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【緯度経度】ワシントン・古森義久 日本謝罪不要論の余波 (2/2ページ)
「日本はそのうえで戦後のめざましい復興、民主主義の活力ある確立、経済や技術の世界最高水準の発展を対外的に誇示すべきだ。現在と未来の平和的、民主的な役割を他の諸国に対して強調すべきだ」
リンド氏は南京事件や捕虜の扱い、慰安婦徴募、731部隊、三光作戦など日本が戦時に働いたとされる悪行の数々の「事実」を糾弾する側の主張どおりに全面的に受け入れる一方、歴史問題での和解には日本の謝罪や反省のほかに被害者側の前向きの対応が不可欠だと説く。
「韓国の指導層は自らの統治の正当性を示すために日本をたたく必要はもうない。中国共産党も自らの統治の正当性を支えるために国内の反日感情をあおってきたことは知られており、国民の日本嫌悪はそれほど強いわけではないのだ」
リンド氏はそのうえで日本に対しても西ドイツのアデナウアー方式の採用を提案する。同方式とは1950年代から60年代はじめまで西ドイツ首相だったアデナウアー氏がユダヤ人虐殺をすべて認めて反省しながらも、その非はナチスだけのせいにして、とくに謝罪はせず、一般ドイツ人の戦時の苦痛も強調しながらフランスとの和解を成しとげた経緯を指していた。
中央政府が戦争の相手でもない一民族の絶滅を計画的に進めるなどという行為のない日本をドイツと同列におくことは不公正ではあるが、日本にもう謝罪をするなと勧める点は米国の学者としては異色だといえる。
しかしこのリンド論文への反対論が同じ「フォーリン・アフェアーズ」9・100月号に編集長への投稿として短く掲載された。投稿者はワシントン在住の日本人ジャーナリストの土井あや子氏で、「日本は戦争や植民地支配で被害を与えた人たちに公式の誠意ある謝罪をなお述べる義務がある」と論じていた。
現代の日本に対し米国人が「もう謝罪するな」と説き、日本人が「いや謝罪を続けよ」と求める。日本の歴史問題の倒錯した構図だといえよう。