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私は、ごく普通の家庭で育ちました。
あいさつは大きい声で、みんな仲良く、食べ物は大事に、と育てられました。
兄弟でおやつの取りっこをし、
欲しいものを買うためにお小遣いをため、
たまに風邪でもひいて学校を休むと、ちょっと嬉しかったりしました。
なので、サンタクロースはいると思っていたし、
神様もいると思っていました。
でも、産婦人科医になってから、神様はいない、と思うようになりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大学病院にいた時に出会った、優子さん(仮名)。
遅い結婚をされて間もなく、赤ちゃんを授かりました。
落ち着いた、素敵なご夫婦です。
妊娠後期になって、超音波検査で赤ちゃんの心臓の異常が疑われて、
詳しい検査のため入院されました。
外来でやる簡単な超音波検査だけではなく、
小児循環器専門医による、詳しい超音波検査などがなされました。
その結果、赤ちゃんの心臓に、致命的な異常が見つかりました。
生まれて数時間で心不全になってしまう、重篤な病気です。
非常に残念なことに、現代の医学では、なす術がありません。
産婦人科医、小児科医、小児循環器外科医、各科ナースたちを交えて、
ご夫婦に詳細な説明がなさました。
「生まれて数時間で、赤ちゃんは亡くなります」
そんな内容の説明でしたが、
ご夫婦は涙を流しながら、静かに聞かれていました。
数日後、優子さんの陣痛が始まりました。
胎内での検査は間違いであってほしい、という、一縷の望みもあって、
分娩室には、産婦人科のスタッフに加えて
小児科医、小児循環器外科医も待機していました。
娩出直前に心音が落ちたので、迷わず急速遂娩したら
多めの羊水が、ザバッと出ました。
生まれてきたのは、ちょっとちっちゃくて、かわいい赤ちゃんです。
すぐに小児科の先生たちの手に渡り、検査がなされましたが、
やはり、お腹の中にいた時と、診断は同じでした。
産後の処置が終わると同時に、赤ちゃんは優子さんの胸に抱かれました。
優子さんはこぼれるような笑顔で、赤ちゃんに夢中です。
「かわいいかわいい、かわいいっ!」
ナース達は、涙ぐんでいました。
ご夫婦と赤ちゃんを残して、スタッフは全員外に出ましたが、
たまに様子を見に入りました。
「ちっちゃくって、かわいいわあ。
陣痛も短かったし、ママ思いで、いい子ね」
微笑む優子さんと赤ちゃんを、ご主人が何枚もカメラにおさめています。
お産で乱れた優子さんの髪を、ポケットにあった櫛でそっと整えると
「わあっ、先生、ありがとう。
あなたもほら、先生ありがとうね〜」
赤ちゃんのちいさい手を取って、ふって見せてくれました。
でも、その時は来ました。
赤ちゃんの顔色が、少しずつ紫色になってきました。
モニターをつけると、血中酸素濃度は落ち、心拍数も低下しつつあります。
「ありがとう。生まれて来てくれて、ありがとう……」
笑顔のままの優子さんの胸の中で、
赤ちゃんは、動かなくなりました。
小児科の先生が診察をして、言いました。
「小さな身体で、よく頑張りましたね」。
生まれて、7時間後のことでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「神様はいない」と思ってしまうのです。
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命と引き換えに会いに来てくれたことを、お母さんは
永遠に忘れないでしょうね。
本当に生きていて欲しい命が零れ落ちて行き、
生きることに疲れた弱者が命を投げ捨てる、昨今。
捨てられた命が拾えるものだったら、拾ってその子に
あげたくなる心境になります。
思わず涙が出そうになりました。
ご夫婦の気持ちを考えると・・・
僕も臨床で働いているとき、特に小児の悪性腫瘍を治療しているときには無力さに苛まれる事がありました。
何故?何故?
結局答えは出ません。
神様はいないと思います。
しかし、いて欲しいと思う気持ちが本音です。
彼らにとっての幸せは微塵もないのかもしれませんが、両親にとって授かった命というのはなんらかの力を授けてくれている気がします。
私の姉の話です。
妊娠中に羊水が多いといわれ、ドクターから「検査の結果、赤ちゃんに奇形があります。どうしますか?ぎりぎりのところです。」と。
姉は生きてきた中で一番つらい決断を迫られました。
いろんな事をイメージしたと思います。
でも、もしかして答えは最初から決まっていたのかも・・・
「産みます。」
帝王切開の予定が決まりました。
その日を待つ姉の表情はとても穏やかでした。
しかし突然の出血。
すぐに手術。
取り出した瞬間に赤ちゃんは天国に旅立ちました。
姉の仕事は助産師でした。すぐに仕事に戻りました。
以前にもまして妊婦さんの痛みのわかるやさしい助産師になっています。
赤ちゃんが運んできた大いなる使命。
尊敬の念、命の尊さ、感謝の気持ちやいろんな気付き。・。・。・ご夫婦の絆はより深まったと感じます。
いつも楽しくブログを拝見しております。
是非相互リンクをして頂きたくコメントさせていただきました。
勝手ながら当方のブログにはリンクを貼らせて頂きました。
湯沢勝信の医院経営最前線ブログ: http://yuzawacom.blog55.fc2.com/
お忙しいところ申し訳ありませんが
宜しくお願い致しますm(_ _;)m
来夢さんの、このお母さんと赤ちゃんに対するやさしい気持ちに、
「神様はいなくても、天使はいるのかも」と思いました。
羊水の中って、多分とっても気持ちいいのではないかと思うのです。
お母さんに会うためだけに生まれてきた赤ちゃん、
10ヶ月間は、温かい快感に包まれ続けていたことと、信じています。
あたり前のようだけれど素晴らしい、健常であることに、きちんと感謝し、
他人のことを思いやれるお母さんを持ったお子さんたちですから。
小児悪性腫瘍を担当されていたのですか。
婦人科悪性腫瘍でも、重さに耐えがたい思いでしたのに、
患者さんが小児なんて・・・脱帽です。
>神様はいないと思います。
>しかし、いて欲しいと思う気持ちが本音です。
これは、心ある医療をした経験者の方でないと
容易に理解できないと思います。
あのご両親にとって、赤ちゃんの生命は意味があったものと、私も確信しています。
悲嘆にくれるお母さんに、赤ちゃんに手紙を書くことを提案したら、
かわいらしい便箋に何通も書いてらしたのが印象的でした。
あの子は、私の心の中ですら今でもこれだけ生きているのですから、
ご両親のお心の中では、ずっと生き生きと生き続けることと思います。
本文に書いた、小児科の先生の死亡確認の言葉も、今でも忘れられません。
お姉様のお気持ち、察するに余りあります。
すぐにお仕事にお戻りになったということに、
却ってご心痛の深さを感じます。
ぴょん先生もおっしゃるように、患者さんの心に寄り添ったケアができる、
素晴らしい助産師さんでいらっしゃるのでしょう。
やっぱり神様、いないのでしょうか・・・
ブログ拝読しました。
様々な角度から医療について考察できそうで、
ああ、またやることが増えてしまった、と
ほくそえんでいます(笑)。
ところで、ネット痴でお恥ずかしい限りですが、
私の方で何かやるべき登録などはありますでしょうか(恥っ)?
私とは違う形の話でも、小さな命が消えていく様は私の腕の中にはまだ残っていることもあって、我が身を切り裂いてでも救えるのなら救って欲しいという想いがこみ上げてきます。
天使ちゃんのご両親に出会うのはとっても辛いことなんですが、「やっと出会えた」という安心感とでも言いましょうか、お互いを想う気持ちもあって、戦友というような仲にあります。
なな先生や一緒にきちんと立ち会ってくれる医療従事者の方には、一緒に戦ってくれると感じることが出来たり、また、温かく見守ってくれると知ったり、とても大きな存在なんだとおもうばかりです。
非常に感謝しております。
忘れないでいてくれることに、感謝しております。
> 我が身を切り裂いてでも救えるのなら救ってほしい
何度かこの言葉を実際耳にしたことがあります。
「先生、私はいいから、赤ちゃんを助けて・・・」
もう赤ちゃんは亡くなっているのに、
お母さんは大出血しているのに、
そう言われたことがあります。
ただ、圧倒されるばかりでした。
忘れることなんて、できません。
辛いですよね。産まれてから亡くなるのって。
今仲良くしてもらっているママ友も一人目、産んでから亡くしているんです。
実際そういう人に会うまで、とても立ち直れないだろうと思ってしまっていたのですが、二人目は元気に授かり、
とても明るいんですよね。育児をすごく楽しんでいるかんじです。
それも、たぶん亡くなってからのフォローアップもあったからかもしれませんが、「どうやって立ち直れたの?」と聞いたことあるのですが、二度もなるというのは可能性が低いことだから次の子産んだと言っていました。
立ち直れる人って、過去のことくよくよしていないんですよね。ただ心の中は複雑でたぶんなくなってしまった子のこと忘れたことはないんでしょうけど、彼女強いなといつも思ってしまいます。でも次の子が無事産まれるまで気が気じゃなかったといいます。
この神様はいないの方今は元気で生活していることを祈っています。
そして立ち直るには、次の子って必要だったりするんですよね。だから今不妊治療がうまくいかなかったりとか色々な方もいますが、望んでいる人にお子さんさずかればいいのにと思ってます。産んでからすぐに殺してしまうとかニュースあると悲しくなります。望んでいる人、育てられる人に神様は、赤ちゃんを与えてくれればいいのにと思います。
なんかこの記事読んで考えてしまいました。
そして私はそういうママともから勇気もらいました。
とにかく前に前にすすむしかないんだなと。
世の中には、大変な人、辛い人、不公平な人いっぱいいるので私は、くよくよしていてはいけないと最近つくづく思います。そして自分が恵まれていると思うなら、少しは人の役に立つことも考えないといけないなと。
本当に、赤ちゃんを亡くされた方のお気持ちは、伺い知ることもできませんね。
真の意味で立ち直ったと言えるのか、
悲しみが「何とか生活できるレベル」になっただけれはないのか、
恐らく当事者でないと、わからないものなのでしょう。
本人にしか、わからないかもしれません。
そう考えられるナナ先生は、すごいなと思います。
ナナ先生と出会えた人って少しでも救われているような気もします。
産んでからなくなったというママと友達になってから、
新生児仮死で何ヶ月後かにお子さん亡くされた方の本よんでみたのですが、やはりわかりませんでした。
わからないから、気にさわるようなこと言わないようにと読んでみたのにそれでもわからないんです。
その子に障害あってもどんなお子さんであっても、当人にとっては、大切なお子さんなんでしょうしね。辛いだろうと思いますが、想像すらできません。
私もナースとして患者さんの生死の場に立ち会うことが多いので
神様がいるなら、なんで?
そう思うこともいっぱいあります。
でも、全てのことに意味があるんだと思うんです。
生まれて7時間で亡くなる赤ちゃんも。
100歳まで生きたおばあちゃんも。
なんで?って思うんじゃなくて
じゃぁ、私はなにができる?
そう考えるようにしています。
そうでもしないと、やっていけない.....
っていうのが本音でしょうか。
つらいこともいっぱいあるけれど、やっぱりこの仕事が好きです。
なな先生もですよね♪
いつもなな先生の日記に励まされています。
ありがとうございます。
そう、わからないんですよね。
こんな例がありました。
未熟児で生まれた赤ちゃんのママのお話ですが、
周囲の人に「大きくなったね」と言われるのが辛かったのだそうです。
とても慮りきれなくて、はっとするというよりは軽い絶望を感じました。
>なんで?って思うんじゃなくて
じゃぁ、私はなにができる?
なるほど・・・これは、目からうろこです。ありがとうございます。
「全てのことに意味がある」という考え方はある程度納得できるのですが、
それでも、生まれてすぐの赤ちゃんが亡くなることによってしか出てこない「意味」なんて
一体どんな価値があるのだろう、と思うのです。
だからこそ「私には何ができる?」、これが正しい姿勢なのではないでしょうか。
こんな方がナースとしてどこかでご活躍されているんだ、と思うと
何だか嬉しくなります。
この仕事、やっぱりいいですよね。
>
それはなんとなくわかります。
大きくなったねが、小さく産んでしまったということを思い出すからです。うちは、大きくしてから産めたので、気にしなくて済むのですが、小さく産んでしまって産んでから心配しなければいけない人ならそうだと思います。
でもそれぞれ言われると嫌という言葉違うから難しいですよね。
産科医や小児科医の先生がどうフォローしているかすごく気になります。神経使うかもしれませんが、やりがいある素的なお仕事でしょうね。
それと言葉の話でついでに、つい先日、カウンセリング前に「痩せた?」と息子見てカウンセラーの先生が言われたので、もうカウンセリング受けに行くのやめようと決心しました。
小さく産んだから成長曲線もぜんぜん気にせず、のんびりそだてていたんですよね。
カウンセラーさんに寄ると思いますが、あまり神経使ってはくださらないということもわかったので自分で、なんとかしようと思うようになったということでカウンセリングは効果あったようです。しばらく通っていて、カウンセラーは神経ピリピリさせてめげさせるということ理解したのです。
で、自分で解決しなきゃと思ったら、あんまり悩まなくなったというの面白いですよね。
それにカウンセラーさんっていつもメモしているけどメモした内容意外のこと覚えてもいないし、私のこと理解してはくれないとわかったんです。
カウンセラーさんですら、人のことはわからないんだから自分でストレス解消できる考え方できるようにして自分で自分のことなんとかしなきゃいけない
それ理解できたことがプラスだったと考えることにしました。ちょっと失望はしてしまったんですけどね。でもこれもカウンセラーさんにとっては一生懸命やってくれているのかもしれないから文句はいえないですね。(笑)
カウンセリングは、本当に様々ではないでしょうか。
10人の臨床心理士さんがいれば、10通りのカウンセリングがあるように思います。
カウンセリングで傷ついている場合じゃないかもしれません。もしかしたら合わなかったのかもしれませんね。
ナナ先生ありがとうございます。
カウンセリングで逆に傷ついてしまうってすごく辛くなるんですよね。
カウンセリング行ってなんか思い出して感じたのは元主治医ってすごい。
大勢見ているのにすごくよく人のこと観察してくれているところあったなって思います。
人それぞれいいところ悪いところあるので、比べたりはしないですけどね。本当にそういう先生に会えてラッキーでした。次もしお産なんてことあったら別のいい先生にであえるといいな。
二人目できるまでになんとかしたいと私は考えているんですよね。
また精神的に苦しい妊娠期間だけはごめんです。
ちょっと横道それてしまいました。(毎回のことかもしれませんが)
ナナ先生なんか、落ち着くんですよね。ナナ先生とお話するのも。
丁寧な先生だからご無理をされず、お過ごしくださいませ。ナナ先生の負担になっていなければいいなと思っております。
コメントなんていくら遅くなっても構いません。
いつも丁寧親切なお返事ありがとうございます。
>生まれてすぐの赤ちゃんが亡くなることによってしか出てこない「意味」なんて
>一体どんな価値があるのだろう、と思うのです。
私もず~っと考えていました。
今も、考えてしまいますし、もちろん答えなんてみつかりません....。
それでも神様がいないなら、この悲しみにも「意味がない」のかな?
そう思うと悲しくて。
「私にはわからないけれど、神様には考えがあって
この悲しみにも意味がある」
って思っていた方が救われる気がするのです。
長くなってしまうのですが、以前出逢った母体搬送されてきた妊婦さんは
結局、死産だった上に弛緩出血でショック状態に.....。
(それまで産科のショックをみたことなかったので、その出血の多さと
回復の早さに驚きました)
翌々日には挿管レスピのまま、赤ちゃんと対面しました。
(レスピのウイニングはどうしても呼吸回数↑↑でできませんでした)
そのまま火葬しようと、ダンナさんはおっしゃったのですが
「私の赤ちゃんにちゃんと逢いたい」そう希望されて、
まさに命がけで生んだ赤ちゃんと、対面されました。
その時に、このコは生きて生まれてくることさえできなかったけれど
確かにママのお腹の中で生きていて、私にはわからないけれど
この夫婦には意味のあることだったんだなぁと
ママのやわらかい笑顔を見て、実感しました。
きっと7時間しか生きられなかったコの命にもしっかりと
たしかな意味が、そして価値があったのだと思うんです。
私もなな先生のようなDrがどこかで働いていると思うと
とっても嬉しくなります。
先生のブログからは、いろんなものへの「愛」を感じます♪
そしてホントにこの仕事、辞められないですよねっ。
お心遣いありがとうございます。
産科医療の現場は忙しくなる一方ですが、
活き活きときりきり舞いしています(笑)
そうですね。
生まれてから数時間だけ生きた赤ちゃんにも、
計り知れない価値があると思っています。
この記事のママではありませんが、
同じように生まれてあまりたたないうちに赤ちゃんを亡くした方がいらっしゃいました。
年月を経て、次の赤ちゃんをご妊娠されて、外来にいらっしゃいました。
前回のことをすぐには思い出せなかったのですが
診察を進めているうちにはっと思い出して
「山田花子ちゃん(仮名)のママでしたか」と言ったら、
その方は、はらはらと泣き出しました。
他人の口から、赤ちゃんのフルネームを呼ばれるのを聞いて
感激したのだそうです。
ゆっきぃさんがお話下さった方も、
そのまま荼毘にふさずにちゃんと胸に抱くことができて
よかったのだと思います。
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