40%と低迷していた日本の食料自給率が70%まで改善したのでお目出度い
ちょっと古いネタだがスルーするのもなんなのでという程度の話。標題のおふざけはご存じのとおり、食料自給率について従来カロリーベースだったのが、2月10日の食料・農業・農村政策審議会で晴れて金額ベースに改めることになったので、それでみると、日本の食糧自給率は70%になった、という話。というか、この話自体ふざけてんじゃねーのって思うが。
基準を突然変えた理由は表向きにはいろいろある。簡単なところでは、野菜や果物などカロリーは低いが高価格で国産比率が高いものに焦点を当てたともいえる。また、カロリーベースだといつまでたっても先進国で最低レベルのままなので無意味ではないかという意見もあるようだ。
が、ぶっちゃけ、これまで、カロリーベースで40%だ、先進国で最低レベルだ、とかぬかしていたのは、なんらかの危機感を煽るための詐術だったわけで、その詐術支持勢力と今回の変更勢力との間に芳しい政治的な抗争があったのではないか。ま、このあたりは突っ込めそうだが突っ込むとうんこまみれになりそうなのでやめとこ。
とか言ってその近隣の話題かもしれないのだが、このルールちゃぶだい返しの2日前2月8日の"島村農林水産大臣記者会見"(参照)では、こんな話がある。なんか、ドリエル飲まなくても読んでてて心地よい睡眠に襲われる(てか、ドリエルは…)。
Q: 大臣、ちょっと話が変わりますけれども、新しい基本計画の中に盛り込む食料自給率の目標ですけれども、今まではカロリーベースで数値目標を立ててきましたが、今回から金額ベースの自給率も新たに設定するというような報道もありましたけれども、これについてはいかがお考えですか。
A: 型どおりの、まず回答から申し上げますと、(中略)。
それで今、ご指摘のあったあれなんですが、これはまだ私達自身の中でもそういう動きを断片的に聞くことはあっても、やっぱり10日の企画部会以降に我々はどう対応するかということですから、あまり何かこういうような話が先行していろいろ出てしまうと、かえってやりにくくなるといけないので、私達なりのことではいろんな情報を得ていますけれども、まだ発表段階ではない。ただ、今ご指摘のあったそのカロリーベースだけではなくて、金額ベースの目標も設定するんじゃないかという話は聞いてないわけではありません。
ととぼけている。が、ここでのQにある報道は、前日の7日の時点でNHKが"食料自給率に新指標を導入"を指しているのだろう。というわけで、既決事項のぼけぼけ感がいい空気を醸し出している。
で、結局どうよ?なのだが、18日の朝日新聞"食料の新自給率目標、カロリー基準で45% 農水省"(参照)を見るとわかるように並記状態ではある。
農水省は、15年度を達成年次とする新たな食料自給率目標を、カロリー(供給熱量)基準は45%、金額ベースは76%とする方針を固めた。与党などと調整し、3月に決める今後10年間の農政の指針「食料・農業・農村基本計画」に盛り込む。
両方の基準が明確になって大変よろしい…じゃなくて、それって矛盾してんじゃないのとか思うが、実際上は、カロリーベースでの食料自給率というのは無視されたということなのだろう。それと、「15年度」って、はぁ?である。
ところで、よく言われる日本の食糧自給率は最低という比較の元になる国際基準どうなのかとちょいと調べてみると、これは従来どおりカロリーが基準だ。じゃ、グローバルスタンダードでカロリーベースでいいのではとも思ったのだが、ところがちょっと調べたら昭和61年までは食糧自給率は金額ベースで算出していたわけだ。私なんぞにしてみると、え?みたいな感じである。さらに金額ベースが参考値になった(事実上隠蔽した)のは平成10年以降のこと。そういえば、食糧自給率が最低だとかいう議論が出てきたのは、最近のことだなと思い返す。
余談めくが、毎日新聞記事"食料自給率目標:現行の10年度から5年間先送りへ"(参照)が気になった。
自給率は60年度には79%あったが、その後は年々低下。最近は03年度まで6年連続で40%が続いている。与党内には「目標は高く」との声もあるが、有効な施策を講じなければ10年度には38%に低下するとの試算もあることから、農水省は「スローガン的目標は無意味」と判断した。
60年度の79%というのは金額ベースで、昨今の40%というのはカロリーベースではないのか。この手の話は毎日新聞だけじゃなくて他でも見られるのだが(参照)。どうなのだろう。
さて、総じて見ると、カロリーベースの統計がグローバルスタンダードであっても、そうした統計はすでに先進国では特に意味がないということなのだろうか。さらに現状では、途上国ですら、肥満の問題が起きている(もちろん、アフリカには飢餓の問題もある)。
畜産物については、カロリーベースでは、畜産物自体の自給率に飼料の自給率を掛け合わせるのだという。上質な肉を作っても飼料を海外から輸入していると自給率は下がることになるのだが…はて、なんだかな、と。
カロリーの自給率が大切という場合でも、日本の現状では無駄が多い。国民一人の一日当たりの総供給熱量は約2600キロカロリーだが、実際に食べた熱量は約2000キロ・カロリー(参照)。差、600キロカロリーは捨てているのだろう。
ああ、もったいない。
| 固定リンク
コメント
カロリーベースと金額ベースを恣意的に使い分けているとしたら問題ですね。いづれ重要な判断を誤りそうだ。
あと食料の無駄の問題。どこで無駄が生じているのだろうか。
投稿: (anonymous) | 2005.02.24 22:43
> 差、600キロカロリーは捨てているのだろう。
> ああ、もったいない。
環境税じゃないけど、
有機系廃棄物に税金をかけたらどうかな?と思う。
と言うか、率直に言って食料品の加工と小売。
この段階で出るゴミに対する課税。
「もったいない」部分、加工時に捨てる分や、
生産・流通後に捨てる分を減らすべく努力するだろうし、
その結果、流通を中心に全体で少しずつCO2削減に繋がりそう。
投稿: at | 2005.02.25 00:52
そもそも、今自給率を上げることが何の役に立つのか、よく理解できないのですが。
良く言われるのは戦争などで交通ルートが遮断された場合への対応ですが、そんな事態になれば石油がなくなって国内で農業ができなくなるから、平時にどれだけ自給率が高くても意味がないと思います。
あと考えられるのは、世界的に食料が不足して、輸入価格が高騰した場合の対応ですが、長期に渡って不足するなら、それだけ国内の農作物に価格競争力が付き、市場に任せても自給率は上がるでしょう。短期的な供給の変動なら、供給が増えたときと減ったときの損得のトレードオフを考えることになるので、自給率を上げる努力をするのが得か損か、分析が必要でしょう。
自給率をカロリーベースで考えるか金額ベースで考えるかについても、そのような分析に役立つかどうかで判断すべきなんでしょうね。
結局、そもそも何のための自給率向上なのかはっきりさせない限り、この手の混乱は続くのでしょう。
投稿: Baatarism | 2005.02.25 10:28
その600キロカロリーを削減することはできないのでしょうかね。
飲み会があるたびに、料理の量はこの1/2で十分なのではないかと思ってしまうのですが。
投稿: でぶじまん | 2005.02.25 10:28
>ああ、もったいない。
SPAに書け(失礼、笑)
600Kcalについてですが。
コンビニエンスストアでバイトしていたころ、食品は廃棄のロスを含んで価格が設定されていると聞いたような気がします。(まあ教えてくれた先輩も詳しい数字は知らないようでしたが。)
でも、まいにち結構な量の弁当やサンドイッチを捨てましたよ。2割を越えたかどうかは覚えていませんが、そのくらいいっていたかもです。「無駄」と「便利」のかねあいとして妥当なのかどうかは…どうなのでしょうね。飽食といいつつ、食卓にまで達しないカロリーはたくさんあるような気がします。
投稿: mori | 2005.02.25 23:07
>>SPAに書け(失礼、笑)
そういうことなのか!
投稿: momo | 2005.02.28 10:42