2009年 政権交代 鳩山内閣早くも公約違反? 隠れた官僚支配の温床壊せず
民主党の鳩山由紀夫代表は、記者でごった返す狭い民主党本部に設けられた「ついたて」前の会見から、ようやく開放された。
鳩山代表は16日、首班指名選挙で選任され、第93代、60人目の首相となった。直ちに首相官邸に入り、組閣作業に着手。午後6時から首相として、そして官邸で、初めての記者会見に臨んだ。
政権交代という積年の夢を果たし、官邸に「入城」し、首相として会見を行った鳩山代表は、会見場のエンジ色のカーテンを背に、こう第一声を発した。
「総理に選出をいただいた瞬間に、日本の歴史が変わるという、身震いするような感激を感じ、一方では大変重い責任を負った。この国を本当の意味での国民主権の世の中に変えていかなければならない。そのためには、いわゆる脱官僚依存の政治というものを今こそ世の中に問うて、そしてそれを実践していかなければなりません」
国民の期待を背負った鳩山首相、民主党政権は今後、「脱官僚」を旗印に、霞が関にメスを入れ、大なたを振るう。
しかし、早くもこの記念すべき就任会見自体が「官僚支配の象徴」であり、「公約違反だ」と指摘する声が上がっている。
慣例に基づく取材規制に守られた“永田村”
声の主は上杉隆氏。鳩山首相の弟、鳩山邦夫氏の公設秘書を務めた後、米紙「ニューヨーク・タイムズ」東京支局の記者となり、現在は「週刊文春」など雑誌メディアを中心に、フリージャーナリストとして筆を走らせる。
首班指名が滞りなく終わり、閣僚の呼び込みが始まった頃、上杉氏は永田町でこう息巻いた。
「鳩山代表、小沢一郎代表代行自ら、『民主党が政権を取ったら、会見はオープンにする』と、3度も約束した。にもかかわらず、最初の会見から果たされていない。事実上の公約を破り、国民の知る権利を侵害する行為で、極めて残念です」
長年の「慣例」で、官邸や国会、省庁など永田町での会見は、新聞社と在京キー局などが加盟する「記者クラブ」が、各組織と共同で開催することになっている。
首相官邸での取材活動であれば、「内閣記者会」、自民党本部であれば「平河クラブ」などと細分化されており、会見への参加は原則、それぞれの加盟社に限られる。
だが、民主党本部だけは違った。
「今回は5人の記者にお入りいただこうと思っています」
2002年、当時幹事長だった岡田克也氏(外務大臣に就任)が、週刊誌やスポーツ紙、海外報道機関、フリージャーナリストなど広くに記者会見を開放し、以降「どなたでも参加いただけます」とのスタンスを貫いてきた。
そのスタンスは民主党が政権を取ることが確実となった総選挙以降でも変わらない。投開票日の開票センターの会見や、連日、民主党本部で開かれた会見は、広く、国内外のメディアに開放された。
しかし、場所が官邸に移った途端、事情が変わった。会見への参加が許されたのは、内閣記者会に加盟する各社の記者、海外メディアの記者10人程度、そして、日本雑誌記者会に加盟していて、国会記者証を持つ5人の雑誌記者である。上杉氏は、官邸の外にいた。
断っておくが、この話は「大手メディアvs在野メディア」という対立構図で描こうとしているわけではない。「新政権vs官僚」という対立構図が、早くも透けて見えるのだ。
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