件数は05年度の約40件から、08年度の約80件に倍増した。消化管出血や脳出血、心不全、心筋梗塞(こうそく)など循環器系の病気が多いという。
医療費は診察料や入院費などの「医療手数料」と医薬品などの「医療衛生資材費」がある。医療手数料は05年度の約2800万円から08年度の約7500万円に急増。医療衛生資材費は約1900万円から約2900万円になった。現在、8割以上の受刑者が投薬を受けているため、価格の安い後発(ジェネリック)医薬品を利用して経費を抑えている。
同刑務所は、受刑者が高額な手術や治療を受けるたびに、法務省に費用支出を申請して工面している。法務省矯正局は「受刑者を強制的に拘禁しているので、健康管理や治療は国の責任。必要なものには支出する」としている。【神保圭作】
受刑者の高齢化に伴う医療費の増加は、全国的な問題だ。法務省矯正局によると、全国75の刑務所で服役している60歳以上の受刑者は▽05年11・6%(7837人)▽06年12・2%(8671人)▽07年13・3%(9382人)▽08年14・5%(9823人)--と増加している。
医療関連予算は▽05年度30億2600万円▽06年度32億6800万円▽07年度37億7400万円▽08年度44億1200万円▽09年度49億100万円--となった。
60歳以上の新規入所者数も05年の3460人から、08年の4016人に増えた。ほとんどが窃盗で、刑務所に行き場所を求めて犯罪を繰り返す事件が後を絶たないという。
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■ことば
1921年に設置され、現在地は福島市南沢又。広さは約21万4000平方メートル。所内には、最高80代までの男性受刑者が収容されている。犯罪は▽窃盗などの財産犯27%▽覚せい剤使用など薬物犯25%▽詐欺犯8%▽粗暴犯5%--。ほとんどが再犯者で、平均刑期は2・8年。
毎日新聞 2009年9月19日 地方版