2009年9月17日5時25分
ただ、米国社会には人権侵害が深刻な北朝鮮の独裁体制を容認することへの拒否反応も強い。今月のボズワース北朝鮮政策特別代表による日中韓歴訪でも、包括提案をめぐってはその理念についての意見交換にとどまり、「体制保証」を盛り込むかどうかの結論は示さなかった。
ボズワース氏は歴訪で、関係国に「細切れの交渉は北朝鮮を利するだけ。包括的な合意が必要だ」と述べ、包括提案に改めて強い意欲を見せた。「北朝鮮にも魅力的な案にする必要がある」とも説明し、北朝鮮の様々な当局者と接触するため、米朝対話は第三国ではなく平壌で行うべきだとの考えを示した。
その米朝対話について韓国政府関係者は16日、10月末から11月上旬ごろになるとの見通しを示した。オバマ大統領の特使の資格で訪れ、姜錫柱(カン・ソクチュ)第1外務次官らと会談すべくニューヨークで北朝鮮側と調整中という。ただ、韓国政府内では「包括提案は北に提示前に関係国と調整する必要がある」との声が支配的だ。その場合、最優先課題に据える日本人拉致問題の解決に見通しがつかず、米朝関係の進展に警戒感を抱く日本側との調整は難航しそうだ。
北朝鮮は最近、6者協議関係国に外交攻勢をかける構えを見せている。対話に慎重な米国を包囲する戦略とみられるが、逆に関係国の間では、北朝鮮との関係で「自国だけがバスに乗り遅れないか、関係国同士で疑心暗鬼になる」(6者協議筋)といった空気も漂い始めている。こうした事情から、米朝対話で米国側が「包括提案」を提示できるかどうかは微妙な情勢だ。