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京都地検検事 立川英樹さん2009年09月14日 検事を志した二つの理由 「裁判官、検事、弁護士の法曹三者の中で、どうして検事を選んだのですか」 検事に任官して今年で4年目になりますが、何度となくこの質問を受けました。私は、検事という仕事のうち特定の部分に魅力を感じて任官したわけではないので、改めて聞かれると答えに窮してしまうのですが、あえて言うのであれば「刑事裁判で被害者の声を代弁できるのは検事だけであること」「法曹三者の中で、罪を犯した者の更生に一番助力できるのが検事であること」。この2点に魅力を感じたとお話しするようにしています。 ■ □ ■ まず前者についてご説明します。私が任官した当時は、被害者や遺族が刑事裁判に主体的にかかわる制度は整備されておらず、これらの方の声をいかに刑事裁判に反映するかは検察官に委ねられており、私は、この点に大きなやりがいを感じたのでした。昨年末から被害者参加制度が始まり、被害者や遺族の方が直接、刑事裁判に関与していただけるようになりましたが、そのお気持ちなどを刑事裁判において立証していくことは、今なお検事にとって大きな責務であると考えています。 次に、後者についてですが、検事というと法廷で被告人を糾弾し、裁判所に対してとにかく重い刑を求める役割の人、という印象を抱かれる方もたくさんおられると思います。ただ、私たちは、やみくもに重い刑が相当であると考えているのではなく、被告人に有利な事情も総合的に考慮して捜査や公判を行っているのです。 とりわけ、自分の犯した犯罪を自白し反省しているか否かは、その被告人に対する求刑を決定する際などに重要な要素となってきます。罪を犯した当時の状況を思い出し、なぜ犯罪に及んでしまったのかを供述することは、自己の行為を顧みていることに他ならず、更生に向けての第一歩を踏み出していると評価すべきだと思います。机ひとつを隔てただけの状態で容疑者と向き合い、自白供述を引き出すことができるのは、法曹三者の中では検事だけであり、私は、この点に検事の魅力を感じたのでした。 自白に関して様々な議論がされていることは承知していますが、他の証拠から、その容疑者が罪を犯したことが合理的に推認される以上、更生のためにも、自白を獲得する情熱を失ってはならないと考えています。 ■ □ ■ 5月から裁判員裁判が始まり、間もなく京都でも同制度下で初めての裁判が開かれることとなりますが、検事を志した当時の気持ちを忘れず、皆さんにとって分かりやすい裁判を実現できるように努めたいと思っています。
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