都心部のマンションに多い機械式駐車場。空き対策に頭を悩ませる管理組合が増えてきた
都市部のマンションに多い機械式駐車場が、思わぬ“お荷物”となる事例が各地で発生している。車離れが進んだだけでなく、人気のミニバンなど車高制限に収まらない車も多くなったため、空きが増え、維持管理費の確保が難しくなってきたのだ。駐車場収入減がマンション管理全体に大きな影響を与えることもあり、早めの対策が求められる。 (宮内瑞穂)
福岡市中央区のマンション(築12年)は2年前、2段機械式3機(16台)の稼働を停止した。「築5年後には全体で半数ほどの空きができた」と前理事長(68)は話す。機械式の維持管理費(年間約50万円)を賄うことができず、マンション管理費の値上げ案が浮上。撤去も検討したが、約400万円の工費がかかるため、機械を停止し、必要になれば再稼働させる案に落ち着いた。
同区の別のマンション(築18年)は駐車場の利用率が下がったため、3年前に2段機械式(6台)を撤去して跡地を埋め戻し、3台分の平置きにした。理事長(69)は「10年以上たつと部品交換などで数百万円かかる」と理由を説明。約160万円の工費は、マンションの修繕積立金から工面した。「毎年の維持費がなくなったので、3年で回収できる」という。
◇ ◇
財団法人・駐車場整備推進機構(東京)の「駐車場よろず相談窓口」を担当する成瀬善果さん(56)によると、相談の9割が機械式駐車場関連という。
90年代、「駐車場完備」をPRに掲げる分譲マンションが増え、機械式の導入が進んだ。「高齢化やライフスタイルの変化で車を手放す人が増えた。車高制限を超えるミニバンなどが人気ということもあり、都市部では機械式駐車場余りが深刻化している」と成瀬さんは語る。
機械式駐車場の利用率が低下した場合、どんな対策が必要なのか。福岡マンション管理組合連合会(福岡市)などのアドバイスをイラストにまとめた。
まず需要予測。撤去後に駐車場不足が生じ、住民間のトラブルに発展した事例もあるので、慎重に行いたい。撤去する際は、自治体が定めた駐車場附置義務の条例にも配慮。また、同連合会の畑島義昭さん(67)は「住人以外に1台分でも貸せば、駐車場事業とみなされ課税対象になる」と注意を呼び掛ける。冒頭で紹介した事例のように稼働を止める場合は、「長期停止の後の再稼働は安全性から部品交換が前提になる」(大手メンテナンス会社)。
特に、駐車場収入をマンション管理費や修繕積立金に充てているケースは要注意だ。福岡市のマンション管理士、保田猛さん(64)は「管理費などを割安に設定できるので、業者はマンションを販売しやすい。しかし、駐車場収入が減ると、管理費値上げや修繕積立金不足に直結するという落とし穴がある」と指摘。畑島さんも「駐車場は独立会計が本来の姿。マンション全体の会計から切り離し、対策に取り組んでほしい」と呼び掛けている。
× ×
●こちら取材班
「介護現場の外国人労働」「生活保護」「女性管理職の悩み」に関する情報や体験談をお寄せ下さい。また、「取材してほしい」というテーマなどもお待ちしています。
× ×
●投稿・情報・ご意見は→西日本新聞文化部生活班
〒810─8721(住所不要)
FAX 092(711)6243
電子メール bunka@nishinippon.co.jp
=2009/06/04付 西日本新聞朝刊=