鳩山由紀夫首相は就任早々の22日以降、米ニューヨークで行われる国連気候変動ハイレベル会合や国連総会一般演説など一連の国際会議で外交デビューを果たす。オバマ米大統領はじめ、ロシア、中国、韓国など主要国の首脳との個別会談も予定される。日本の新政権と世界はどう向かい合うのか、各国の狙いを探った。
オバマ米大統領は鳩山首相との会談を、日米同盟が両国の外交・安全保障政策の礎石であることを確認し、個人的な関係を築く場と位置付けている。
米政権はこれまで、「忍耐強く待たなくてはいけない。2~3週間ではなく、数カ月単位だ」(キャンベル国務次官補)などとあえて、日本の政権移行プロセスを温かく見守る姿勢を強調してきた。今回の首脳会談でも、総論での日米同盟重視を打ち出せれば合格点と受け止めている。
だが、日米間には海上自衛隊によるインド洋の給油活動の継続問題、沖縄県の普天間飛行場の移設計画見直しなど懸案が山積。米政権の融和姿勢も「米国の主張をこの時点で明確にして日本とケンカになったら元も子もない」(政府関係者)との計算からで、「いつまでも待つわけではない」というのが本音だ。
一方で、経済危機や地球温暖化問題での協力など大きな意見相違がない課題についても意見を交わし、日米間の協力拡大を演出することも目指している。【ワシントン古本陽荘】
ロシアのメドベージェフ大統領は、ロシア通の鳩山首相誕生を日露の経済交流拡大への契機としたい考えだ。大統領は15日、「鳩山首相とは経済協力をはじめ、あらゆるテーマについて話し合う用意がある」と発言。首脳会談では、日本に対し東シベリア・極東開発への技術、資金協力を求めてくる見通し。
一方で北方領土問題に関しては、首相の祖父、一郎元首相(故人)が1956年に国交回復を定めた「日ソ共同宣言」に署名した点を踏まえ、歯舞・色丹両島の引き渡しを明記した同宣言に基づく解決を受け入れるよう迫る考えとみられる。大統領は麻生前政権に対して「独創的アプローチ」による解決策に言及した結果、日本側の期待をあおった側面があった。新政権に対しては「極端な立場を離れることで(交渉が)成功できる」とくぎを刺し、56年宣言に基づく解決で譲らない構えだ。【モスクワ大前仁】
中国は胡錦濤国家主席と鳩山新首相との会談を通じ、首脳レベルでの信頼関係を構築し、「戦略的互恵関係」を継続して発展させていきたい考えだ。
日中外交関係者によると、鳩山首相の中国初訪問は、10月中旬の開催が検討されている日中韓首脳会談で実現する可能性が高く、さらに北京での胡主席との会談を含めた公式訪問への格上げも検討されている。
中国の華僑向け通信社・中国新聞社は、鳩山首相のアジア・中国重視の外交方針を詳しく伝えた上で、「(首相の)『友愛』原則が今後の対中関係でどのような役割を発揮するか観察していきたい」と期待を表明。このほか中国メディアは、鳩山家が曽祖父の代から中国人留学生の受け入れに熱心だったことや、幸夫人が上海生まれであることを伝えるなど、中国と縁の深い鳩山氏の首相就任を好意的に報道している。【北京・浦松丈二】
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は「アジア重視」を掲げる鳩山新政権の誕生で「韓日関係の飛躍を期待する」と期待感を表明している。鳩山首相との会談では、北朝鮮政策での協調のほか、金融危機などの緊急時に外貨を融通する「通貨スワップ(交換)」協定の枠拡大など、日韓経済協力のさらなる強化を求める方針だ。
また、歴史問題について、韓国の各メディアは「自民党政権より柔軟な姿勢を示すのではないか」と鳩山政権が何らかの新対応を示すのではとの期待感を表明した。15日付の有力紙・朝鮮日報は、両国が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)問題について、「鳩山政権が第1の外交課題とするのはロシアとの北方領土問題。この問題が解決するまで(同じ領土問題を抱える)韓国とは摩擦がないようにするだろう」との外交消息筋の発言を引用して展望した。【ソウル大澤文護】
毎日新聞 2009年9月16日 19時30分