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【社会】

防衛省 PAC3追加要求 変わらぬ官僚主導

2009年9月15日 朝刊

今年4月、東京・市ケ谷駐屯地に展開したPAC3

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 前年度比3%増という積極的な二〇一〇年度防衛費の概算要求を打ち出した防衛省。弾道ミサイル迎撃(MD)に使う地対空ミサイル「PAC3」の追加配備について、「民主党にも受ける」として、「背広組」と呼ばれる内局主導で決めていたことが分かった。MD導入自体が官僚主導で決まった経緯があり、変わらぬ体質が浮き彫りになった。

 防衛省の予算は、「制服組」と呼ばれる陸海空の各幕僚監部がまとめ、大臣官房、防衛政策局などの内局が承認する。PAC3は消極的だった航空幕僚監部を内局が押し切り、九百四十四億円の追加配備費を計上した。

 内局関係者によると、今年四月、北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン2」を発射した際、民主党議員からも「地元へのPAC3配備」を求める声が出たという。

 PAC3は、〇四年十二月に閣議決定された〇五年度以降の「防衛計画の大綱」の別表で、「基幹部隊」「三個高射群」と明記されている。

 高射群は侵攻する航空機を迎撃する目的で全国に六個あるが、弾道ミサイル対処のPAC3は埼玉、岐阜、福岡各県の三個高射群に限定して置かれている。

 追加配備は北海道、青森、沖縄各県が増え、「六個高射群すべて」となるため、「防衛大綱の修正が欠かせない」(外薗健一朗空幕長)。だが、民主党は今年十二月に予定される防衛計画の大綱の見直し作業を先送りさせる方針だ。

 関係者は「部分修正なら民主党も応じるはず」というが、「まず空気を読め」と批判する制服組幹部もいる。政権政党となる民主党は「官僚支配の打破」を打ち出しており、防衛省の思惑通りにいきそうもない。

 もともとMDは官僚主導で導入が決まった。事務次官だった守屋武昌被告(収賄罪で有罪判決、控訴中)が「米国は開発に十兆円を投じた。同盟国として支援するのは当然だ」と自民党を説き伏せ、〇三年十二月の閣議で導入が決定した。

 日本のMDは、飛来する弾道ミサイルを洋上のイージス護衛艦が発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、撃ち漏らしたら、PAC3で対処する二段階方式。防衛省は米国からの導入に約八千五百億円を投じている。

 

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