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物流業界ニュース

「環境」に対応し貨物鉄道へのモーダルシフトの確かな道筋を

国交省が鉄道貨物輸送インフラのグランドデザイン策定へ検討会

貨物鉄道のインフラ整備を進めモーダルシフトを計画的に拡充しようと国土交通省が「貨物鉄道インフラのグランドデザイン検討会」を発足させた。輸送力の制約から鉄道へのモーダルシフトが十分には進んでいないとして輸送力の増強に向けたインフラ整備のグランドデザインを年度内をめどに策定しようというもの。今年12月にコペンハーゲンで開かれるCOP15(国連の気候変動枠組み条約締約国会議)で議論されるポスト京都議定書≠フCO2削減目標の設定などをにらんで、国内対策の重点対策と位置づけられている運輸・物流分野の効率化対策の柱として鉄道へのモーダルシフトを位置付ける。

しかし、現在進められている貨物鉄道の輸送力増強計画は、2010年度末までに終了する。このため、引き続き輸送力増強を進めるため次の計画を策定することにした。

●15年にわたる東京〜福岡間の長編成コンテナ列車化事業

鉄道輸送の主要インフラであるレールは20年前の国鉄改革で6分割されたJR旅客会社が保有する。このため、貨物列車を運行するJR貨物は旅客会社にアボイダブルコスト(貨物列車の運行に係る費用)という独自の計算方法ではじき出される使用料を旅客会社に支払うという方式で運営されている。ひとつしかない全国ネットのレールを貨客それぞれの列車が共同利用することになっており、輸送力増強にも各社間の調整など難しい問題が横たわっている。このため、JR貨物の輸送力増強にも各種の制約があり国交省は補助金の交付などで対応してきた。

この15年その主要施策となってきたのが、鉄道貨物輸送の大動脈とされる東海道・山陽線の輸送力増強事業。これまで24両編成(1200トンけん引)が限度だったコンテナ列車を26両編成(1300トンけん引)にして輸送力を拡大するため、変電設備の増強や待避線の延伸などの工事を行うもの。97年度に東海道線(東タ〜吹田間)、07年度に山陽線(吹田〜北九州間)の事業を終え、現在、北九州〜福岡間の増強工事が2010年度末完成予定で進められている。この効果として国交省では、東海道線で年間74万トン、山陽線で年間38万トンの輸送力が増大され、北九州〜福岡間でも年間17万トンの輸送力増強が見込まれるとしている。

●今年度補正予算で具体化する北の大動脈の拠点・隅田川駅の改良事業

コンテナ列車の長編成化による輸送力増強事業は、東海道・山陽線に続く大動脈である東京・隅田川〜札幌貨物ターミナル間の北の大動脈≠ナも今年度から工事に着手する。09年度補正予算で補助金の交付を得てJR貨物が実施するもの。すでに20両編成での運行ができる同区間だが、首都圏の玄関口である隅田川駅では20両編成のコンテナ列車に積まれたコンテナを隅田川駅では一括して処理ができないため長編成コンテナ列車の入換作業などが伴う。これを改善するため、20両編成列車対応の着発線・コンテナホームの延伸などの工事を行うほか、田端機関区の機能を隅田川駅に移設する工事を行う。

●貨物駅のE&S化、IT・FRENS活用の輸送枠確保も

また、貨物駅のE&S(着発線荷役方式)化を推進して貨物駅でコンテナを本線上の列車から積み卸しできるように改良しているほか、新情報システム「IT・FRENS」を活用した輸送枠の自動調整機能による不急貨物を空いている列車に自動的に振り分けることなどで、売れ筋列車の供給枠の拡大・閑散列車の積載率向上など輸送力拡大を図っている。

●「貨物鉄道のモーダルシフト拡大へインフラの道筋を」と鉄道局

「鉄道貨物インフラのグランドデザイン検討会」の初会合で国土交通省は「貨物鉄道は、地球温暖化対策、若年労働力の減少によるトラック運転手不足などの観点から大きな期待がもたれている。ポスト京都議定書も視野に中長期的な視点でモーダルシフトの目標を設定するとともに、目標達成のために必要なインフラ整備のあり方について検討しグランドデザインを策定したい。低炭素型物流システムの実現は避けて通れない大きな課題だ。この検討会を通じて貨物鉄道へのモーダルシフトについての確かな道筋を見出したい」(玉木良知鉄道局次長)と検討会設置の意義を説明した。年度内をメドにまとめられる貨物鉄道のインフラ整備についてのグランドデザインはどんな形でまとめられるか物流界の注目が集まっている。

カーゴニュース8月27日号

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