報道陣とヤジ馬でごった返す、明治通りに面した渋谷署前の路上。騒然とした雰囲気の中、ひとつの物体が放物線を描いた。靴だ!! 高相被告を乗せた銀色のワゴン車が左折する瞬間、後部座席左側の屋根に直撃した。
「高相、家族を守れよ!」と3回叫び、車へ革靴を投げたのは40代男性。すぐに渋谷署員に取り押さえられ、1時間の事情聴取を受けた。一歩間違えれば大事故に発展しかねないハプニング。08年にブッシュ前米大統領がイラクで、現地記者から靴を投げつけられた事件を思いおこさせた。
これまでの取り調べでは、高相被告の勧めにより、酒井被告が薬物に手を染めたことが夫妻の供述で明らかに。妻を追いつめた夫の供述の数々も導火線となり、ファンの怒りが爆発した格好だ。
繁華街のド真ん中が、午後3時半から修羅場と化した。高相被告が弁護士を通じて500万円の保釈保証金を納付したことが確認され、同署に150人の報道陣が集結。周辺の歩道橋や歩道は一般人で埋め尽くされ、近くのビルには一目見ようと身を乗り出すヤジ馬も出現。高相被告が姿を見せた5時12分、現場は一気にヒートアップした。
「今回の件に関してはすべて私の責任であり、自分が悪いと思っています。みなさん、ご迷惑と不愉快な思いをさせてすみませんでした」。高相被告は帽子を取り、頭を3回下げた。報道陣から「何で奥さんに覚せい剤を勧めた?」などと質問が飛んだが、無言を貫いた。「すべて私の責任」の言葉が妻のファンに対する謝罪にも取れた。
何より目を引いたのは、その風貌と服装。胸や両腕、ひざ、左手薬指に至るまで、10カ所以上のタトゥーがあるという高相被告だが、グレーの長袖シャツにジーンズ、両手に黒の革手袋をはめてタトゥーを完全ガード。胸元からわずかにのぞくだけだった。
襟足まで伸びた髪の先は茶色、あごひげを蓄え、左眉の上に棒状のバーベル型ピアスの跡と思われる3カ所の傷が浮かぶ。保釈時の服装は自分で選べるが、遊び人と称された面影は残る。ただ、ほおはやつれ、年齢以上に老けて見えた。
夫に遅れること1日、酒井被告も17日に保釈される見通しとなった。長男(10)との対面は可能となるが、夫婦は“口裏合わせ”や証拠隠滅を防ぐため、地裁から保釈の条件として会うことや同居を禁じられている。この日、高相被告が妻と同じ担当弁護士を、違う法律事務所の弁護士に変更したことも判明。初公判は夫が来月21日、妻が同26日に予定されており、夫婦間の法廷闘争も浮上する。
のりピーの偶像を崩した“元凶”として、拘置中は周囲から無視されていた夫は、シャバでも厳しい現実を突きつけられた。妻は保釈後に肺がんで入院中と見られる継母の見舞いか、薬物の影響などで体調を崩した自身の治療を目的に、都内の病院へ直行するもよう。本人が了承すれば即日会見の可能性もあり、どのようなケジメをつけるのか…。