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【愛知】

河村市長、がん治療施設凍結表明

2009年9月19日

陽子線がん治療施設の建設凍結を表明する河村市長=市役所で

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 名古屋市の河村たかし市長は18日、複合医療施設「クオリティライフ21城北」(同市北区平手町)内に2012年度の開院を予定していた「陽子線がん治療施設」の建設を凍結すると表明した。

 河村市長は「本当に市民に必要な夢のある施設かどうか。公的医療は、予防医学や救急、周産期に集中すべきだとの意見もある」と説明。今月下旬にも放射線治療の専門家らによる公開討論会を開き、11月末までに建設の続行か中止を決断するとしている。

 ただ日立製作所とは昨年末に245億円で契約を済ませ、すでに設計段階に入っており、中止を決めた場合、違約金などが発生する可能性もある。河村市長は「まだ中止と決めたわけではない。(違約金は)今後の相談」と話した。

 陽子線など粒子線がん治療は、がん病巣に集中して照射でき、患者の痛みや副作用も少ないとされる。国内7カ所にあるが、医療費は300万円と高額ながら現状では保険が適用されず、患者数の伸びや採算性に疑問も出ていた。

 河村たかし市長が建設の凍結を決めた「陽子線がん治療施設」。会見では中止の可能性も示唆した。保健・医療・福祉の複合施設「クオリティライフ21城北」(北区平手町)の目玉として期待も大きかっただけに、関係者に波紋を広げている。

 市長の方針を伝え聞いた地元・北区選出の渡辺義郎市議(自民)は、直ちに市長室を訪ねた。推進派でもあり、面会後も「市民は期待している。工事は進んでいるし、地元も環境づくりをしてきた。とてもじゃないが、中止というわけにはいかない」と憤った。

 事業を落札した日立製作所は本来、11月着工を予定。渡辺市議は「6月までに30億円を使ったらしい。さらにかなりのお金をつぎ込んでいるはずだ。『あんなもんいかん』という学者もいるようだが、学者間の派閥争いもあるのでは」と疑問を投げ掛ける。

 この日朝、市長の方針を聞いた市の担当者も「目が点というか、凍結は想定していなかった」と打ち明ける。

 クォリティライフ21は総額600億円を投じ、計4施設が入る一大事業。西部医療センター中央病院は建設中だが、陽子線のほか、残る「重症心身障害児者施設」と「健康増進支援施設」も検討段階のままストップしている。全体5ヘクタールのうち、病院と駐車場部分をのぞく半分近くが更地の状態で、2011年度の開院を迎えることになる。

 (豊田雄二郎、白石亘、奥田哲平)

 河村市長の会見での一問一答は次の通り。

 −凍結の理由は。

 本当に有効か。全国に7つも代替施設がある。(計画通り)患者が年800人も集まるか。患者は日本中で計1000人という説もある。

 −採算性の問題か。

 いや。たとえ今は採算が取れなくても、10年後でも、市民にとって非常に夢がある施設なら別。そこを真剣に検証せないかん。

 −業者には。

 今朝、緊急に連絡した。いったん停止してほしいと。10月20日に起工式を予定しており、案内状も出さないかん状況なので、今がタイムリミット。

 −違約金の可能性は。

 これからの相談。いったん決めたことであっても毎年(返済に)20億円以上を使うのが、市民の命のために有効か。違約金は別個に考えればええ。

 −予防医学とは。

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)やインフルエンザ(対策)、ワクチン、マンモグラフィー(を充実させる)とかね。そういう診断をどんどん受けてもらえるようにする。病気にならないような健康づくりも。予防を大切にする名古屋にしようという考えはある。

 −クオリティライフ21城北はどうなる。

 病院建設は止めません。重症心身障害児者施設も何とかやらないかん。ただ、今は全体の箱ものをやめるということなんで。健康増進支援施設も別に考えている。

 −減税の財源を生み出そうとの意識は。

 医療を減税の財源にしようとは、いささかも思っていない。医療には起債してでも使って良いと思っているし、医療費全体のパイは増やす。

 −各地で大型事業を凍結する動きも。

 いや、医療ですから。たとえばダムとは全く違う。市民の命のために、より有効な施設をつくるのは、何らためらいがない。ただ今回の施設は本当に有効か、立ち止まって考えるのには遅くない。

 

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