2009年9月17日0時0分
新しい連立政権で民主党は今後どのような経済政策を打ち出すのだろうか。設備投資減税などといったこれまでの成長政策とは趣が異なるようだ。国民の所得を補い生活の質を守ることで不安を和らげ、前向きにチャレンジする気持ちを引き出す、ということではないか。
そういう国民の心を引き出す上で特に注目されるのは地球環境政策である。鳩山代表は2020年までに90年基準で25%のCO2を削減するとし、これを日本の国際的な提言や存在感の軸に据える志を表明している。これは産業界も危惧(きぐ)するように、ハードルが高く、生産の抑制や雇用の圧縮などによるマイナスも予想される。しかし、「利益最優先、人はその手段・コスト」と割り切った前提のままの成長促進策にも限界がある。働きがいを見失い、経営者に対する尊敬が薄れる中で人心が衰弱し、総合力は害されてきたからである。改革の焦点がそこを外しては効果は乏しい。
そう考えるとCO2の削減にも産業界だけでなく、国民一人ひとりの努力を結集する必要がある。特に日本人は豊かな自然に恵まれ、自然に対する畏敬(いけい)の念は浅くない。学校教育を含めて環境の保全、エネルギーの節約を草の根から思い切って実行するならば、国民の広い支持を得る可能性がある。そうした流れを起こしてゆくためにも、経済界と政界との相互理解と対話は今後特に重要になると思われる。
振り返ってみれば、日本は試練の度に強くなってきた。それは試練の中で思い切った自己変革を重ねる中で、試練は単に嫌なもの、避けるべきものではなく、意味のあることだ、ととらえる歩みをしてきたからではないか。(瞬)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。