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きょうの社説 2009年9月19日
◎金沢おどり 「花街文化」さらに全国発信を
文化はその価値に気づき、評価する人たちが増えてこそ次の時代に継承されていく。1
9日に開幕する「金沢おどり」も6年目を迎え、金沢が育んできた茶屋街の文化や伝統芸を世に問い、一般の人々が「花街」の世界を共有する場としてすっかり定着した。その華やかな舞台にあこがれ、芸の道を志す若い女性が相次いでいるのは、「金沢おどり」が文化を継承する場として機能している証しだろう。新たな総踊り曲「金沢風雅(ふうが)」が披露された昨年は、京都や東京などからも花 街関係者が会場に足を運び、花柳界の関心が高まっていることをうかがわせた。今年も物語性のある演目や幻想的な演出など見どころたっぷりの舞台が用意されている。金沢の顔である「花街文化」をさらに全国発信する場にしていきたい。 ひがし、にし、主計町の3茶屋街は、伝統芸能の継承の場であるとともに、金沢の接待 文化や着物文化なども育んできた。日本の伝統を凝縮した世界であり、金沢でも最も日本的な空間といえる。「金沢おどり」が回を重ねてファン層を拡大していけば、「花街」が金沢にとって貴重な存在であるという認識も広がり、文化を支える力強い応援団になろう。 「金沢おどり」は芸妓衆にとっては1年の精進の成果を示す晴れの舞台である。とりわ け、長年のライバル関係にある3茶屋街が芸を競い合う真剣勝負の場であり、「今年はあそこがよかった」という観客の生の反応は演じ手の何よりの励みや自信になる。 花街の数や芸妓の人数は京都に及ばないが、芸の水準は決してひけを取らない。金沢の 「お家芸」ともいえる素囃子はすでに全国に知られた存在で、舞台芸術として全体のレベルをさらに引き上げることが「金沢おどり」の評判を全国に広げることになる。 「金沢おどり」が芸妓という職業に光を当てた側面も見逃せない。今年は若手6人が初 舞台を踏み、公演は例年に増して新鮮な息吹を感じさせるだろう。この中から花街を背負う「名妓(めいぎ)」と呼ばれるスターが育ってくることを期待したい。
◎自民党総裁選 新しい党の姿を見たい
麻生太郎前総裁の後継を選ぶ自民党総裁選は、文字通り党再生の試金石となる。若手を
代表する西村康稔、河野太郎両氏とベテラン議員らに推される谷垣禎一氏の3人が立った総裁選は世代間争いの構図になっているが、旧来の派閥の利害や政治力学による総裁選びでは、失われた有権者の支持を取り戻すのは難しかろう。解党的出直しの姿を目に見える形で示してもらいたい。党内の共通認識になってきた「健全な野党」に徹するという自覚をあらためて強く持ち 、民主党に対抗する党の政治理念と政策を明確に打ち出す必要がある。自民党の長年の課題である派閥解消の是非も争点であり、真正面から議論をしてほしい。 自民党が野党の立場から総裁選を行うのは、1993年、非自民の細川政権成立が確実 になった中で河野洋平前衆院議長を選んで以来、2度目である。衆院選敗北後の総裁選は、政権奪還の決意とエネルギーの強さを有権者に示す場であるはずだが、当初有力視された議員はいずれも出馬を見送り、党再建の活力がさほど強く感じられないのは残念である。 次期総裁の最大の仕事は、来年夏の参院選に勝つことである。55年の結党以来初めて 、野党として臨む国政選挙である。与党の時のように、予算の配分権も政策決定権も持たず、政権党の成果を誇示することもできない。戦いの武器になるのは、民主党の対抗軸となる国家ビジョンと具体的な政策、それを立案する党の能力と個々の政治家の資質である。 政策はもとより、再生に向けた党運営のあり方や、能力のある政治家の発掘、育成の方 法について各候補が意見を戦わすことも重要である。投票権を持つ議員と党員はそうした点も十分考慮して総裁を選ばなければなるまい。 総裁選の告示に先立ち、中堅、若手議員で作る自民党再生会議が提言の中で「自民党の 古い体質に対する有権者の拒否感」や「党内抗争に明け暮れる旧態依然の体質」を指摘した。党全体で真摯に受け止め、改革しなければならない点である。
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