元ゲームデザイナーの「がききち」氏が、自身の公式ブログ『月光はBLOOD EYE』でゲーム業界の裏話を暴露している。マイクロソフトのゲームハードXbox360から、ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(SCE)のゲームハードPS3にゲームを移植する場合、SCEから「360版と同じは認めません。追加要素を結構入れるように」と、ほぼ命令に近いかたちで指示を受けるというのだ。

実は現在、Xbox360版『テイルズ オブ ヴェスペリア』がPS3で完全版となって発売されることになり、多くの『テイルズ オブ ヴェスペリア』ファンがゲームメーカーに激怒している。PS3の完全版はかなり多くの追加要素が含まれており、Xbox360版を購入したファンにとって、あまり嬉しくない状況となっている。

そのことに対して「がききち」氏は「私は他ハードに移植することを悪いと思ったことが無いので、何が問題なのかがわからない」としながらも、以下のようにコメントしている。

まず360で作る、というのは、とてもメーカーにとっては作り易かったりする。自分の作ったゲームの話だが、マイクロソフトと360独占契約(他ハードで1年出さない等)すると、開発資金を結構くれる。サポートも早く充実している。SCEはあんまりお金を(全くかも)出してくれない。サポートも混乱気味で頼りない(私のいた当時は)。加えて360は開発しやすい。その分コストが安くなる。だからまず360で出すことになる(低コストで開発)

でも360では売れない(コスト回収できない)。PS3に移植して出したい(元があるので低コストで出せる)。するとソニーから「360版と同じは認めません。追加要素を結構入れるように」と言われる。追加要素が無ければ審査は通らないのだ。テイルズがどうなのか知らないが、私の作った360からPS3への移植作ではそうだった。「追加要素は入れなくてはならない」それは、ちょっとやそっとの追加や変更では認められない

さらに、こういうモノを入れてくれ、とSCEから要望があったりする(強制ではないが)。なので私たちは1年かけて移植+追加をした」※ブログより引用

「がききち」氏は最終的に「この一連のテイルズシリーズの問題は、メーカーとユーザーのよくあるすれ違いの例だと私は思う。SNKしかり、コンパイルしかり。ここを読み違えると、テイルズシリーズは死ぬことになる。メーカーは人間を見るべきで、ユーザーを見てはいけないのだ」と話している。確かにそのとおりだ。ゲームメーカーはゲームファンに楽しんでもらうためにゲームを作っているのだし、ゲームファンはゲームを楽しむために購入している。そこに悪意は何一つないわけで、あとは相互で理解をしつつ、次回への課題として改善をしていけばいいのだ。

この一件を伝えた『アタシ的ゲーム速報@刀』の管理人は「さぁ、行くぞ!無理やりプラスした追加要素のゲーム世界へ!」や「完全版ってことはXbox360版は不完全版ってことかお・・・・・」と、皮肉まで書いている。

Xbox360は非常に良質なゲームソフトを多数出しているハードだ。しかもPS3よりも開発がしやすいという声もある。開発の補助金が出るのであれば、Xbox360版からはじめに作りたいと思うのが当然だ。PS3のSCEは、今後も追加要素をゲームメーカーに求めていくのだろうか?

※その後『月光はBLOOD EYE』ブログの記事は削除されている(2009/09/16/16:35)