発がん性の評価について
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2009年7月23日更新
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発がん性の評価は、通常の動物に一生涯にわたり試験物質を投与する試験法が世界の多くのガイドラインに採用されています。
花王では、ジアシルグリセロール(DAG)について世界標準である2年間発がん性試験(ICHガイドラン※1、ラットおよびマウス)を行っており、その結果、発がん性は認められておりません。
また発がんプロモーション作用※2についてもICHガイドラインにも記載されている二段階発がん性試験※3によって、“全身諸器官においてジアシルグリセロール(DAG)には発がんプロモーション作用がない”ことが確認されております。
なお、これらの発がん性試験は時間がかかるため、短期間で検出可能な遺伝子組み換え動物を用いた評価系の開発が進められています。ジアシルグリセロール(DAG)についてこの遺伝子組み換え動物を用いた試験結果も報告されていますが、このような系による結果のみでは発がん性は判断できず、世界標準の試験で評価すべきと考えています。(下記参照)
以上のことから、ジアシルグリセロール(DAG)には発がん性はないと判断しております。
<遺伝子組み換え動物を用いた試験結果の報告例とそれに対する花王の見解>
2005年8月4日の食品安全委員会で、厚生労働省より遺伝子組み換えラット及び野生型ラットを用いた二段階試験の結果が報告されています。その内容は、「雌の遺伝子組み換えラット及び野生型ラットでは、発がんプロモーション作用*2は見られなかった。雄の遺伝子組み換えラットの舌のみに発がんプロモーション作用が示唆されたが、今回よりも個体数を増やし、高用量、長期間の試験が必要である」というものです。この試験の詳細は厚生労働科学特別研究事業の総括研究報告書1)に報告されており、その中で「本実験からは健康危険情報については結論しえない。結果確認のための追加実験が望まれる」と結ばれています。
その後、その追加実験とされた実験のうち、2008年9月、国立医薬品食品衛生研究所から通常のラットを用いた舌への発がんプロモーション作用についての論文発表があり、ジアシルグリセロール(DAG)による影響はないと報告されています2)。
花王で行った世界標準による2年間発がん性試験では、ジアシルグリセロール(DAG)に舌への発がん性は認められておりません3),4)。
<グリシドール脂肪酸エステルについて>
3-MCPD※4、グリシドール、およびこれらの脂肪酸エステルの4つの微量成分について、花王で検討した分析方法を用いて、エコナクッキングオイルおよびその主成分であるジアシルグリセロール(DAG)を分析したところ、3-MCPD、その脂肪酸エステル、およびグリシドールは定量下限以下でしたが、グリシドール脂肪酸エステルが含まれている可能性が高いことがわかりました。このグリシドール脂肪酸エステルについては現時点では安全性の懸念を明確に示す報告はありません。エコナクッキングオイルおよびその主成分であるジアシルグリセロール(DAG)については世界的に標準とされる試験法を含む多くの試験で安全が確認されており、安全性については問題ないと考えております。
※1)ICHガイドライン:日・米・EUの三極で合意された新医薬品のための安全性ガイドライン
※2)発がんプロモーション作用(がん促進作用)とは:
がんが発生するためには、まず遺伝子に異常がおき、正常な細胞が突然変異を起こし、がんの元となる細胞ができる段階(発がんイニシエーション)と、こうした細胞の増殖を促進する段階(発がんプロモーション)の二つが関与すると云われています(発がん二段階説)。発がんイニシエーション作用を示すものとしては、放射線、紫外線、カビ毒、たばこに含まれるタールや、焼き魚のコゲなどが知られています。一方、発がんプロモーション作用に関しては、高脂肪食、リノール酸、食塩やアスコルビン酸ナトリウム(ビタミンCのナトリウム塩)などの食品成分にもこうした作用があることが報告されています。
※3)二段階発がん性試験:あらかじめ発がん性物質を投与したラットあるいはマウスに対してがん発生のプロモーション作用を確認する試験
※4)3-chloro-1,2-propanediol
引用文献
1)飯郷正明 厚生労働科学特別研究事業 平成15年度総括研究報告書
2)Umemura T. et al., Food and Chemical Toxicology, 46, 3206-3212 (2008)
3)Chengelis, C. P., et al., Food and Chemical Toxicology, 44, 98-121 (2006)
4)Chengelis, C. P., et al., Food and Chemical Toxicology, 44, 122-137 (2006)
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