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きょうの社説 2009年9月17日
◎鳩山政権に望む 北陸新幹線は「政権公約」の思い
鳩山内閣に望みたいのは、北陸新幹線の推進に明確なゴーサインを出し、2014年度
末の金沢開業を担保することだ。鳩山由紀夫首相は選挙期間中、金沢での街頭演説で、「新幹線が来なくなるような話はない。安心してほしい」と強調した。私たちは、この約束を鳩山首相による事実上の政権公約と受け止めている。北陸新幹線沿線の民主党議員は、地元の声を政権中枢に届け、まず補正予算に計上されている関連予算の着実な執行を後押ししてほしい。民主党は総額14兆円規模の09年度補正予算のうち、不要不急の予算を削り、マニフ ェストの実現に回す計画という。でたらめな需要予測の下で、費用対効果が得られない道路や利用者の顔が見えない豪華公共施設の建設などが、これまで大手を振って進められてきた。税の無駄遣いをやめ、本当に必要な政策に使うという鳩山政権の方針を、多くの国民が支持しているのは間違いない。 だが、北陸新幹線をそうした公共事業と同じように扱ってもらっては困る。費用対効果 は富山―金沢間で約2・3倍に達し、年間約80億円の収支改善効果が見込める公共事業の「優等生」である。道路などは需要予測が甘く設定されがちだが、開通間もない東北新幹線盛岡―八戸間や九州新幹線新八代―鹿児島中央間は、需要予想を上回る結果が出ており、新幹線の費用対効果の高さは証明済みである。 政権交代の結果、09年度補正予算のうち、公共事業関係の予算の多くは凍結され、「 未執行」の状態にある。新潟県の泉田裕彦知事の同意保留によって北陸新幹線整備費として計上された475億円が宙に浮き、14年度の金沢開業に黄信号がともっている。 北陸新幹線は、民主がマニフェストに掲げた「地域主権の確立」に不可欠な事業である 。新幹線工事の遅れは地元の希望を奪い、北陸経済を疲弊させるだろう。北陸新幹線の補正予算執行を認め、10年度予算に十分な額を盛り込むよう求めたい。 地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの発生が少ない高速鉄道は今、世界的に見直さ れており、オバマ政権も「グリーンニューディール政策」の一環として高速鉄道計画を推進している。新幹線整備は、景気対策と環境対策を両立させる一石二鳥の事業である。これにブレーキをかけるようなまねだけはしてほしくない。
◎金沢の地下水保全 今冬の「節水」効果検証を
地下水利用で地盤沈下が進行している金沢市が本格的な地下水保全に乗り出した。10
月から市内の田地に水を張り、地下水の補給を目標とする県内初の「涵養(かんよう)」の実験を開始するほか、新設する道路の消雪装置で地下水利用を全面的に取り止め、既設装置でも消費水量を抑制する散水方法に変更する。市内の地盤沈下の要因は、冬季間の消雪用に地下水を短時間で集中的に利用しているた めとされており、今冬に向けた市の「節水」対策の効果を十分に検証して、今後の取り組みに生かしてもらいたい。 「涵養」実験については、熊本市が上流域の自治体と連携して、参加農家を増やしてき た取り組みが実を結んでおり、広域での地下水保全対策の参考になろう。 各地で長年問題になっている地下水利用による地盤沈下が深刻化すると、建物や道路、 上下水道管、ガス管などの維持管理に悪影響を及ぼす。金沢市の場合は、北陸自動車道より海側の地域を中心に1970年代から地盤沈下が進んでおり、市は今年4月、「地下水保全条例」を施行し、消雪用井戸の新設を原則禁止とした。 かねてから、河川水や下水処理水の消雪利用が課題となっており、市は10月以降に新 設する道路の消雪装置の水源にこれらの水を充てるとしている。近年は暖冬傾向とはいえ、短期間に集中的に降る「ゲリラ大雪」も懸念されている。地下水保全と除雪の効率化の両面から、河川水や下水処理水を活用する一層の工夫が求められる。 北陸は昔から水に恵まれてきたが、金沢では「もっくり」などと呼ばれた、わき水が減 少してきた経緯がある。「地下水は無尽蔵ではない」という意識の啓発も図りたい。
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