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September 17, 2009

チャレンジ・「顧客起点で自販機ビジネスを変える!」

JR東日本の駅ナカで1万台の飲料自販機を展開している「(株)JR東日本ウォータービジネス」。同社はこの秋「自販機イノベーション宣言」なる取り組みを開始した。その活動と狙いは一体何だろう。

販売チャネルの構築は、顧客がその商品を購入する際にどんなニーズを持っているかを考え、それに応えることが基本である。
では、飲料を購入しようとした場合の顧客ニーズはなんだろうか。飲料に求めるのは「喉の渇きをいやせること」である。そのニーズにいかにすばやく対応するかが肝要であるが、例えばスーパーマーケットでしか売られていなかったとしたら、レジの長い列に並んで買うなど全くニーズに対応できないことになる。故に、買い置きを前提とした2リットルの大型ペットボトル入り飲料ならともかく、すぐ飲むことを前提とした500ml以下の飲料は「いつでも開いているコンビニ」や、「どこにでもある自販機」がチャネルとして展開されているのである。

しかし、ウォータービジネス社はあえてその自販機ビジネスの有り様に問題提起をしている。同社の資料によると、自販機は現在全国に約240万台が展開されているという。しかし、ここ何年も台数は頭打ちの飽和状態が続いており、清涼飲料販売シェアが90年代の50%弱から約35%にまで低下しているという。そのシェアを奪っているのはコンビニエンスストアである。
同社は問題を自販機が「単一ブランド機」が主流であることと指摘している。自販機は飲料メーカーが自社製品の販路確保のために展開し、メーカー系の「オペレーター」といわれる担当者が商品の補給などを中心にして、設置した自販機をフルメンテナンスしている。当然、各メーカー系の自販機は、自社商品一色となる。

自販機で飲料を購入する時のことを思い出してみよう。街中で複数のメーカーの自販機が並んでおいてある場合などは、「どの自販機から買おうか」と考えることはあるだろう。しかし、喉の渇きを覚えてふと、目についた一台の自販機で飲料を購入しようとした時、茶系飲料にしようか、炭酸にしようかと一瞬考えはするものの、悩んだりはしないはずだ。なぜなら、選択肢がないからである。
メーカーにとって自社商品が同一カテゴリーに複数の商品を展開することは、自社商品内のカニバリ(共食い)を招くことになる。故に、まったくポジショニングがかぶる商品が同一自販機に展開されることはなく、消費者は知らず知らず、選択肢が与えられていない状況になっているのである。
一方、コンビニエンスストアで飲料を購入する場合、弁当や菓子、その他商品を買った時の「ついで買い」が多いだろう。弁当の場合まず、どの弁当にしようかなと選んで買う。その後、飲料も飲料の棚の前で「どれにしようかな」と選んで買う。それはまさしく「買い物」である。しかるに、自販機での購入は「買い物」ではなく「補給」といった風情にしかならない。

自販機にもジャパンビバレッジやユニマットなどのベンダーが、複数メーカーの商品を混載して展開している例もある。オフィスに設置されたジャパンビバレッジの自販機は、ベンダー系のオペレーターが「入れて欲しい飲料があったらリクエストしてくださいね~」と実に親切に対応してくれる。しかし、それらの自販機は好立地に展開できていないという現状がある。

ウォータービジネス社は同社の駅ナカ自販機を「acure(アキュア)」というブランドに統一し、「顧客起点での自販機流通の再構築」を目指しているという。駅ナカという好立地で、「ブランドミックス機」を展開し、顧客にまず、選択肢を提供する。複数メーカーの売れ筋商品が並んだ同社の自販機の品揃えを前にすると、確かにどれにしようか迷う。選択の自由を感じる。
さらに同社は、伊藤園と共同開発した緑茶飲料「朝の茶事」やアサヒ飲料との共同開発による「ワンダ朝のカフェオレ」など、通勤通学途上で購入する商品を顧客に提案する展開も行っているのである。
品揃えや新商品の提供だけではなく、顧客の「不便」の解消にも努めている。かつての100円ワンコインで飲料が買えた時代ならともかく、現在の150円や130円という飲料の価格では、購入する時には小銭がつきものだ。ちょうどピッタリの小銭があるとは限らない。うっかり千円札で購入しようものなら、大量の釣り銭で財布は瞬く間にパンパンになってしまう。電子マネーが普及している今日において、小銭に悩むのは自販機ぐらいではないだろうか。しかし、自販機の電子マネー対応は遅れている。
そこで同社は駅ナカの立地を活かして電子マネー「Suica」対応をいち早く進めた。

「自販機イノベーション宣言」以前に、同社は既に上記の取り組みの成果が出ているようだ。自販機ビジネス頭打ちの中で、同社の自販機は台数ベースで1万台の横ばいにも関わらず、総売上高は対2005年比で136%増だという。

そんな同社の取り組みの一つをJR品川駅の同社自販機で目にした。ハウス食品の「ウコンの力」が自販機に入っていたのだ。「朝の茶事」や「ワンダ朝のカフェオレ」といったオリジナル商品に代表されるように、同社は今まで主に「朝」の購入時点を狙う展開だ。つまり、顧客に朝の飲料購入時に「帰りに飲む時には忘れずに!」と提案しているのだろう。自販機でウコンの力を扱っている例は珍しい。顧客起点で提供商品を選択している同社ならではの展開であるといえるだろう。

「自販機イノベーション宣言」が今後、さらにどのような展開になっていくのか、興味深くウォッチしてみたい。

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