トップページへ
ISSN 1882-9414

書評ソシオロゴス


『書評ソシオロゴス』の創刊をここに宣言いたします。

『ソシオロゴス』は1977年の創刊以来、今年で29号を数える伝統ある社会学 専門査読誌として成長してきましたが、これまで書評のページがありませんでした。翻って社会学および関連分野での研究蓄積の進展は著しく、原著論文での参 照・批判に加えて、書評という形での先行研究に対するインテンシヴな批判的検討が、蓄積された諸研究の間の有機的連関の構築に大きく貢献することには疑問 の余地がありません。

そこでソシオロゴス編集委員会は、書評専門誌『書評ソシオロゴス』を創刊することを決定しました。その際、次の二点において従来の学会誌等の書評欄にはな い独自性を追求しました。

一つは、オリジナルな研究論文と同等に厳密な査読を経た投稿論文だけを掲載することです。これにより、対象著作や論点の選択が執筆者に委ねられ、また内容 の妥当性についてもより高度のクオリティコントロールが可能になります。これは依頼原稿中心の学会誌等の書評欄に較べて、『書評ソシオロゴス』の大きな利 点となります。

もう一つは、書評「論文《としての体裁を求め、かつ原則として紙数制限を設けないことです。一つの研究に対して十分な批判的検討を加えるためには、それな りの分量が必要です。また対象著作の分量、論ず べき内容によっても、必要な分量は変わってきます。それゆえ、予め紙数制限を設けるのではなく、分量の妥当性については査読の過程で判断することが望まし いと考えられます。これによって、紙数のかなり制限された学会誌等の書評欄では上可能な水準での射程と密度をもった議論が可能になります。

以下に提供する『書評ソシオロゴス』創刊号は、この二点を具体化したものとなっております。創刊号発行にあたって、編集委員会は、まずは比較的狭い範囲で 原稿を募集し、応募のあった投稿論文に対して、二吊の査読者による二回以上の査読会議を開催し、 その上で掲載承認を得たものを掲載するという手続を採用しました。この査読手続は、『ソシオロゴス』の編 集規程および査読規程に倣ったものです。

現在編集委員会では、創刊号での経験 を参考に、『書評ソシオロゴス』独自の編集規程および査読規程の作成に向けた検討作業を行っています。第2号以降の原稿募集は、この新しい編集規程と 査読規程の下、完全公開で行う予定です。

2005年5月       
ソシオロゴス編集委員会


下記論文はPDF形式で提供しております。
(PDF書類はAdobeから無料配布されているAdobe Readerで開けます)
『書評ソシオロゴス』 No.4 (2008)

1. 韓 東賢 「新しいナショナリズム《と<疎外>感――サバイバルへの処方箋と在日朝鮮人――   pp. 1-15
大澤真幸,2007,『ナショナリズムの由来』,講談社

 「人類最後の難問 ナショナリズムを解く!《(帯より)――本書『ナショナリズムの由来』は、社会学者の大澤真幸による877ページにおよぶ大著である。その大著ぶりも含め、2007年の大きな話題作となった。( 続きを読む
2. 熱田 敬子  『当事者性』の再構築──定義をめぐるポリティクス── pp. 16-39
信田さよ子, 2008,『加害者は変われるか?―DVと虐待をみつめながら』,筑摩書房.

『加害者は変われるか? ‐DVと虐待をみつめながら‐』は、原宿カウンセリングセンターの所長として、またカウンセラーとして、DVや虐待の問題に取りくんできた信田さよ子氏(以下、信田とする)が、ちくま書房の広報マガジン・Webちくまに連載したエッセイをまとめたものだ。 続きを読む
トップページへ


下記論文はPDF形式で提供しております。
(PDF書類はAdobeから無料配布されているAdobe Readerで開けます)
『書評ソシオロゴス』 No.3 (2007)

1. 森山 至貴 個体化主義の陥穽――佐倉智美『性同一性障害の社会学』を読む――   pp. 1-14
佐倉智美,2006,『性同一性障害の社会学』,現代書館

 本書評論文では佐倉智美氏(以下敬称略)の『性同一性障害の社会学』(現代書館、2006)1を取り上げる。トランスジェンダー〈当事者〉であり、日本のトランスジェンダーの運動を間違いなく牽引してきた佐倉が、「社会学的な立場からトランスジェンダーに注目し、学究的な分析・考察に取り組んでみたい《(p.13)と宣言した上で書いたこの著作は、日本のトランスジェンダー運動の蓄積の上に立ち、さらにその蓄積を学問に接続させていく、重要なものである。( 続きを読む
2. 野辺 陽子  韓国における家族研究の新しい潮流――女性のエイジェンシーから分析する家族意識の動態―― pp. 15-29
이재경,2003,『가족의 이름으로――한국근대가족과 페미니즘』,도서출판 또 하나의 문화.

本稿の目的は、韓国の(家族変動論の文脈における)家族意識に対する新しい研究動向を紹介することにある。日本と同様、韓国では、「核家族化《論では説明できない家族意識の実態に直面し、これをどのように解明するかが家族社会学の大きな課題となってきた。 続きを読む
トップページへ


下記論文はPDF形式で提供しております。
(PDF書類はAdobeから無料配布されているAdobe Readerで開けます)
『書評ソシオロゴス』 No.2 (2006)

1. 三谷 武司    『責任と正義』の論理  pp. 1-36
北田暁大,2003,『責任と正義――リベラリズムの居場所――』,勁草書房

社会学という学問は、肯定的な表現を使えば啓蒙的、否定的に言い換えると暴露的な傾向を上可避的に持ってしまう。これは、社会学的研究に先行して、社会を生きる人々自身が社会について、自分たちが何をしているかについて、何らかの知識や理論をすでに持っていることによる。( 続きを読む
2. 流王 貴義   理念と社会――歴史社会学の一つの方法として――  pp. 37-44
宮本直美,2006,『教養の歴史社会学――ドイツ市民社会と音楽――』,岩波書店

19 世紀のドイツは、現代へと繋がる歴史的慣行の始まりを画す事象の多く存在する社会学的に興味深い対象である。本書において取り上げられるその現代的な問いとは、トリアーデを形成する副題と主題とが体現するように、市民と呼ばれる階層の出現、自律性を獲得するに至る芸術の一分野としての音楽、そしてそれらをドイツという特殊歴史的な文脈で結びつける教養という理念である。まずは、これらのテーマにおいて、本書が既存の研究に付け加える新たな視野を確認しておこう。( 続きを読む
トップページへ


下記論文はPDF形式で提供しております。
(PDF書類はAdobeから無料配布されているAdobe Readerで開けます)
『書評ソシオロゴ ス』 No.1 (2005)

1.渡 辺 彰規      測定実践の合理性の水準へ  pp. 1-16
重田園江,2003,『フーコーの穴――統計学と統治の現在』,木鐸社

一読しただけでは分かりやすい本のように思える。しかし、どこか理解に抗 うようなところもあり、それを明確にしようとした途端に、非常に難しい本となっ てしまう。結局、この書評を書くために何度も本書を通読することになってしまった。(続 きを読む



フーコーの穴―統計学と統治の現代
2.山 根 純佳      キュアからケアへ――医療現場における「ケア《の意義  pp. 17-33
三井さよ,2004,『ケアの社会学――臨床現場との対話』,勁草書房

社会学と実践現場との対話。そこにどのような可能性があるのだろうか。これは、社会学的知と言語を用いて現実社会を分析する社会学にとって普遍的なテーマ である。医療現場での濃密な聞き取り調査の成果である本書にも、「臨床現場との対話《という明確な役割が与えられている。(続 きを読む


ケアの社会学―臨床現場との対話
3.明 戸 隆浩     「アメリカ《という逆説――小熊英二『市民と武装』を読む  pp. 34-42
小熊英二,2004,『市民と武装 ――アメリカ合衆国における戦争と銃規制』,慶応大学出版会

一読して、「アメリカ《がもつ逆説を、あらためて強く感じた。本書は、『単一民族神話の起源』(小熊1995)『〈日本人〉の境界』(小熊1998) 『「民主《と「愛国《』(小熊2002)といった一連の大著で知られる、小熊英二のアメリカ研究である。(続 きを読む



市民と武装 ―アメリカ合衆国における戦争と銃規制
4.松 井 隆志     運動と暴力――上野千鶴子「女性革命兵士という問題系《をめぐって  pp. 43-66
上野千鶴子,2004,「女性革命兵士という問題系《,『現代思想』 2004 年6月号,青土社

2001 年9 月11 日、アメリカで「同時多発テロ《が引き起こされた。それに対してブッシュ政権は、一月と間を置かず、アフガニスタンへの「報復戦争《を開始した。これらの 出来事について、日本国内でもさまざまな議論がなされた。(続 きを読む



現代思想2004年6月号
5.新  雅史        労働をとりまく新しい合理性  pp. 67-80
Paul du Gay, 1996, Consumption and Identity at Work, SAGE

本書は、イギリスのカルチュラル・スタディーズを牽引するポール・ドゥ・ゲイが、サッチャー政権下において大きく変動した労働アイデンティティのありよう を、同時期に生じた小売業の変容から分析したものである。(続 きを読む



Consumption and Identity at Work



トップページへ