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社会問題・政治分野

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実は、日本の食料自給率はそれほど酷くなかった。

 日曜日に放送されたテレビ朝日のサンデープロジェクトで、日本の食料自給率が農水省のある意図のもとに、低くなってしまう統計方法がある時期導入され、そのために必要以上の食糧危機が喧伝されていることが明らかになりました。

 その問題点の根本にあるのは、総合食料自給率の算出方法にあります。食料自給率は、個別の品目ごとではなく、一国の総合的な自給率です。以下の二種類があります。

●生産額ベース総合食料自給率
生産額=価格×生産量で個別の品目の生産額を算出し、足し上げて一国の食料生産額を求める。
 国内の食料総生産額÷国内で消費する食料の総生産額です。
 
 生産額ベースで、統計を国際的に比較するとき、為替レートの変動の影響を受けてしまい、正確な国際間の比較が出来ない問題があります。

 そこでわが国の農水省では、1983年からカロリーベースで統計を出すようになりました。

●カロリーベース総合食料自給率
国民1人1日当たりの国内生産カロリー÷国民1人1日当たりの供給カロリー

 但しカロリーベースですと、そもそもカロリーが低い野菜などは、どんなに自給率が高くても、全体に影響しません。肉1kgと野菜1kgとを同等と考えるかどうかは難しいです。ですから、品目別では重量ベース、総合的な自給率というものを考える場合、カロリーベースというのは一つの考え方にしかすぎないのです。

 このため、カロリーベースを導入している国は、世界中でも日本と韓国だけです。農水省が、食料自給率を海外諸国と比較している数値は、勝手に農水省が他国の自給率をカロリー換算したものを、当事国の承認なく表記しているのに過ぎません。

 そこでこんな矛盾も起きています。
イギリスの公式発表では、この20年間で15%の深刻な農作物の自給率低下(経済ベース)に悩まされているのに、農水省の発表ではイギリスは40年間で27%も向上しているとしているのです。

 また、畜産酪農品の場合、実際に国産製品が供給するカロリーに、飼料自給率が乗じて計算されます。(つまり、国産豚であっても飼料が100%輸入品であれば、自給率は0%になるということだ。)このため牛乳の自給率ほぼ100パーセントなのに、カロリーベースでは41%にしか過ぎないことされているのです。それでは、消費者に誤解を受けると業界団体は、必死になって「牛乳は国産だ」キャンペーンを展開しています。

 さらに供給カロリーには、余ったコンビニ弁当など廃棄分の3割も含まれています。廃棄分を除いて計算すれば、カロリーベースでも54%になるそうです。加えて、自足自給している農家の生産物はカウント外となりますので、もっと実際の自給率は上がることが予想できます。

 では世界標準の生産額ベースで計算した場合の食料自給率は、どの程度かというと、日本の場合実に66%となるそうです。果物に至っては9割。野菜も4割程度です。
 前出のイギリス49%なので、イギリスの方が深刻な食糧危機に面していることになってしまいます。

 日本より食料自供率が低い国が存在することは、実は農水省にとって都合の悪い数字なのです。

 カロリーベース食料自給率の導入の背景には、83年当時、熾烈になってきた農産物(牛肉・オレンジ)自由貿易化交渉対策として「日本の農業の弱さ」を強調するために編み出されたものだったのです。

 農業の国内生産額でみると、日本はアメリカの1580億ドルに次ぐ793億ドルで、世界第2位。EU諸国はもとより、農業大国ロシアや豪州の3倍超もある。食料輸入大国どころか、日本は“農業大国”であるという隠された事実が浮上してきます。

 ではなぜ農水省が「カロリーベース食料自給率」にこだわるのでしょうか。その理由は、次のように考えられます。

 先進国で最も低い自給率”という印籠を使い、“国民の食を守る”という錦の御旗を掲げた運動の行き着く先は、「農水省の省益確保」に他なりません。

 昨年、65億だった自給率予算は、今年2.5倍の166億円を計上。2009年度概算要求に至っては、今年比18倍の自給率向上の総合対策を盛り込んだ3025億円と発表した。今年、17億円(関連予算を含めると34億円)を計上した自給率広報戦略も来年度予算で同額請求しています。

 これらの予算の中身をじっくりみていきますと、表面上は自給率向上を謳いながら、すべては米の減反維持存続政策が並んでいるのです。
 それも米価の高値維持と、減反のための納税負担という二重負担を国民に負わせることで、農協と天下り団体が何ら努力しなくても生き残れる道をつくるためなのです。そして、米にまつわる政・官・業一体の利権構造を守ることが目的なのです。
 つまりは、国民の食料が危なくなるからお金をくれという論理。これは一種の「タカリ制度」といっても過言ではないでしょう。

 政府の補助金の実態として、例えば家畜向けのえさ米を例にしてみます。
 10アールあたりのえさ米の価格は12万5千円。これは同じ家畜向けのコーン10万円と比べて、作付けする農家にとって2万5千円も利益の出ます。このうち9万3千円が補助金。
 これでは、コーンを栽培している農家に対して、不公平であるし、酪農家にとっても、補助金が将来なくなったとき、えさ米の供給がどれくらい保証されるのか不安であるようです。

 もう一つの問題点として、民主党の進めようとしている零細農家への補助金のバラマキについても、注意が必要です。
 この件について、文藝春秋新年号「農水省 食料自給率のインチキ」と題した浅川芳裕氏の論考を紹介します。
 浅川氏は、「日本の平均のうち面積は1haだから弱い」という農水省の“常識”の数値は何なのか。実は「地主当たりの農地面積」であるとしています。(中略)

 そして浅川氏は、農業においても「パレートの法則」が存在していることを指摘しています。
 肝心なのは、その耕地をつかって実際に生産をおこなう「事業的農業者」の耕作面積が増え、生産性がどれだけ伸びたかではないか。事業的農業者一人当たりの生産量は1960年の4.3tと比較して、2006年には26t。過去40年に6倍も生産性が上がっている。物価変動部分を取り除いた実質生産額ベースの生産性でも同年比で5.2倍となっている。

 約200万件の販売農家のうち、売り上げ1000万円以上の農家は全体の7%で14万件だが、彼らが全農業生産額8兆円の60%を上げている。つまり、私たちの胃袋の半分以上はすでに、14万件の成長農場に支えられているのだ。

 このように日本の農業でも、約1割の生産者で、6割の生産をカバーしているわけです。これを食糧自給率の大義名分で、ほとんど農業に従事していない兼業農家が中心となっている残り9割の零細農家救済のために、補助金をばらまくことを民主党は考えているようです。(自民党の農政も大して代わりありませんが。)

 もし民主党が生活者のための農政を標榜するなら、弱い農家を保護して、量の確保を補償することではないと思います。
 消費者の視点に立って、安くて美味しくて、安全な食品の確保のために、“やる気があり経営力に優れた農家”を育成するべきではないでしょうか。

 次の民主党政権の課題として、強い農家を育成して、消費ニーズに応える食糧自給率の質的改善と共に、特に米価の引き下げによる消費拡大策を求めたいと思います。

 そのためにも、補助金目的の兼業農家や休眠農家の土地を農業企業が取得できるようにして、農業の産業化、大規模化によるコストダウンと収益性の改善の方へ、農業政策を変更していくべきでしょう。

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