|
Research Database No.u001
「ウワサの検証ファイル1」

2003/11/23 報告 報告者:宮崎弦太、林健太郎、長谷川恵美子
ちまたで脈々と言い伝えられる都市伝説やウワサ話。そんな、まことしやかに語り継がれるウワサ話の真実を探るべく調査に乗りだした。
ウワサ@『ピアスの穴の白い糸』
ある女子高生が、ピアスの穴を友達に開けてもらうことにした。ところが…開けたばかりの耳たぶのピアスの穴から「白い糸」のようなものが出てきた。「一体、何だろう?」と思った少女がその白い糸を引っ張ってみると、糸はするすると伸びていき、突然プチッと糸が切れたような音が…。
すると、その女子高生は叫んだ。「誰?誰が電気を消したの?」。なんと、耳から出ていた「白い糸」は「視神経」で、それが切れたことで、少女は失明してしまったというのである!
|
これが全国の人々の間で語り継がれる「ピアスの穴の白い糸」のウワサである。
そもそも、このウワサはいつ頃から知られているのか認知度調査を行なってみたところ、10代、20代、30代の人たちの認知度は非常に高く、特に30代は74%もの人がこのウワサを知っていた。実は、日本でピアスがファッションとして流行し始めたのは1980年代。つまり、このウワサは現在30代の人々が10代の頃に広く知られるようになったと考えられる。
さらに調査を進めた我々は、なんと実際に「耳から白いものが出る」という女性に会うことが出来た。そして確かに、彼女の耳たぶのピアスの穴から「白い糸」のようなものが出てきたのである。果たして、これがウワサの視神経なのか?
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院形成外科の酒井成身博士によると、視神経は眼球の後ろから脳に向けて伸びており、耳たぶには存在しないという 。つまり、耳たぶには視神経が通っていないため、ピアスの穴を開けて失明することなどあり得ないというのである。そして、女性のピアスの穴から出てきた白いものは、ピアスの穴に溜まった皮膚の分泌物や脂肪だという。
では、なぜこのようなウワサ話が誕生したのだろうか?
実は、昔から「耳には眼のツボがある」という説があり、この「眼のツボにピアスで穴を開ける」という行為が「失明」を思い起こさせ、ウワサにつながっていったと考えられるのである。
よって『ピアスの白い糸』のウワサはファー・イースト・リサーチ社的には『ウソ』と考えられる。
ウワサA『フジツボ びっしり』
ある若者が海水浴へ行った時、岩場に右膝をぶつけ怪我をした。しかし、たいした傷ではなかったため、彼は傷のことなどすっかり忘れてしまっていた。
ところが、数日後、彼の右足が激しく痛み始めた。病院へ行き、足のレントゲンを撮ると、医師から膝の裏側に何かカゲがあるので切開した方がいいと言われ、手術を行うこととなった。
そして、手術当日…。若者の膝を切開した医師は我が目を疑った。
なんと、彼の膝の裏側にびっしりとフジツボが繁殖していたのだ。
|
これが「フジツボびっしり」というウワサである。そしてこのウワサには「まさかフジツボが体内で繁殖するなんて…」と疑問を持った人への答えも用意されている。
それは…『人間の体液と海水の成分は似ているのでフジツボの繁殖に適しているらしい』
というもの。
科学的とも思える裏付けまで付け加えられ、まことしやかに語り継がれるこのウワサ。我々が行った認知調査によれば30代で3割以上の人がこのウワサを知っており、10代から40代にかけて幅広く認知されていることが判った。
果たして「膝の裏にフジツボびっしり」というウワサは、本当にあったことなのだろうか?
まず「フジツボ」自体の調査を行なったところ、フジツボは雌雄同体の生物であり、卵を体内で孵化させた後、幼生を海中に放出するという。この幼生の大きさは0.2〜0.4mm。この程度の大きさなら、海水に混じったフジツボの幼生が気づかないうちに傷口から侵入してもおかしくないと考えられる。
そこで「人間の体液と海水の成分が似ている」という点についても調べてみると、人の体液と海水では、ミネラル成分の比率が非常によく似ていることが判明した。
しかし、北里大学水産学部・加戸隆介教授によると、人体の浸透圧とフジツボの幼生の浸透圧を比べると、フジツボの幼生の体液の方が、浸透圧が高いと考えられる。そのため、たとえフジツボの幼生が人間の体内に入ったとしても、幼生の体内に水が過剰に侵入し、破裂して死んでしまうため、人体でフジツボが繁殖することはないと考えられるのだ。
ところが!「体内に他の生物が宿る」というウワサを調査していた我々は、驚くべき情報に遭遇した。1979年に発行されたアメリカの眼科専門雑誌に「目から芽が出た!」という記事があったのだ。その内容は…
8歳の少年がテレビを見ている時、目にかゆみを覚え、眼科医に診てもらった。すると少年の目の虹彩に何と植物の種子が入っており、そこから伸びた芽がおよそ2mmにまで成長していたというのだ。
すぐに手術によって取り除いたため、少年の視力に異常は出なかった。
種子はキク科双子葉類のものであったことが判明。何らかの理由によって角膜に傷がついた際、そこから種子が入ったのではないかと考えられている。
|
井上眼科病院の若倉雅登院長によると、人間の目の角膜と水晶体の間にある「房室」には、房水と呼ばれる、細胞の生存や増殖に極めて適した液体が入っているため、植物の芽が成長することも十分考えられるというのだ。
以上のことから、フジツボが体内で繁殖するという「フジツボがビッシリ」のウワサは、ファー・イースト・リサーチ社的には『ウソ』と考えられる。
しかし「目から芽が出る」という話は本当にあったのだ。
ウワサB『歩行者専用道路標識』
我々が普段、何気なく目にする、手をつないだ親子が描かれた「歩行者専用道路」の標識。実はこの標識には、ある恐ろしいウワサがあるのだ。
今から数十年前のこと、あるカメラマンが近所の公園で遊んでいる子供たちの姿をカメラに収めていた。そんな中、父親と女の子が手をつないで歩いている姿に目が留まった。そこで彼は、その仲むつまじい親子の様子をカメラに収めた。
ちょうどその頃、政府が新たに歩行者専用道路の標識を制定しようと、そのデザインを広く一般に募集していた。そのことを知った彼は、公園で撮影したあの親子の写真を、デザイン原案として応募したのである。すると、これが見事採用になり、図案化されて現在の歩行者専用道路の標識に描かれた親子のイラストになったのだ。
ところが、それから数ヶ月後、自宅で新聞を読んでいたカメラマンは、何気なく社会面をめくった時、思わず息を飲んだ。その記事は「幼女誘拐殺人・容疑者捕まる」というもので、容疑者として公園で会ったあの父親と思った男の写真が載っていたのである。そして、その被害者は、あの時の公園で見た女の子だったのだ…。
つまり、あの「歩行者専用道路標識」は、誘拐犯が少女を連れ去ろうとする、まさにその瞬間が描かれたものだったのである。
|
これがいわゆる「歩行者専用道路標識」のウワサの概要である。確かに標識を見てみると、女の子の体勢がやや腰が引けているようにも見える。
果たして「歩行者専用道路標識」は、本当に誘拐犯と被害者の少女がモデルになってしまったものなのだろうか? 我々の認知度調査によれば、若くなるほど、このウワサの認知度が高いということが判明。どうやら、近年、若者を中心に広まっているウワサのようである。
調査をしてみると、この歩行者専用道路標識は、1971年(昭和46年)11月30日の省令改正によって定められていることが判明。そこで、国土交通省に問い合わせてみたところ、そもそも日本の歩行者専用道路標識のデザインは、一般公募などはされておらず、国際連合道路標識で決められたものを採用しているのだという。
国際連合道路標識とは、ヨーロッパにおいて、道路標識を国際的に統一しようとする動きから生まれ、1968年に「道路標識および信号に関する条約」として成立したものである。歩行者専用道路標識は日本以外でも、オーストリアやアルゼンチンなどの国々が、同じ国際連合道路標識のデザインを採用しているのだ。
そこで、日本以外の国々でも、「誘拐犯」というウワサがないか調査を進めたところ、なんとドイツでそのような話があったという情報を手に入れた。しかし、実際のドイツの標識は他の国と違い、「女性と子ども」のデザインであり、あまり「誘拐犯」には見えない。本当にそのようなウワサがあったのだろうか?そこでドイツの運輸省に問い合わせてみた。
実はドイツでは、国連で決定される前から、国連と同じデザインのものを使っていたという。つまり、国連標識の歩行者専用道路標識は、この当時の西ドイツの標識がもととなったと考えられるのである。ところがその後、当時の西ドイツ大統領であったハイネマン氏(1969〜1974年)が、男性が子どもを連れている歩行者専用道路標識は、「誘拐犯」に見えるので良くないと考え、現在の「女性と子ども」のデザインに変更したのだという。
このことから、このドイツの元大統領ハイネマン氏が「歩行者専用道路標識は誘拐犯に見える」ということを公式に表明した最初の人物ではないかと思われるのだ。そして、この大統領の発言が「誘拐犯」というウワサの出元となったのではないかと考えられる。
よって、日本の「歩行者専用道路標識は誘拐犯の姿」というウワサは、ファー・イースト・リサーチ社的には『ウソ』。
しかし、1970年頃、西ドイツの大統領が「誘拐に見える」と発言していたことが判明。
これがウワサのそもそもの始まりだったのではないかと考えられるのである。
今回ご紹介したウワサに関して、様々な情報がよせられている。
ファー・イースト・リサーチ社では、詳細を調査し、新たな事実が判明しだい、追って報告する。
|
|