16日に誕生する民主党中心の新政権に、県内の建設業界や自治体が戦々恐々としている。先の衆院選で、同党が、道路予算に充てられてきたガソリン税などの暫定税率を廃止するとマニフェスト(政権公約)に掲げていたからだ。代替財源の有無など税制改革の全体像は不透明ながら、単純に暫定税率をやめた場合、県の道路予算の2割程度に穴があく計算となり、道路整備はもちろん、公共事業への依存度が高い地場経済に影響が出る恐れがある。 (佐賀総局・東伸一郎)
「新政権の政策がまだ見えないので何とも言えないが、(建設業界が)相当厳しくなることは覚悟している」。県建設業協会の川副正康専務理事は表情を曇らせる。
小泉改革で公共事業費の削減が続き、県内の道路投資額はピークだった1995年度の約601億円から2009年度は半分以下の約281億円に落ち込んだ。
信用調査会社・帝国データバンク佐賀支店によると、県内建設業は受注額に占める公共事業の割合が54.1%と全国でトップ5に入る。鴛海幸一支店長は「暫定税率が廃止されると、中小業者の倒産や合併が相次ぎ、業界再編の波が押し寄せる」と指摘する。
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道路整備に使い道を限定した道路特定財源は09年度から一般財源化されたものの、自民党道路族や国土交通省の抵抗に遭い、ガソリン税や軽油引取税などの税率を本則(本来の税率)の約2倍にする暫定税率は維持。新設された交付金の導入で「一般財源化」は骨抜きになり、道路予算は事実上温存された。
以前の道路特定財源相当額として、09年度に県の収入となったのは総額約109億円で、うち暫定税率分は約54億円だった。同年度の県の道路予算は約281億円。つまり、暫定税率が廃止されれば、道路予算の約2割が消えることになる。
県幹部の一人は「今でも乾いたぞうきんを絞られている状態なので、(暫定税率が廃止されれば)歩道整備など生活道路の予算がなくなり、県民生活に悪影響が出るのでは…」と懸念する。
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建設業や道路行政に大きな影響を及ぼす暫定税率の廃止。ただ、全国ベースでは約2兆5千億円の減税となる。これは消費税1%の減税に匹敵する額で、消費者には廃止歓迎の声も多い。
さらに、民主党は地方財政に穴があく約9千億円について、ほぼ同額となる国直轄公共事業への地方負担金を廃止する案を提示。また、新政権の政府税調には全国知事会など地方6団体の代表が参加し、地方税の在り方を決めるという。
政府税調への地方6団体参加について、県政策監グループの担当者は「今までは外野から陳情していたが、これからは『内野に入れ』と言われている。暫定税率の廃止が地方に影響が出ないようにするにはどうすれば良いのか建設的な議論をしたい」と前向きだ。
=2009/09/11付 西日本新聞朝刊=