75年の調査開始以来初めて、住宅地、商業地ともに全都道府県で下落した09年の基準地価。下落率の大きかった10カ所には、東京都港区と福岡、名古屋両市の商業地が名を連ねた。東京圏では銀座とその周辺で2~3割も下落。不況で海外の高級店が出店計画を撤回する一方、低価格の衣料品店の進出計画が明らかになるなど、地価下落が街並みにも反映し始めている。
東京の商業地で下落が目立ったのは、都心の新橋や虎ノ門、銀座などで、下落率は19・0~28・5%。国土交通省の担当者は「1~3月に最も景気が悪化し、高いブランド力でも抗しきれなかった」と分析。港区の不動産会社社長も「景気回復の兆しが見えた昨春と比べ、賃料相場は2割前後下がった。個別交渉でさらに安くしているところが多いのでは」と指摘する。
銀座通りと晴海通りに面した商店など約230社で組織する「銀座通連合会」によると、「通り沿いは閉店するとすぐ次が入ったが、最近は空室のままも出てきたと聞く」という。昨年12月には、仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の商品を扱うLVJグループが、銀座・数寄屋橋交差点近くに完成予定のビルへの出店計画を撤回した。
一方で、「昨秋のリーマン・ショック前と比べて賃料が下がり、空き店舗も増え、出店しやすい環境」と話すのは、5月に初の銀座店をオープンさせた紳士服専門店「AOKI」の広報担当者。場所は全国最高価格の「明治屋銀座ビル」(銀座2丁目)近くで百貨店やブランドの路面店がある一角だ。ヴィトンが撤回したビルには米カジュアル衣料大手の「ギャップ(GAP)」が出店を計画しているとも報じられた。
銀座周辺では都道府県のアンテナショップも増える傾向にある。東京駅そばの八重洲には7月、福島県が出店。4月末にOA関連ショップが退去した後に入ったという。財団法人・地域活性化センターは「予算が厳しい自治体でも借りやすい賃料になっているのでは」と話している。【石原聖、合田月美】
毎日新聞 2009年9月18日 東京朝刊