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2009/03/18(水)

暴力・セクハラで懲戒免職になった教師の処分撤回か?:千葉県

 2009年3月13日付官報(本紙第5030号)に、「教育職員免許状失効の取消公告」が掲載されていました。

 取り消し理由は「教育職員免許法第10条第1項第2号に該当しなくなったため」となっています。教育職員免許法第10条第1項第2号は「公立学校の教員であつて懲戒免職の処分を受けたとき」には教員免許が失効するという内容です。

 したがってこの条文に該当しなくなったことを理由とする取り消し公告は「懲戒免職処分が撤回された」とみられることを意味しています。

 「教育職員免許状失効の取消公告」によると、該当人物の氏名は「S」(官報では実名掲載、男性)で、1962年生まれ、中学校・高校の保健体育科の免許が「失効取り消し」になったということです。千葉県教育委員会の公告であることから、この人物は「千葉県内の公立中学校もしくは公立高校の体育教師」であることが読みとれます。

 以下、官報を引用します。官報では教師の氏名が実名記載されていますが、懲戒免職撤回の詳細な事実関係がわからない現時点では引用に当たっては実名は伏せ、また不要と思われる情報も伏せて引用します。

官報 平成21年3月13日付(本紙第5030号)

教育職員免許状失効の取消公告
平成19年1月11日付官報第4499号で公告した次の教育職員免許状の失効を取り消す。

平成21年3月13日千葉県教育委員会

1 失効を取り消した免許状
氏名 ****
本籍地 **県
生年月日 昭和37年*月**日
免許状の種類、教科及び番号
高等学校教諭二級普通免許状(保健体育)昭58高二普第****号
中学校教諭一級普通免許状(保健体育)昭58中一普第****号
授与年月日 昭和59年3月25日
授与権者 **県教育委員会

2 失効を取り消す事由
教育職員免許法第10条第1項第2号に該当しなくなったため

 2007年1月11日付・官報第4499号によると、同一人物の「教育職員免許状失効公告」が掲載されています。該当日時の官報を閲覧すると、この人物の教員免許失効年月日(=懲戒免職処分年月日)は「2006年11月15日」でした。

 新聞記事を検索してみると、千葉県では該当の日に県立高校の男性教諭2名を懲戒免職処分にしたとする記事がありました。いずれも匿名発表ですが、うち1人の教諭は当時38歳なので年齢が一致せず、取消公告の対象人物とは別人と判断できます。

 しかしもう一人の教諭は処分当時44歳と発表されています。懲戒免職が撤回されたとみられる人物は「1962年生まれ」であり、2006年当時44歳になるので年齢が一致します。

 当時の新聞報道(朝日・毎日・読売、いずれも2006/11/16付)を総合すると、2006年11月15日に懲戒免職処分を受けた当時44歳の千葉県立高校教諭について、以下のように詳細が報じられています。
 この教諭は千葉県柏市内の千葉県立高校で陸上部顧問を務めていた。2005年10月、陸上部の合宿中に女子生徒Aを宿舎の自室に呼び出し抱きつくなどした。2006年4月には同じ生徒Aをひざの上に載せて頭をなでるなどした。さらに2006年8月には、大阪府内で開催されていた陸上大会の引率の際、同じ生徒Aを宿舎の自室に呼び出して抱きついた。

 また2006年10月には、陸上部員の別の女子生徒Bに対して、部活動指導中に約20回平手打ちなどする暴行を加えた。

 この教諭は2001年度にも「体罰」で戒告処分を受けた前歴があるといいます。

 また官報に記されている「S」の名前で検索すると、該当人物は1988年度の国体で千葉県の陸上競技代表選手(肩書きは千葉県立高校教員)として出場していることも新聞記事で確認できました。

 今回「教育職員免許状失効の取消公告」の対象となった人物は、以上の情報を総合すると「柏市の高校で陸上部顧問を務め、セクハラや暴力で2006年11月15日に懲戒免職になった人物」の可能性が高いと判断できます。

 現時点では失効取り消し(=懲戒免職処分が撤回されたとみられる)の詳細な理由や経過についてはわかりません。

 しかし一般的にいって教職員の懲戒処分については、教育委員会の側が「慎重すぎるほど慎重に判断する」ので、冤罪での処分はまずありえません。もっと正確に言うと、「教育委員会は自分の責任が問われかねないと判断して、多少の事件ならばもみ消そうとする。それどころか『ここまで詳細な証拠がそろっていれば、教師の暴力やセクハラなどの事実関係は疑う余地はない』というものでも、平気でなかったことにする」という対応をとり、処分に至る事件は「どうしてももみ消しきれなかったほどの悪質なもの」だけです。特に対生徒暴力(いわゆる「体罰」)や生徒へのわいせつ事件など、児童・生徒が被害者になる事件ではその傾向が顕著です。

 処分を受けた教職員やその周辺の支持者が「冤罪」などと騒ぐことも珍しくありませんが、「冤罪」主張の中身をよく見ると、「事実関係を認めながらも、大したことではない・問題視する方が悪いかのように主張している。それにもかかわらず表面上は『問題とされた事実関係が存在しなかった』かのような印象を与える主張をおこない、自分がおこなった生徒への人権侵害行為は棚に上げ、あたかも『不当処分を受けた教師への人権侵害』かのように描いている」という内容ばかりです。

 過去にも、生徒への暴力やわいせつ行為が問われて一度懲戒免職処分になった人物が不服申立をおこない、その結果処分に値するとされた事実はそのまま引き続き認定されながらも「停職6ヶ月」に軽減して復職を認めたケースが、私の知る限り2件発生しています。

 「顧問を務めていた卓球部で生徒への暴行を繰り返した」として2003年に懲戒免職処分を受けた北九州市立中学校教諭・林壮一郎が、2005年に復職した問題がありました。また「顧問を務めていたコーラス部で生徒の体を触るなどした」として2004年に懲戒免職処分になった兵庫県西宮市立高校の男性教諭が、2006年に復職した問題もありました。いずれも処分対象となった事実認定は否定できなかったものの、該当者が騒いだことを受けて「停職6ヶ月」への軽減措置が決定したものです。

 今回の問題ではまだ詳細がわかりませんが、前述の北九州市・西宮市の事例と同様「暴力・セクハラ教師のごね得」ではないかという悪い予感もします。

 この問題については引き続き調査をおこない、懲戒免職処分撤回の経緯など詳しい情報を把握した際には再び取り上げたいと考えています。

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