第七回 複式簿記

−自分の財産や儲けを正確に把握する方法−

はじめに
収入
手取給与 300,000
支出
食費 50,000
光熱費 30,000
電話代 10,000
被服費 10,000
レジャー 15,000
小遣い 30,000
住居(家賃) 100,000
車ローン(月) 30,000
生命保険 15,000
合計 290,000
残高 10,000

突然なんだけど、家計簿と国家予算の共通点は何?答えはいずも単式簿記であるってこと。単式簿記って、要するに現金の増減だけを捕らえて収支を記録する方法だ。右の表を見てみよう。よくある家計簿ってやつだ。(俺のじゃあないよ念のため、サラリ−マンのAさん?です)毎月の手取収入が30万、そこから支出29万を差し引いて残高が1万と。Aさんは1万を貯金するか、はたまたパーっと使っちゃうのか?次の月は友達の結婚式があって3万の出費となったら赤字になるから貯金を崩すかサラ金から借りるのか。国家予算案だって全く同じ書き方している。収入が歳入、支出が歳出に置き換わっただけ。収入は主に税収、支出は人件費、社会保障費、防衛費、建設事業費、国債(国の借金)の返済などなど。最近は歳出が歳入を上回っており赤字である。これを埋めるためにまた国債を発行し金を調達している。借金の返済のために借金を繰り返してるってこと。
単式簿記には決定的な問題がある。Aさんも国も家計簿や国家予算案だけじゃあ本当の利益や財産の状態がさっぱりわからない。 本当の利益や財産を知るには複式簿記しか方法がないんだ。商業高校ならば簿記は必修科目である。数学や物理なんかに比べたらこれほど社会に出て役に立つ勉強はないと思うんだけどなあ。現在、理由がよくわからないが家庭科が必修となっている。どうせならこの際、簿記を全高校で必修須にするべきだ。

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
会社の財産状態を表すのが貸借対照表である。会社に限らず個人や国のだって作れる。試しに自分の貸借対照表を作ってみよう。下の表を見てみよう。
Aさんの貸借対照表

借方 貸方
資産 負債
現金 100,000 車ローン 1,500,000
預金 1,000,000 資本 1,600,000
車 2,000,000  
計 3,100,000  


右側(借方)には資産(現金、車、土地、建物、売掛金など)を書き、左側(貸方)には負債(借入金、買掛金など)を書き込む。資産から負債を引いたものが資本となる。

資本=資産−負債

お金持ってどんな人って生徒なんかに聞くと、貯金がたくさんあり、でっかい家に住み、ベンツに乗っている人のことだなんて答えるが、それは単に資産が沢山あるってこと。負債もたっぷり抱えているかもしれない。バブルの頃に銀行や住専から金を借り、不動産に手を出した人かもしれない。
多くの人は住宅ローンを組み家を買うが、よく考えてみると家を手に入れるってことは同時にリスクを抱えることになる。
あまり思い出したくないが、俺、バブルの頃、家を買ってしまった。これが大失敗!いや、買ったじゃなくて、正確に言うと土地及び建物という資産を手に入れたと同時に5000万(金利7.5%!そういう時代もあったのさ)の30年払の住宅ローンという負債を抱えたに過ぎない。買った時点で貯金は殆ど0に近く、つまり資本がほぼゼロの状態からスタートした。バブル崩壊後、土地の値段は単調に減少し続け、さらに建物は減価償却資産なので、確実に目減りする。減価償却資産とは時間と共に価値が減る資産を指す。例えば車を例に挙げると200万で買っても価値が下がっていくでしょ。税法では資産ごとに耐用年数が決まっていて車なら4年(つまり4年で価値がほとんどなくなるってこと)、俺の家は木造だから24年。ローンを払い終わる30年後には既に価値はないってこと。
5年後を例に取ると、家は3000万ぐらいに下がっており、一方、残債は4500万。貯金はやはりほとんどなかったから(いやあ、バブル景気で浮かれて飲んじゃった。あの頃は楽しかったぜ)、資産(3000万)−負債(4500万)=資本(−1500万)が成り立つ。実は資本が負の状態のことを債務超過って言うんだ。企業ならば非常に危険な状態だ。俺もだ!破綻前の拓銀や山一證券のような状態ってこと。こんな状態の企業の株はやがて紙屑になる。ちなみに期待はしていなかったが俺の親父の遺産は倒産後の拓銀5万株(紙屑)だった。そうそう生命保険もあったっけ。
本当の金持ちとは負債なしで資本をたっぷり持ってる人を指す。これを資本家って言うわけだ。ところで今の日本は民主主義と考えているあなた、間違っています。資本主義(資本家が労働者を雇って利潤を追求する社会体制)です。正確に言うならば官僚主導の労働者に冷たく資本家優先の資本主義の国です。
脱線が長くなった。人生の目標はいろいろあってもよいが、貴方が会社を作った場合、会社の目標はただひとつ、資本を増やすことである。ではその方法は?もちろん利潤の追求にある。

損益計算書(損益計算書)
Aさんの損益計算書

借方 貸方
費用 収益
食費50,000 月収300,000
光熱費30,000  
電話代10,000  
被服費10,000  
レジャー15,000  
小遣い30,000  
家賃100,000  
車ローン利子10,000  
生命保険15,000  
合計270,000 純利益30,000


損益計算書とはある期間中の儲けを表わす表である。右側(貸方)に収益(商品売買益、預金の利子など)を書き、左側(借方)に費用(光熱費、接待交際費、通信費、家賃など)を書く。収益から費用を引いたものが純利益となり貸借対照表の資本の増加をもたらす。

純利益=収益−費用
損益計算書って家計簿に似ているが
車のローンの部分がちょっと違う。毎月払っている車のローン(3万)は借金の元本に充当される部分(2万)と利子部分(1万)からなる。利子部分だけが費用であり、残りの元本充当部分は貸借対照表で現金という資産が2万減ったと同時に車のローンという負債も2万減っており相殺されただけである。資本の増減には影響を与えない。家計簿での残高(1万)と損益計算書の純利益(3万)は必ずしも一致しないんだ。家計簿や国家予算案が本当の利益や財産の状態を表わしていないってこと分かったかなあ?
会社の目的は利潤(純利益)の追求にあるわけで、その方法は収益を増やし費用を減らせば良い事になる。費用を減らすには経費の節減(こまめに電気を消しなんて節約ってやつ)、企業にとって要らない社員の削減(リストラ)が考えられる。問題は収益をどう上げるか。これが簡単に分かったらあなたは大金持である。
行商のおばちゃんが基本である。おばちゃんはまず1万円で干物を仕入れる。現金という資産を干物という資産に替えたわけだ。電車で干物がなさそうな地方に出向き、(流通だ)そこで3万で売れた。収益は3万−1万=2万、電車賃1,000円が費用となるから、収益(2万)−費用(1,000)=19,000が純利益となった。え−っと、つまり安くものを仕入れて高く売るのが基本です。
俺の田舎に花売りのおばちゃんがいたが山から花を摘み取ってきて(仕入れ0円)、歩いて(費用0円)山を下り適当に季節の花を適当にアレンジ(ここで付加価値が生まれた)して一件一件売り歩いていた。これって、究極だろ。あなたに資産がなければこの線を狙うしかない。まだ誰も思いついてないものを。

最後に
会社は複式簿記を付けるのが義務となる。最近は簿記の知識がなくてもパソコンのソフトがかなり進化しているので、自動的に仕分け(取引を借方と貸方に分けて記帳すること)やってくれる。会社経営において複式簿記を知らないというのは、計器の読めないパイロットが飛行機を操縦するものに近いものがあるんだ。